第11話 孤独
話を聞く前に、ピーノを落ち着けるために、ピーノが持ってきたろうそくを持って、廊下に出た。
さすがに、広い廊下でろうそく一つは心もとないが、食堂は僕の部屋から、廊下を突き当りまで歩いたところにあるから、段差を気にすることはない。
ホットミルクを、試作に残っていたコックに作ってもらって、走って僕の部屋に戻る。
ピーノに差し出すと、ピーノは、ありがとうございます、と言って素直に受け取ってくれた。
「それで、話せそう?」
「はい、見苦しい姿を見せてしまってすいません」
「ううん、誤ることじゃないよ。僕が原因だろうし」
「そんなことおっしゃらないでください」
これループになる気がするから、もう本題いこうかな?
「それで、こんなことって?」
「…カイム様が、侯爵、奥方様、ヒュールハイナ様から…一瞬で嫌われてしまったことです」
「僕って、嫌われてたっけ?」
「いいえ、むしろとても仲が良かったと私は思います。お食事中もお話しされてましたし、儀式に行く前の馬車の中でも、会話はとても弾んでいたと思います」
「そうだよね。でも、なんでかな、儀式のあとは、少し冷たかったよね」
多分、人脈というスキルは、外れスキルなのだろう。
「はい、多分、カイム様のスキルが原因です」
やっぱしな、きたこれ!おっと、外れスキルで喜んでいる姿は見せたくないから、落ち着かないと。
「人脈…が?」
「はい、非常に申し上げにくいのですが、人脈はいわゆる外れスキル…。あっ、貴族の間ではですけどね。リシエル王国は、軍事力は弱いわけではありませんが、周辺の国家が、大国ばかりですから、攻め込まれたらひとたまりもありませんよね?」
うん、ちょうど一年前くらいにやった地理学だ。
リシエル王国は、北部のほんの先端だけ、海に面しているが、ほぼ内陸国のような国だ。国境付近に山脈はあるが、なだらかで大軍を率いてくるのはたやすいほど。
リシエル王国を取り囲むように配置されている三つの大国は、鉱産資源、水産資源ともに豊富で、何かと恵まれている国なものだから、リシエル王国が、絶対敵にしてはいけない国々なのだ。
しかし、現国王は、なかなかの荒くれ者で、他国の主席や国王に強気な態度をとっているものだから、この国は、開戦の危機に面しているといえなくもない。
つまり、貴族に求められているのは、即戦力。戦える力だ。
貴族は、魔力量も多く、才能に溢れるものが多いため、新兵だとしても、いきなり前線もあり得る。
領主が、前線に立つというのも、またおかしな話だが、自分の領地を守るためと言われれば、しょうがないとも言える。
「なるほどね?」
「あの、カイム様、私、何も話してませんよ?」
まずいまずい、一人でなっとっくして満足してしまった。
「あっ、やばっ」
「ふふ、やはり風の精霊に愛されているのですよ。あなたは」
「そうかな、で、さっきの話は、戦闘系スキルじゃないから、だよね」
「ご明察です。つまり、あなたの運命は、左遷されるか…殺されるかしかないんです!」
まだ、ミルクが入ったマグカップをぎゅっと握って、ピーノは体をずいっと、僕のほうに押し出してきた。
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