第2話(1) 完璧星人の恋
授業が終わり、教室が一気にざわめき始める。次が昼休みという事で、その音や勢いはいつものそれより強い、ような気がする。
あくまでも体感の話なので、当然実際に比べたわけではないのだけど。
「うーん。やっと終わったー」
隣の席の優子ちゃんが、そう言って大きく伸びをする。
「こらこら、優子ちゃんはまだ午後からの授業が一つ残ってるでしょ?」
さも今日の全日程が終わったかのように全身を
今終わった授業は二時限目のもので、まだ優子ちゃんには四時限目の授業が残っていた。
ちなみに私は、今受けたもので今日の授業はおしまい。後は帰るだけだ。とはいえ、昼食は優子ちゃんと取ってから帰るので、すぐさま帰宅する事はしないが。
「みどりさん、今日はどうします?」
机の上の物を
二人共お弁当は持参していないため、どこかで昼食を調達しないといけないわけだが、別にお決まりの場所があるわけではないので、いつもその場のノリや気分で調達先を変えている。
「とりあえず教室を出ましょうか。
「ですね。まずは自販機にレッツゴー、です」
二時限目の授業を終えすっかり元気に戻った優子ちゃんと共に、私は教室を後にする。
B棟の
「何にしようかなー」
自動販売機から少し距離を取り、優子ちゃんが楽しげに悩んだ声を出す。
「あ……」
その背後に、音もなく忍び寄る影が一つ。
止める間はとてもなかった。
「私のお
「ひゃっ!」
背後から耳元で
「
「悪い悪い。ついな」
口では謝罪の言葉を口にしながらも、葵さんに悪びれた様子はまるでなく、むしろ楽しそうですらあった。
この人は
基本は面倒見がよく気さくないい人だが、こうして時より人をからかって遊ぶ悪い
本当に困った人だ。
背は私より遥かに高い百八十センチ。スタイルは良く、いつも長く茶色い紙を後ろで一つに縛っている。百合さんやあの常連さんとはタイプは大分違うが、美人な事に変わりはない。
「葵さん、今日はどうしたんですか?」
私の記憶が確かなら、葵さんは木曜日に授業を取っておらず、この時間は家の手伝いをしているはずだ。
「ちょっと担当
「そんなー」
葵さんの冗談を真に受け、優子ちゃんが情けない声を出す。
二人は私を介して知り合ったのだが、どうやら葵さんの方は優子ちゃんをえらく気に入ったらしく、顔を合わす度によくこうしてからかっている。葵さんも一応最低限の節度は守っており、優子ちゃんも本気で嫌がっているわけではなさそうなので、今のところ私も本気で止めにはいっていない。
「冗談冗談。本当はお前達と飯でも食おうと思ってな。これからだろ?」
「えぇ」
さすがに授業が終わって数分で食事を済ますような、生き急いだ生活はしていない。
「で、どこで食べるつもりなんだ?」
「それもまだ……」
決め
無難なのは学食だが、折角時間に
「じゃあ、行くか」
と葵さんが
「え? どこに? 行き先はまだ……」
決まっていない。
「どこって、私の行き着けに決まってるだろ」
そう言って葵さんが、私達にウィンクをしてくる。
ひどく男――
まったく、罪作りな人だ。
それにしても、葵さんの行き着けってどんな所だろう?
激辛店や見た事もない創作料理を出す店みたいな、
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