第93話 やっぱり不便だ…

白仁琴音しらにことね


「大丈夫…?」


「………」


いつもの私ならリースちゃんに抱きつかれるのはとても嬉しい、いや正直今も少しだけ嬉しいんだけど、


「………」ポロポロ


今日は嬉しいより心配が勝ちます。

朝起きてから、ずっと泣いてる…


昨日なにかやっちゃったかな?

誤って、お風呂に沈めちゃったことしか思い浮かばないけど…


「…それかぁ。」


いや待て。もしお風呂が原因なら私に抱きつかないはず、朱音ちゃんに抱きついてるならわかるけど…


「怖い夢みちゃった?」


「………」フルフル


横に首振ってるし怖い夢でもない…


トントン


「朝ご飯の時間ですよ、早く起きてください。あ、姉さんは朝ご飯無しですけど。」


「え、なんで?!」


「起きてるじゃないですか、入りますよ。」


無視かい!

私の朝ご飯が…


ガチャ


「リースちゃんも起き…え!」


そうだ。今日は朱音ちゃんと別々に寝てたから、リースちゃんの現状は知らないんだった。


「え、と…だ、大丈夫…?」


すごい慌ててなぁ。

滅多に見れない、というかこんな朱音ちゃんは見たことなくて新鮮。


「姉さんに何かされました?」


「……ぁ」


あ、朱音ちゃんがこっち見た。多分何があったって聞きたいんだろうな。


グッ!


「…!」


まず、話すって意思を伝える為のグッドサイン。

まぁ、私が知ってる事はないし、リースちゃん私の腕に抱きついてるから、2人でゆっくり聞くぐらいしかできないよね。


「朝ご飯食べに行こっか〜。」


「………」


うん、立てないんだよね。

私の腕は、手がリースちゃんの頬っぺたに当たる様に抱き締められてて動こうとすると肩が…メキッてね。


「リースちゃん、一瞬だけ離して欲しいなって…」


「……ぇ」


「立つ時に少しだkーー」


「嫌!」


おっと、びっくり…


「いやあぁぁ…」


うーん…

出会って直ぐの頃と同じぐらい不安がってるなぁ。

寝るまでは大丈夫だったし、寝てる間、多分夢がキッカケなんだろうけど。


「朝ご飯持ってきます、姉さんはリースちゃんの近くに居てあげてください。」


「わかったよ〜。」


最近は本当に暇しないなぁ、暇って言い方も変か…楽しい、も違う気がする。

わかる事は、リースちゃんと会ってから暇しなくなったって事だね。


「……えぅぅ」


リースちゃんの助けに慣れてるのかな…

私達は、リースちゃんが何かしらの辛い思いをした事しか知らない、いつか話してくれる時を待ってるだけ。


いや、言い訳かな…

嫌われたくないだけだったのかも。


嫌われちゃうかもだけど、少し踏み込んでみよう。


『ずっと、一緒…?』


ふふ…

リースちゃんの居ない生活なんて、もう考えられないな。



〜エルフ〜


はい、私です。

エルフボディのストレスが限界を超えたのか、私が動かそうとしても動かせません。


「もう少し食べれそうですか?」


「………」フルフル


「リースちゃん…」


琴音さんの腕に抱きつき、たまに手に頬擦りをしています。

朱音さんが持ってきてくれたご飯は少ししか食べてない、ごめんなさい…


「うーん…」


琴音さんも困っちゃうよね。


でも此処までになるなんて、エルフボディにとって妹はトラウマに近いのかも。

ただでさえ疲労が溜まってた所に、急に会わせられたから更に悪化したっぽいし…


!結論!

全部神様が悪い!


本当にこれに限る、極々稀に頼り甲斐があるんだけど普段の姿がなぁ。


「私は戻りますね、お母さん達には体調不良と伝えておきますね。」


「よろしくね、朱音ちゃん。」


時間経過でなんとかなるかな?

今回は過去にないほど落ち込んでるし、神様になんとかしてもらったほうが良いよなぁ…


「…ハハ」


頬擦りした後に不気味に笑う、しかも泣きながら。

ちょっと怖いよ、エルフボディ!


「リースちゃん。」


「……ぅ」


「聞いても、いいかな?」


こんなに真面目な顔した琴音さん、初めて見たかも。


「…言ったら、琴音も、朱音も、みんな離れてく…」


「離れないよ。」


「私はーー」


なんか私は私じゃないみたい…自分で言っててわからなくなりそうだ。

私が知らない事を、エルフボディが喋ってて…


「全部じゃなくてもいい、少しずつでも教えてほしい。」


「うあ、ぁ…」


わかった事は1つだけ、


この体やっぱり不便だ…


ーーーーー


あれから泣いて、泣き続けて。


「朱音から体調不良って聞いたけど、大丈夫なのかい?」


「うん、琴音のおかげ…」


ほとんど回復してママさんの手伝いしてる。

まぁ、泣いただけで回復したわけじゃなくて、女神様が助けてくれたんだよね。


「琴音がすごく不思議そうに見てきてるが…本当にもう大丈夫なのか?」


「うん、大丈夫。」


腕に抱きついてめっちゃ泣いてたはずなのに、急に真顔になって、普通に話し出したらそりゃ見つめる。


「朱音ちゃん…」


「どうしました?」


「あれ、なんだったんだろうね。」


「分かりませんが、落ち着いてる様ですし、いいんじゃ無いんですか?」


「うーん、そうなんだけどさ〜…」


腑に落ちないんだろうなぁ。


(やっぱり違和感、感じるか〜。)


そうだね。


(記憶消す?)


辞めてください、流石にやりすぎです。


「後は火使うからリビング戻って大丈夫だよ、ありがとうね。」


「わかった…」


今日のお昼は揚げ出し豆腐みたい、聞いた事はあるけどあまり食べた事はないな〜。

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