第22話 関東

「ねぇ、ネンガ村の地図ってある?」

 僕はおじいさんの家で、お茶を飲んでいた。


「そんな高級な紙を使った製品なんぞこの村には無いよ」

「木を彫ったやつでもいいんだけど…?」

「そんなことをしている暇はないのじゃ…」

 そっか…。じゃあ、地図も作らないとね。


「絵がうまい人はこの村にいる?」

「紙にかける奴は居るか分らんが、オッズという奴は、砂に絵を描いていたりするぞ。わしらから見ればうまいがの」

「ありがとう!その、オッズさんはどこにいるの?」

「オッズは…多分、カン塔にいるだろう」

「関東!?」

 まさかの日本!?


「何を驚く?カン塔だぞ?ほれ、村の端に立っている」

「あ、あれか…」

 僕は、村へ向かうときに見えた、高い石造りの塔を思い出した。

「そうじゃ、そこに行けば、多分、石を彫って遊んでんじゃろうから」

「分かった!ありがとう!」

 僕は勢いよく、麦茶を飲みほして、おじいさんの家から飛び出した。

執事長おじーちゃーんどこー?」


「ふぉっふぉっふぉ、坊ちゃんの後ろにおりますぞ…」

 僕の後ろにいた執事長が顔をずいっと寄せてくる。

「うわぁ!び、びっくりした…」

「ふぉっふぉっふぉ…、何か御用ですな?」

「うん、一緒にカン塔に行ってほしくて」

 迷子エンドはごめんだぞ…。


「もちろんですとも。坊ちゃん、失礼しますな」

 そういうと、執事長は僕を抱きかかえた。

「な、何するの?」

「走っていきますぞ!」



 わしは、坊ちゃんを抱きかかえるやすぐに、クラウチングスタートのポーズをとる。

「えっ、えっ!?」

「行きますぞ…」

 わしは、家系スキル〖瞬俊ばくそく★〗を発動した。

 足に自然魔力が自動充てんされ、目的地まで、フルオートで突っ走る。

「ふぉっふぉっふぉ、快速快速!」



 僕が気付いた時には、カン塔に居た。

 どうやら、驚愕と風圧で気絶してしまったらしい。

「ふぉっふぉっふぉ、お昼寝は済みましたかの?」

「お昼寝って、気絶しちゃったよ…」


 僕は、執事長から降り、カン塔の入口に走っていく。

 こうゆうとこ、子供になったよね。


「こーんにーちはー、オッズさんいませんかー?」

 叫んでみる。意外と響くなぁ!

「こんにーちはー、僕がオッズさんだよー?オッズさん二階にいるよー」

 お、オッズさん、二階にいるのか!

「ありがとー!よし、執事長!行こう!」

「かしこまりましたぞ」


 僕たちは手をつないで、階段を登る。

 塔は、各階一部屋ずつで、天井が高めの塔だ。

 各階に、小さなバルコニーがついていて、どの階でも見渡しが良さそうだが、十階上の屋上が、見渡しが一番いい。


「”おっずのへや”って書いてあるから、ここでいいんだよね?」

 かなり癖のあるリシエル語で、おっずのへやと書かれている。

 確実にここだね。

 僕の代わりに執事長がノックする。

「はいっていいよー」

 ドアノブを引き、お邪魔しますと、僕たちは言って入る。

「ようこそーオッズさんのお絵かきラボラトリへー」


 オッズさんは、ペンキの間から、顔を出して歓迎してくれた。

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