ガディ
「お前、死ぬつもりだったんだろ?」
「(えっ???)」
唐突に確信部分を着いてきた竜王。
あれから僕達は競うように笑い続けたんだけど、いよいよ笑い疲れて肩から力が抜けてしまった。今は互いを見合うように胡座をかいて背中を丸めて対峙している状態だ。
そして今、僕は元がリバイアサンだった女性から治癒魔法を受けているところで竜王の言葉にドキリとしたところだった。
「何で分かったのさ、誰にも言わなかったのに」
僕の答えに竜王は口角を上げて声を出してくる、
「ガルバルディアスだ。面倒臭いならガディと読んでもくれても構わないぜ。まぁな、五百年以上も竜王やってりゃぁよ、相手の目を見りゃそのくらいは分かっちまうのさ」
ガディと名乗った竜王も今は元はワイバーンだった女性に包帯のような布を巻いてもらっている。って言うか、残りの元がサラマンダーだった人も元がヒュドラだった人も全員女性だし。
なんだかハーレムを見せつけられているようで、ちょっぴり感じが悪い。
「何言ってんだ? お前は下の世界で取っかえ引っ変えしてたじゃないか」
「(なっ……)」んで知ってるの!? と聞こうとした瞬間、竜王……ガディが僕を制するように右手を伸ばして言ってくる。
「あぁ、悪い悪い。お前の動向はすべてじゃないが見させて貰っていたからな」
「うっ……」と息を漏らして軽く上体を引き、僕はその場にいる女性達を眺める。若干、軽蔑しているような眼差しを向けられているようでいたたまれなくなった。
とりあえず何か言い訳をしなければと思っていると、意地悪そうに笑いながら見ていたガディが今度は擁護するような言葉を出しくる。
「まぁ、気の毒だったな。あれは男の心理をついた完全な悪意だ。お前の世界で言うハニートラップとか言うやつだな」
そう言われて僕はガディの顔を見れずに俯いてしまった。陰キャ側の僕は元の世界であんなこと一生経験できないと思っていた。
でも、こっちの世界では出来ちゃったし毎日違う女の子達だったし。
「その女どもに共通点は無かったか?」
僕の思考を読んだのか、ガディはそんな言葉を投げかけてきた。けど、そう言われて僕は彼を凝視しながら昨日までの事を思い出す。
……のだけど、四人の女性の目が蔑んだ感じに見えたもんだから思わず目を瞑って思い出すことにした。
初めてだった時の子、次の日、次の日……朝食が終わった時に来た子、討伐に出発した後の宿屋にやってきた子達……!!!
僕はある事に思い当たり、一気に顔を上げてガディに視線を向けた。当のガディは無言で首を一度だけ縦に降る。
ガディの言う通り僕の元にやってきた女の子は全員顔は違ったけど、体型や仕草や言葉遣いは驚く程似ていた事に気付く。
それに、最後はかならず頬を染めてフイッと視線を逸らす仕草をしていた。
まるで僕のストライクゾーンを熟知しているかのように。
僕は元の世界ではゲーマーで、だからたまに恋愛ゲームをすることもあった。しかも結構……と言うよりまんま際どいゲームをやっていたし。
そして今考えれば、夜な夜なやってくる子達の体型はほぼ同じで、あの仕草も含め僕がやってたゲームのお気に入りの彼女キャラだった事に気付く。
驚愕だった。
何が驚愕だったかと言えば、何で僕の好みをあの王様が知っていたのか、だ。
ここは異世界。僕はこの異世界に召喚された。僕の世界とは全く違うこの世界。
何で???
僕の困惑を黙って見ていてくれたガディは「はぁ……」と一つため息を吐き、声を出した。
「どうやらお前はアイツらに照準を合わせられたようだな。いや、自分たちの都合のいい相手に照準を合わせたらお前だったと言うべきか」
その言葉に思考が追いつかない僕は、ただただガディを見つめるだけだけど。そんなガディはキュッと目を細めて言ってきた。
「お前は何故そこまでして戦おうとしたんだ?」
何処かで聞いた言葉だった。
その言葉に僕は呟くように答える。
「それは……あの国の、あの世界の平和の……ため……だけど……」
それ以上の言葉を発せな無くなった僕に、ガディは短く言ってくる。
「それだけか?」
それだけって……言われても僕はそれ以外は……
っと呟いた時、脳裏には様々な料理やお酒を振る舞われた宴や与えられた寝室。もてはやされた事や女の子達の事が次々に浮かぶ。
突然、この異世界のあの王宮に召喚された。異世界召喚なんてラノベなんかで読み漁っていたから理解はできたけど戸惑った事は確かだった。
別部屋に招かれて大臣からの話も異世界ものそのもので淡々と聞いてはいたけど、何処か懐疑的だったし。
だけど、王様がやって来た時から状況は一変した。
地下室に行ってエクスカリバー(?)を見せられ抜けと言われた。抜いた後に勇者だと盛大に持ち上げてくれた王様。
少々強引で傲慢さはあったけど本当に良くしてくれた人だった。ただただ感謝するばかりだっ。
右耳の裏が疼き出す。
すると決まって脳裏にはおじいちゃんの声が聞こえてくる。
『いいか、海斗。人にして貰った恩を忘れたら駄目だぞ!絶対にな』
僕は耳裏の疼きに右手を持っていき、その場所を搔こうとした瞬間の事だった。目の前のガディが左手を伸ばし、僕の右耳……の裏あたりの髪の毛を掴む。
そして髪の毛を毟らないようにゆっくりと引き戻した。
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