異世界で魔法剣士〜今は地球に戻って、魔物を討伐する〜

梟 森

第1話 目覚めから発生

「・・・ありがとう。この世界を救ってくれて。そっちの世界に戻っても元気で。」


と、目の前の豪華な鎧を着た男が言う。




「結局、私が貴方の魔法を理解することもできませんでした。残念です。エルフとして、絶対に理解しますから。」


と、目の前の薄い服をまとった長身の女性が言う。




「こっちではよう。ぐすっ。筋肉をつかなかったが、もっと肉を食えよ。」


と、大盾を持った、筋肉ダルマが言う。




「・・・行っちゃうんですか。」


と、一番清楚な少女が言う。




「うん。☓☓☓。みんなも今までありがとう。」


と、僕が言う。僕もみんなも目から熱い液体が出ている。




「・・・ありがとうございます。貴方のおかげで私達の世界は救われました。・・・絶対にそっちの世界、ちきゅうに行きますから。」


と、さっきの清楚な子が言う。




「ふふふ。駄目だよ。☓☓☓。君には王家として仕事があるでしょう。スミソリア、☓☓☓を頼んだよ。」


と、僕は長身の女性に言う。




光が僕を中心に渦巻く。




「ああ、お別れみたいだね。みんな。楽しかったよ。元気で。」




光が僕を飲み込んでいく。完全に光が僕を飲み込む前、☓☓☓が言った。




「・・・様。絶対に会いに行きますから!そして、そこでお伝えしたいことが...」


誰だ。彼女の名前だけ思い出せない。誰だ。誰だ。そうだ。




「アリス!!!」




僕は勢いよくベットから飛び起きた。


「え”。」


そうか、今まで体験していたのは全部夢か。


考えてみれば、人が魔法を使えるなんて小説の中の話だもんな。




「どうしたの〜。水流。なんか言った〜?」


階下から聞こえてくるのは僕の母、亀谷瑞恵だ。基本的に優しいが、起こると怖い。ものすごく怖い。そしてしばらく嫌味を言う。




「なんでもないよ。夢を見ただけだから〜。」




「あら〜。怖い夢でも見たの〜。」




「違うって!」




「そんなことより早くシャワー浴びてご飯食べたらいつもより15分遅いわよ。」



俺は枕元にある時計を見た。6時30分。


「わかった〜。」


そう言いながら着替えを持って下に降りていく。




「朝ごはんなにがいい?」


と、母に聞かれたため、僕はしばらく思案してから答える。




「トーストとコーンスープで。トーストは2枚ね。」




「OK。」




そう言って、母はキッチンに戻っていった。恐らく、オーブントースターでパンを焼きながら、数年前出てきたアイドル ”kind Candy”の動画を見ているのだ。そのアイドルグループに夢中なのだ。特にトリーちゃん。おっちょこちょいの銀髪少女だ。




「これは、また黒焦げのパターンかな。」


僕はお風呂場に入りながらそう呟いた。


温かいお湯で、寝汗を流しながらなぜあんな夢を見たのか考えた。


「やっぱ、寝る前に呼んだ本が原因かな。それにココ最近そういう本ばっか読んでたし。」


そう最近ハマっている本が、異世界物なのだ。僕は読書が好きで、前インフルエンザに掛かったとき、読書がしたかったが、頭を働かせると、気持ち悪くなるので何度も断念した経験がある。


「けど、結構リアルだったよな。本当に魔法があったら、便利なのにな。」


さてそろそろあがろう。これ以上あたってたらゆでダコになる。それに、パンも焼き上がるだろう。








お風呂場から出ると、テーブルの上に焦げてないパンとこぼれてないコーンスープがあった。どういうことだ?基本的に母はおっちょこちょいで、いつも焦がすし、こぼすのだが、気持ちが沈んでるときは焦がさないし、こぼさない。食卓の安全のためには気持ちが沈んでる方がいいのだが、それだとこっちにもストレスがかかる。


「母さん、どうかしたの?」


母は、キッチンでうずくまっていた。


「母さん?」


僕は、母の肩を揺さぶるそうすると母は、泣きはらした顔で、こっちを見た。




「聞いてよ〜。トリーちゃんが、トリーちゃんが芸能界を引退するって。」


正直言うと非常にどうでもいいことだった。ただそう言うと、機嫌が悪くなるため、会話を続けることにした。




「へぇーどうして。」


なかなかの棒読みだったが気づいてないようだ。




「それがね、それがね。親の都合で、学校を転校するからだって。おかしくない。おかしくない。トリーちゃんは確かに地方アイドルだよ。でもお金も稼いでるしグループの仲間もいるしそれなのに転校って〜。」


