第23話 神秘

 オッズさんは、ぴょこっと飛び跳ねるように立ち上がり、僕たちのほうへ来た。

「うーん、君がカイム君で、隣のおじいちゃんが、執爺ちゃんだね?」

「はい、よろしくお願いします、オッズさん!」

「オッズさんなんて、敬語もいいよー。オッズくんって気楽に行こ~?」


「うん、わかった!」

 う、調子が崩れる。

 オッズ君は、十五くらいの少年で、演説会の時は後ろの隅っこに居た人だ。身長のわりに幼い顔をしていて、神秘的な雰囲気を纏っている。服や、肌はかなりペンキで汚れている。


「オッズくんって、どうしてここにいるの?」

「うーん、暇だから?オッズくんは、あんまり体力無いから、農業のお手伝いもできないんだよねぇ」

「そっか。ところで、オッズくんは、絵が上手なの?」

「うーん…」


 両手で人差し指を作り、頭に当てる。

 なんとも不思議なポーズだが、オッズくんにはまるで違和感がない。

「上手かどうかはわっかんないけど、絵を描くのは楽しいよ~?」

「実はね、ネンガ村の地図を描いてもらいたくて」

 早速本題に入る。答えがいいといいなぁ。


「いいよ~?でもど~やってやるの~?この村には気球は無いよ~?」

 へー、この世界には気球があるんだ!またいつか乗ってみたいなぁ。

「それはね、魔術だよ!」

「もしかして、カイム君は魔術が使えるの~?オッズくんも使えるよ~?」

「うん!魔術も作れるよ!」



 純粋な心というのじゃろうが、どうも坊ちゃんの自慢は、自慢に聞こえないのぅ。

 本人が、自慢と意識しているのか、していないのか…。

 はたまた、何かの策略か…。

 オッズくんも不思議な方じゃけど、坊ちゃんもかなり不思議…いや、変わったお方じゃのう。

 ふぉっふぉっふぉ、こりゃ毎日が楽しくなりますぞ。



「すごいねー、オッズくんには出来ないや~。それで、ど~するの?」

 意外と動揺しないもんだね。オッズくんが例外なのかな?

「僕と、一緒に空を飛んでほしいな」

「いいよ~、ちょっと待ってね~?今、板を用意するから~?」

 答えがいいどころか、どんどん話が進んでいく。


 空を飛ぶことに抵抗ないのかな?気球に乗ったことがあるのかな?

 オッズくんと話していると、疑問がたくさんわくなー!

「よ~し、準備オッケ~!魔術かけて~?」

 オッズくんは、板と筆を持って、バルコニーに立っている。

 オッズくんは、どうやら浮遊魔術が使えないみたいだ。

「分かった!」


 僕は、腕に魔力をためて、オッズくんの腕に触れる。

 異常なまでに冷えていて、細い腕。

 そこに僕の暖かな魔力が流れ込み、オッズくんを宙へ浮かす。

「うわぁ、飛んでる~!」


 僕もすぐさま、足に魔力を込めて浮遊魔術を発動する。

執事長おじいちゃん!行ってくるね!」

「ふぉっふぉっふぉ、お気をつけて」

 僕たちはおじいちゃんに手を振り、宙へとびだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る