#4
―― 女神暦1328年
午後の座学は
「…足、だっる…」
高野は足を
冒険者に必要な道具のフル装備で3時間半以上にも渡る全力ダッシュ。
日頃から運動不足の高野にとって地獄のような時間だった。
足に巻きつけた薬草のおかげで、
使ってみてわかったことだが、薬草は無限に身体を
一応、怖いので教官にも聞いてみたが、回復の対価に、骨がスカスカになるとか、疲れやすくなるということはないらしい。
しかし、薬草を使うととにかく腹が減る。どうやら回復に必要なエネルギーはカロリーを消費して
---「これは薬草ドリンクを開発して、自傷と回復を繰り返せばお手軽ダイエットになるのかもしれない」とビジネスチャンスに気づいたが、流石にカウンセラーとして自傷行為を
足に
「…」
「…」
レーリーは高野を睨み、高野は背中に冷や汗をかきながら慌てて笑顔を向ける。
「おい、貴様、薬草を知らない、足は遅いポンコツ」
「…あはは、やだなぁ、ポンコツは酷いじゃないですか」
高野は冗談めかしてその場を切り抜けようとするが、背の低い教官は許す気はないらしい。
「話を聞いていたか?…初心者冒険者はどうすべきだと俺は言った?」
「…要約すると、依頼者との信頼関係と
高野は
話を聞きながら、
カウンセリングでなくても要点を抑える程度のことは朝飯前と言える。ただし、本腰を入れて聞いていなかったので、細かい脱線話は覚えていないが…。
相手に聞いていなかったと思わせるような態度をさせてしまったことはカウンセラーとしては褒められたことではないが、これはカウンセリングではないので勘弁してもらおう。
しかし、これでは嫌な生徒だ。レーリーの心象がこれ以上悪くなるのはできれば避けたい。
高野は密かに心の中で反省し、レーリーの講義へ真面目に耳を傾ける。
「…ふん、正解だ」
レーリーは面白くなさそうな顔をする。
「…討伐系の
「そんな馬鹿なことをするやつなど早々いないと思うがな」とレーリーは呟く。
ちなみに、この4ヶ月後に冒険者の卵どころか、冒険者にすらなっていないドワーフの女剣士が1人でソシアの上位種、ハイ・ソシアを討伐して、その死体をギルドに持ってくるという大事件が発生するが、それはまた別の話だ。
「教官」
ヒューマンの男性がハキハキとした声でレーリーを呼ぶ。
「おお、マジか、教官に質問してるよ。勇気あんな」と心の中で多くの受講生が呟く。
高野も先程、薬草の効果について質問したが、個別の質問ですらなかなか勇気がいる。
彼は心臓に毛が生えているのかもしれない。
「…なんだ?」
レーリーはヒューマンの男性の方を向く。
「
「…ふむ。なかなか良い質問だな。貴様、名前は?」
「フィオです」
フィオと名乗るヒューマンの男性はハキハキと返事をした。
「…誰かわかるものはいるか?…マリッサ、どうだ?」
「はい」
午前中の講義で存在感を示したヒューマンの女性が返事をする。
「
マリッサは見えない教科書でもあるのかというくらい綺麗に整理された知識を披露する。
それによれば、主な
護衛系、配達系、討伐系、探索系、
護衛系
襲撃者からの通常のボディガードとしての役割もあるが、主には村から村への移動の際に用いられる。
村の外には魔物や魔獣が存在している。街道沿いには盗賊も出没する場合があり、戦闘能力がない一般人が村から村へ移動するのはかなりリスクを伴う。
そのため、冒険者を雇って移動するのがこの世界の基本だという。
次の配達系
先程、護衛系
討伐系
多くは深刻な被害を発生させる魔物や魔獣の討伐だが、場合によっては盗賊や特定の人物であることもある。
暗殺系
探索系
現在、探索系
ここは公の記録では誰も足を踏み入れたことの無い超広大なエリアだと言われている。
レイル共和国のある大陸から離れた部分にはまだまだ広大な未開拓領域があるらしいとも噂されているとのことだった。
探索系
捜索系
森に迷い込んだ迷子を
救出の場合には、被害を拡大させたり、敵の戦力を強化しないために、
調査系
原因不明の病の調査や、定期連絡がなくなった村の調査、魔物の異常発生の原因調査など
原因を解決するよりも調査することに重点が置かれるため、場合によっては低ランクの冒険者に依頼が回ってくることもある。
採取系
商人や料理人、治癒師、研究者など様々な顧客が依頼してくる。
入手が比較的容易なものもあるが、中にはAランク冒険者以上しか入れない危険区域のものを依頼されることもあり、かなり幅のある
最後の雑用系
例えば、子猫探しや、害獣駆除、交渉や喧嘩の立ち会いなどがこれに当たる。ぞれぞれ、捜索系、討伐系、護衛系とカテゴライズしても良いが、到底そのレベルにいかないような難易度のものだ。
依頼費用はかなり安く、気軽に使えるサービスだが、駆け出しの冒険者がギルドや依頼者に信頼と実績を示すために重要な下積みのための
高野の感覚では「なんでも屋」に近い。
マリッサのおかげで、午後の
本格的なサバイバル知識で、魚もさばいたことのない高野は心の中で悲鳴を上げながら必死でついていった―――生きた野うさぎを捕まえてさばくのは、現代日本人にはかなりハードルが高かった。
密度の濃かった初日はあっという間に夜になり、高野はレーリーに怒鳴られながら作ったテントの中で一夜を過ごすのだった。
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