そうなのだ。kind candyは僕と同じ高校生でトリーちゃんは僕と同じ高校1年生らしい。




「まぁ、仕方ないんじゃい。トリーちゃんも大学とかいきたいだろうし勉強に集中したかったんじゃ?」


考えた末、こう言い、諦めさせることにした。うまくいくだろうか。




「・・・寝る!」




「え。」




「気持ち沈んだし、気分も悪くなってきたし、頭も痛いから寝る!」


そう言ってから母は寝室に入っていった。これは、夕飯まで起きないパターンだな。




「はぁー。いただきます。」


そう言って、僕は朝ごはんを食べていく。そういえば会社に連絡はしたのかな?


ガラッ


僕は寝室の引き戸を開けて聞く。


「会社に連絡した?」




「・・・・・まだ。しといて。あと、今日、夕飯これで買ってきて。」


そう言って1万円を渡してきた。




「わかったよ。おやすみ。」




ガラッ


戸を締めてから、僕はコーコーコーポレーションに電話をした。


トゥルルル。トゥルルル。ガチャ


「もしもし、亀谷ですが。田辺さんいらっしゃいますか?」




「やあ、田辺だよ。お久しぶり、水流くん。」


田辺さんは母の上司で僕の面倒も時々見てくれた人だ。なんでも偉い人の息子だそうだが、僕にとっては人のいいおじさんだ。




「何だ、おじさんか。」




「なんだはないだろう、なんだは。それでどうしたんだ?瑞恵さんは?」




「休むって。その連絡。」




「やっぱりか。トリーちゃんだろ。予想はしてたから、瑞恵さんの仕事は、部下に割り振った。何日で元に戻りそうだ?」




「う〜ん。3日かな。一応余分に4日で。」




「わかった。では今日から4日間のお休みと言いたいが、金曜日だけ出社させるのもなんだから、5日間休みということで。」




「ありがとう。おじさん。またうちに来てよ。手作りの夕飯ごちそうするよ。」




「ハハハ。嬉しいが、もちろん水流くんのだよね。」




「ええ、母の料理は耐性つけてないと厳しいので。」




「・・・それは言ってもいいのかな?まぁいいや。では。」




ガチャ。ツー。ツー。ツー。


「さて、行くか。」


今日から僕は高校1年の2学期が始まる。僕の学校は、公立の梟高校だ。県内で公立だけなら第二位の敷地の広さを持つ。進学校のため学力も高い。なので、日々が疲れる。おまけに行き来に坂があるので今日みたいに自転車だと、帰りが辛い。・・・いきは楽だが。


「戸締まりは大丈夫。さて、いってきま~す。」

















〜〜〜〜5分後〜〜〜






「ふ~着いた。」


7時35分。あれ、家を出たのが7時30分だったから。・・・5分!いくら急いだと言っても早すぎる。いつもは20分くらいかかるのに。きっと家の時計が壊れていたんだな。帰ったら直さないと。




トンッ




「おはよう。亀谷!」


そう言いながら肩を叩いたのは、同じ部活の九澤だ。




「おはよう九澤君。今日は早いね。」


彼はいつも8時5分に来ていたが。




「ああ、それがな。自転車が壊れて、親の通勤に乗せてもらったんだよ。亀谷はいつもこんな時間なのか?」




「いや、家の時計が壊れていて、はやく来てしまったんだ。」




「ふ〜ん。っていうか、亀谷の自転車煙をあげてるぞ。大丈夫かそれ?」




「え!ああ!ホントだ!しばらく使ってなかったからかな。」




「そんな事考える前に水!水!」




「ああ、そうだった!」








〜〜〜数分後〜〜〜






「はぁ、はぁ、はぁ。ありがとう九澤君。」




「はぁ、はぁ、はぁ。購買でパン奢れよ。」


そんな忙しい朝だった。




「教室に行こ。」




「うん。」


テクテク歩きながら話をする。




「さて、今日はつまらない始業式の後、テストをやって、部活だったか。」




「うん、そう。つまらなく長いお話の後、めんどくさいテストをして、お昼を食べて、部活をする。そういえばランキング戦まだだから、対局しよう。」




「了解。でもきっと亀谷には負けるけどな。」




「そんなことないよ。僕だって、ミスもするし戦略が立てれないときもある。僕の戦略って棒銀とごきげん中飛車の2つだけだもん。」




「その後が問題なんだって。どうしても策にこっちが引っかかって負けるからな。」




「そこは長年やってたから。」




ガラッ




「それじゃ。」




「うん、次は部活かな。今日は係もないし。」




「ああ。」


そう言って九澤君は自分の席に向かっていった。




「さてと。」


僕は鞄から本を取り出して読み始めた。最近学校で読んでいるのは、精神的虐待を受けていた主人公が兄の言葉によって声が出てこなくなり、祖父母からの愛情をうけ、声を取り戻しそして周りの人にその愛情を届けていき、母や父、兄との問題を解決していく物語だった。これは何度も読んだが本当にいいお話だった。その本を読んでいたときふと声がかけられた。




