第119話 スライム…? キャァァァ!

〜エルフ〜


崩れ掛けのビルから門を見下ろす、守護者モードの私。

銀髪が風に揺れ、とても寒い。


この感覚久しぶりだなぁ。


(今回は、出てきた瞬間に殲滅する。

ケルベロスが出たら直ぐに転移、今回で仕留めるぞ。)


新しい装備の水晶も問題なく動いてる。

画鋲は落としたら大変だからアイテムBOXに入れてる。


(そうだ、

ケルベロスと戦う時に俺からのサポートが消えたら、生き残る事を優先しろ。)


そうだった。

前回チャラ男の操作が妨害されたんだ。


00:02


00:01


もう開く…


砂埃を立たせながら門がゆっくりと開いた。


「ん…?」


前に沢山感じたはずの澱んだ気配が少ない。

代わりに、良い雰囲気?違うな森の中みたいな新鮮な気配が多いな。


出てきたのは毎回出てくるゴブリンとかの怪物、

それとスライムみたいな奴ら。

よく見るとスライムは門の前で湧き出てる。


(あれ精霊じゃん。

戦闘関係でリースちゃんの数少ない弱点のひとつ。)


え、弱点ってどういうこと?

というかアレも精霊なのか、私が召喚した奴と姿が違うからわからなかった。


(弱点ってのは、爺さんがリースちゃんに加えた設定だよ。

自然から生まれる精霊の事を、自然と共に育つエルフであるリースはあまり殺したく無い。

って書いてあった。

だから普通に倒せるけど、メンタルに来るかも。)


どんだけ設定練ってるんだ…。


(そんな設定はどうでも良い、やるぞー!)


チャラ男に操られながら、

怪物達の前に転移して攻撃を開始する。


「ん…?」


…なんか、可愛いな。

プルプル揺れてて、ひんやりしてそうで、

触ったら柔らかいんだろうな。


(よいしょ。)


グシャ


キャァァァ!!!


容赦なくメイスが振り翳され精霊は潰れた。

持っているメイスから、少し粘り気のある水色の液体が垂れる。


「あ、う…」


(よーし、次だぁぁ!)


ショックを受けてる最中でも、精霊をドンドン倒していく。

潰すように倒してる為、色々と飛び散っているが服には一切付いてない。


早くケルベロス来てえぇぇ!

もう精霊潰したくない、なんか可愛いクリクリ目があるように見え始めた!

これも設定のせいか…


ーーーーー


ふぅ…


アレから怪物を潰し続けた。

精霊の湧きはいつの間にか止まっており、もう1体も残ってない。


「来なかった…」


仕方ない、予定通りに行く方がおかしいんだよね。

それに来る前提で考えてたけど、実際に来る保証なんてないよね?


「終わり…」


(門がまだ開いてる、終わってないぞ。)


本当だ、門がまだ開いたまま。

でも何処に居るんだろ、魔力使って捜索しても人影だけで近くに居ないし。


「おーい、守護者〜。」


おぉ!

壁走りさんとは沢山会うね、もう友達と言っても問題なさそう。


「久しぶり…」


「えぇ、久しぶりです。

それで今回はもう終わったんですか?」


「まだ、開いてる…」


居るとしたら門の内側とかかな?

あんまり気にした事なかったけど、襲撃が起こるようになってから門の内側ってどうなってるんだろ。


「中に、はいr…ん?」


なんだ、嫌な予感というか少し危ない気配を感じる。

エルフボディの直感だし無視できないよな。


「なにか起きましたか?」


「ちょっと、待って…」


この予感は何処からだ。


揺れてる…

地下!


(リース!飛べ!)


ちょっ、壁走りさん!


お姫様抱っこして全力で真上に飛ぶ。

地面からケルベロスが噛み砕く様に出てきた。


ガチン!


「危な!

ありがとうございます!」


「うん…」


危ねぇぇ!

もうスレスレだった、足持っていかれるかと思った。


「ガァァァ!」


追ってくるじゃん…


(リース、いま妨害を無効化する為に色々やってるから、とりあえ、ず生き…残れ……)


チャラ男神の声が途切れた。


また戻ってくるまでに画鋲を…

いやダメ、壁走りさんも居るし余裕無い。


「1人で、帰れる…?」


「え、あ…

助けて貰っててアレなんだが、強化魔法してくれれば1人でなんとか…」


命の掛かった鬼ごっこ、

なるべく門から離れない様にしつつ、ビルを巧みに使い逃げる。


ガクッ


急に圧力が!


「大丈夫か?!」


ダメだ追いつかれる。


なんとか体制を整え、メイスで迎え撃つ。

ケルベロスの動きは前に戦った時より遥かに良い、スピードも圧も。


「壁走りさん、水晶を貸す…

全力で走って。」


身体能力強化の魔法と水晶を護衛に貸す、これでなんとか逃げ切れるはず。


「しかし、君は…」


「今回は、余裕が無い。

早く行け…」


少しスピードをあげて距離を取る。

降ろした壁走りさんは敬礼をした後に走っていった。


少し余裕ができるかなって考えたけど、


そんな事はなかった。


速い!硬い!強い!


エルフボディで初めての苦戦かも…

もっと自分で動かす練習しておけば良かった、

苦戦っていうのは少し違う、全力出せば余裕で倒せるけど被害が大きくなっちゃうし手加減は上手くできる気がしない。


ケルベロスから逃げつつ、画鋲を刺す隙を探しながら偶にメイスで攻撃する。


膠着状態だ。


状況を変えるには、

被害を承知で本気を出すか、ケルベロスの動きを少しでも止める。

止められれば、今の攻撃を加え続けられて勝てるかも。


前回みたいに足へ攻撃を続けるのはケルベロスが強くなってるし難しい、広範囲で重力を操る魔法を使うか。


自衛隊さん達を巻き込まない様、なるべく範囲を狭く発動しないと。


近くには、

ダメだヘリが近づいてきてる。


空なら安全とでも?

生き残る気あるのか?!

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