第49話 味覚

 どうやら、チラシ作戦は大成功で数日後には、予約がいっぱいになった。

 ハイデルや、他の町から、働き手も十数人来てくれて、ジオラスとネンガ村は大盛り上がりだ。


「道を開けろ!リシエル王護衛隊が通る!」

 軍服を着た兵士が、豪華な馬車の前に立ち、そう叫ぶ。

 ふぃー、かっちょいいね。あこがれるね。

 町に訪れた人や、住人は大いに驚いたが、殺されたくないのですぐに退く。


 そのころ、僕はおじいちゃんの家で、ネンガ村初、収穫したダージリンを飲んでいた。

「アオイさんの紅茶、本当においしいね!きっと僕が魔術で急速成長させてたら、出せなかった味だよ」

「そうじゃの。これは手作りの味じゃ」

 おじいちゃん、この前ハンバーグの味がしないって言ったのに、分かるんだね。


「ありがとう。また作ってみるね」

 アオイさんも満足そうに紅茶をすする。


「大変ですぞー!!」

 執事長おじいちゃんが、爆速で走ってきた。

「な、なに!?」

「王家の馬車が来ましたぞ!!」

 執事長、ハイテンション。


「…、行けばいいんだよね?」

 僕は唾を飲み込んだ。え、直接制裁にきた説あるくね?

 これは、僕が落ち着いたほうがいいよね。

「そうじゃす、そうじゃす!!」

 そうじゃすって、何だよ。敬語と『じゃ』のどっちかにしなよ。

「一番いい服を持ってきて。すぐに着替えるよ」


「持ってきましたー!!」

 今度はピーノが、ハイテンションで来た。

「ありがとう!!」

 交換魔術!!あ、物と物を一瞬で交換できる魔術だよ。

「よし、行きます!!」


 どうやら、王家の馬車は、ジオラスの入口に止まっていた。

 なんと、一分くらいで準備ができ、王家を待たすことなく登場できる。

「ようこそいらっしゃいました」

 僕は恭しく貴族の礼をする。いきなり打ち首とかないよね。断頭台持ってきてないよね?

 中から降りてきたのは、ナイスダンディーなおじさまだった。


「君が、カイム・セルトファディア君かね?」

 綺麗な純白の軍服を纏った、おじさま。つまり、この国の強気な国王様だ。

「はい、わざわざ辺鄙な街まで足を運んでくださりありがとうございます」

 僕の服は、かわいらしい白いレースのついた、燕尾服とハーフパンツ、シルクハットだ。後ろ裾が前に垂れてきて、なかなか礼がしずらい。しかも、大きめのリボンが顔に当たってかゆい。


「いや、私が勝手に来たのだ。都合が合わなかったらすぐ帰るが?」

 あ、制裁じゃねえのかよ。一瞬期待した僕が馬鹿だった…。死にたくない!!

「いえ、かなり暇ですので。よろしければ案内しますよ」

 あ、やべ、ちょっとフレンドリーになっちった。やっぱし殺されちゃうかな…?

「はっはっは、もっと気楽に話したまえ、カイム。私のことは気楽にドーズと呼んでくれ」

 へ?まって、崩しすぎて打ち首じゃい!、とかってならないよね?


「え、えーっと、ドーズ様?」

「『さん』でよい、あと、敬語も、もっと崩したまえ。気が重くてたまらん」

「は、はぁ」

 ソリドもそうだけど、王族ってなんか面倒くさいけど気さくな感じなんだね。

「じゃあ、ドーズさん、僕が案内します!」

 うん、あきらめよう☆僕の頭の中は真っ白になった。


「はっはっは、頼んだぞ!相棒!!」

 あ、相棒!王様、それは不味くねぇか!?王様の相棒は、だいたい同い年くらいの恋敵と決まってるんだ!!テンプレなんだ!!

「坊ちゃん、王様がいらっしゃいましたぞ」

 執事長、話しどころじゃなくて、見えてるものもズレてるから!

 てか、絶対ボケてるよね!?ボケチェックテストもつくらないと。


「で、では、ジオラスから紹介しますね!!」

 うん、あきらめよう★

 なんで、こうなっちゃうのかな…僕はため息交じりに歩き出した。

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