「ねぇ、亀谷くん。ちょっといい?」




顔を本から上げてそっちを見た。


「どうしたの?矢木さん。」


そこにいたのは、このクラスの中で中がいい女子の矢木さんだった。




「あのね。その本、朝の時間まで貸してくれない?」




「いいけど。どうして。」




「あ〜。実は、読書感想文忘れちゃって、用紙はあるから、新しく書こうと思ったんだけど、本の内容も忘れちゃったから、本持ってる人も私の周りにいなかったから。ごめんね。読書中に。」


なるほど。うちのクラスは担任が国語の先生だから、忘れたとは言いづらいのだろう。




「いいよ。はい。」




「ありがと。朝のSHRまでには返すから。」




「大丈夫だよ。それより頑張ってね。」




「うん。ほんとにありがと。」


そう言って矢木さんは自分の席に戻っていた。周りに人がいるから、手伝うのだろうか。さて、これからどうしようかな。思案した末僕は、自分の教科書をロッカーに入れることにした。後でやろうと思っていたけど、時間があるから今あることにした。それも3分ほどで終わった。




「・・・どうしよ。」




朝のSHRまで残り20分。席にいてもすることがないので、職員室の横にある連絡版を見に行くことにした。連絡版に行くには、教室を出て階段を登って、廊下を通って、左折して、直進すればある。ちょうど職員室から、テレビの音声が聞こえてきた。


『本日、明朝に複数の場所から発見された穴から、青い粘度の高い液体のような物が出ています。専門家が調査を開始しているようです。』


へぇ、なんだろうな?青い粘度の高い液体。複数の場所。黒だったら石油とか?いや日本に石油はないか。そんな事を考えていたら突如


「おはよう。亀谷くん。」


と話しかけられた。




「おはようございます。按田あんだ先生。」


そこにいたのは、僕のクラスの担任だった。




「なにしてたの?今日は亀谷君の当番じゃないはずだけど。」




当番とは、日誌や配布物を持っていく人だ。出席番号順で今日は24番。僕は13番だ。


「暇なので、お知らせを確認しに来たんです。人から伝えられるより、自分の目で見たほうが確実ですから。」




「そうね。それに、確認されないこともあるし。」




そう。確認されないと困るのは僕達なので、確認はできるだけしているのだ。




「ところで暇なんでしょ。」




「はい。」




「じゃあさ、配布物持っていくの手伝ってくれない。大学からのパンフレットが5校からもあって、重いから。」




5校。つまり5×40人=200部。




「すごいですね。わかりました。どこにありますか?」




「ありがとー。こっちにね、あるから。持てるだけ持ってって。」


そこにはかなりの量があった。




「わかりました。じゃあ僕は3校ほど持っていきますね。」




そう言って、3校分持ったのだが、不思議なほどに軽い。




「よっこらせ。重いねー。それじゃいきましょうか。」




そう言って先生は歩き出す。思いと言ってるが、そこまで重くない。僕が男で、先生が小柄な女の人だからだろうか。遅れないように僕もついていく。




「そういえばさー、今朝のニュース聞いた?亀谷くん。」




「ニュースというと不思議な穴のことですか?」




「うんそう。このあたりでも確認されているそうだから、気をつけてね。怪しい穴があったら近寄らずに大人に教えてね。」




この先生もかなり生徒に対してフランクで、付き合いやすい先生だ。


「わかりました。何なんでしょうね?」




「う〜ん。わっかんないねー。液体もなにか膜で覆われているのか刃が通らないそうよ。」




「不思議ですね。」




ガラッ




「それ、ここに置いて。」




「はい。」




「ありがとうね~。」




僕の席は教卓の前なので先生の直ぐ側だ。なので時々先生の中学校1年生の息子さんの相談をされる。


「ねぇ、聞いてくれない〜。またさ、隆史がさ、私にね、喧嘩をふっかけてくるの。」




「そうなんですか。例えばどんな?」




「こっちがね。料理しているときに、帰って来て、ご飯は食べてきたっていうの。それで連絡をちょうだいって言ったら、こっちの勝手だろって。ふざけんなだよね。」




「ええ、せっかく作っている最中に食べてきたはムカつきますね。」




「でしょ。でしょ。」




「これからは、連絡しないなら作らないにしたらどうですか?そうしたら、毎回連絡はするでしょうし。」


「いいね。それ。」




そんな話も、終わり、矢木さんも本を返してきて、始業式も終わり、テストが始まった。


今までにないほど簡単に解ける問題だった。きっと簡単に作ったのだろう。


1教科が終わり、2教科めまでの休み時間。矢木さんが近寄ってきた。


「どうだった〜。国語のテスト。」




「う〜ん。結構解けたよ。そっちは?」




「えー。難しかったよ。」




「じゃあ、僕、間違った答えばっか書いたのかも。」




「いや、私が間違ったのかも。」




「どっちにしろ、こんな初日にテストなんてしなくていいのにね。」




「ほんと。それな。」




そんなやり取りの後、2教科めが始まった。それから15分後のことだった。




{ウ”ーーーーーーーーーーーーー。ウ”ーーーーーーーーーーーーーーーー。}




どうしたんだ?




ピンポンパンポーン。




{皆さんテスト中なので、席から離れずテストをしてください。先生方、2組、4組、6組、7組の先生は、両隣のクラスを担当してください。それ以外の先生は職員室に集まってください。}




なんなんだろうな?ほとんど解き終わっているので、じっと黒板を見つめていた。




ピンポンパンポーン




{ぜ、全員教員の指示に従って急いで静かに行動してください。教員の皆様は、K-3のとおりにしてください。}




ガタッ。ガタ。ゴト。




「ぜ、全員4組が行ったら、ひとまとまりになって体育館に集まってください。て、テストは中止。静かに行動してください。」


先生が来てそう言い残し他のクラスに向かっていった。


なにがあったのかはわからないが、緊急時のようだ。




「なぁ、亀谷。どういうことだろうな。」


と、榑杉君が言ってきた。




「わからないけど。先生たちにとって予想もしていない事が起こったみたいだね。だって、さっきk-3て言ってたでしょ。」




「うん。」




「前、先生が手帳を落としたとき、様々な緊急時の対応が書かれていてね、その中でもkの列は全く予想もしないことだったよ。」




「た、例えば?」


気づけば周りに人が集まってきていた。




「えーと何番かは覚えてないけど。未知の生物が襲ってくるとか、テロ集団が襲ってくるとか、飛行機が落ちてくるとかかな。」


周りがシーンとなった。




「な、なあ。それって本当か?全部死にそうなものだけど。」




「うん。あ、あそこに先生の手帳が落ちてるよ。見てみよう。」


そう言って拾って中を確かめた。




「あ、按田先生のだ。えーと、kのページはあ、あった。ほら。」


僕はkのページを広げてみせた。


k−1 飛行機が落ちてくる


k−2 テロ集団が襲う


k−3 未知の生物が大量発生する


k−4 直下型地震が梟高校で起こる


k−5 連続殺人犯が来る


完全に静かになった。


最後にこう書いてある。


kのページは起こり得ないことだから覚えてなくて良い。




「き、きっとさっきはkなんて言ってなかったんだよ。」


僕がいうと周りもそうだよねと確認しあっていた。


本当にそうだろか。僕の耳はいい。さっきはKと言っていた。


廊下に出てみると4組がちょうど出発したようだ。僕たちが最後らしい。




「皆〜。行くよ。並んで。」




と、学級委員が言う。廊下にみんなが出てくる間に、自分の鞄からスマホを抜き取る。そのうちに全員並んだので出発した。先生も残っていない。静かだ。


今まで誰にもあっていない。おかしくないか?僕は隣りにいるクリスさんに聞いてみた。


「ねぇ、クリスさん。静かすぎない。」




「え?」




「だって、普通なら、先生が見回りに来るか、他に移動中の2.3年生の足音が聞こえるはず。」




「たしかに。けど、もう全員体育館に行ったんじゃない?」




「そうだとしても、絶対に聞こえなきゃいけないものがあるんだよ。」




「え?」




「前を歩いていた、4組の生徒の足音。」




「ッ!」




「そんなに距離が離れていないはずなのに。」




「もしかして、何かあったの?!」




「わからない。さっきのk-3のこともある。何かあったとして、無事ならいいけど。」




そんなことを小声で話しながら進むと、体育館まで200メートルほどになった。


スタスタスタスタスタスタスタスタ。体育館まであと150メートルほどになった。体育館は静かのように見える。


スタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタ。後150メートルほどだ。




「「ねぇ。あ、どうぞどうぞ。」」




同じタイミングで、同じことを喋ってしまい思わず笑ってしまった。




「じゃ、じゃあ先に聞くね。さっきからかなり歩いてるのに、全くもって進んでいない気がするんだけど。」




「同感。周りも同じ感じらしいよ。」




学級委員も不思議に思ったのか、一旦止めて、近くの教室に入らせた。そこは、裁縫室で一度入ったことのある場所だった。




「ここで少し休んでて。その間に私達がもう一度行って見るから。」


と学級委員の二人が出ていった。




「みんな静かだね。」


と、左に座っているクリスさんに話しかけた。


「うん。なんか、少し寒くない?」




「言われてみれば、確かに寒いね。温度計かかっているから見てみよう。」


と言い、近くにあった温度計を見た。”18度”




「何度だった?私、ここからじゃよく見えなくて。」




「クリスさん。18度。」




「へ?」




「18度。壊れてるのかな?ねぇ、九沢君。そっち何度?」




僕がいきなり大きな声で呼びかけたため、みんなが驚いた。元々静かな僕が、急に大きな声を発したためだろうか。




「え、こっちは17度。”え”!嘘!」




「そっちもか。」


みんながざわめき始めた。そして僕は少し疑問に思っていた。その様子が顔に出ていたのか、クリスさんに聞かれた。




「どうかしたの。亀谷くん。」


心配そうな顔で見てくる。




「いや、今日不思議な夢を見たんだ。そしてその中の一部にあった出来事にこの状況が酷似しているんだ。」




「どんな夢?」




「笑わないでよ。僕が異世界に召喚されて、そこは魔法とか剣とか魔物とかがあって、魔王を倒してほしいっていう夢なんだ。そこでね、魔王を倒しに行く道中に入った屋敷で今起きているような、周りの音が聞こえない。自分たち以外誰もいない。歩いても走っても、先に進まない。段々と気温が下がっていく。そんな状況が起こっていたんだ。ね、あまりにも似ているでしょ。けど、夢のお話だし。」




「・・・確かに似ているね。もし、魔法が使えたらなにしたいの?私は、空を飛びたいな。亀谷くんは?」




「う~~~ん。僕は・・・教科書とか持って歩くの嫌だから、空間魔法?アイテムボックス?を使いたいな。」




「あー、いいね。それ。」


そんな事を話していながら時間が経っていた。




「・・・遅くない?学級委員さん。」




「うん。何かあったのかな?」


全員が気づいていた。この学校で、おかしなことが起きていると。


そんなときだった。




ガシャーン




窓が勢いよく割れた。




「「「「「「「「「「「「「「「「ッ」」」」」」」」」」」」」」」




全員が音の発生源の方向を見た。


「・・・行ってくる。」


僕は言った。




「え、やめたほうがいいんじゃない。亀谷くん。」




「学級委員の人たちや、割れたガラスも心配だし、それに、僕の見た夢に関係あるとしたら・・・一番気になるしね。クリスさん、5分くらいで戻るよ。」




「OK。」




ガラッ。




僕は立ち上がって扉を開けた。




「おい、亀谷。どこ行くんだ。」




「割れたところを見に行ってくる。5分くらいで戻るから。あと、スマホは通じるから電話で実況するよ。誰か、持っている人いる?」




「あ、私持ってる。」


と、矢木さんが言った。




「良かった持っている人いた。」


ところでなんで持ってたんだろう。




「なんか、不気味だったから持ってきて正解だったよ。」


そういうことか。




「同じだ。僕の番号は、@@@ー@@@@ー@@@@。」




「こっちは、***ー****ー****。」




「かけるよ。」




トゥルルル。トゥルルル。カチャ。




「通じたみたいだね。それじゃ。」




ガラッ。




僕は扉を締めて歩き出した。いつの間にか廊下に先が見えないほどの霧がかっている。




『廊下にかなり濃い霧がかかっているよ。体育館の方向に向かうね。』


と、実況をしていく。




『窓から見てもわかる。なにもない?』




『今のところ何も、ちょっとまって。・・・・これは。』




『どうかしたの。亀谷くん?』




『ん。ああ、ごめん。おかしなものを見つけたんだ。』




『なに?』




『写真取ったから送るね。』








矢木SIDE




ピロリーン


「みんな、こんなものを見つけたって。」


そう言ってから私は、みんなに見せた。


「これは。」


「なんだろうね。」


「棒?」


「いや、長さと太さ的に棍棒じゃね?」


「なんか付いてる〜。」


「赤いな。」


「どっちかというと赤黒い。」


「血みたいだね。」


「これ血だとしたらそれ殴られたの?」


「「「「「「「「「「「「「「ッ!」」」」」」」」」」」」」


「亀谷くん!すぐ戻って!」






水流SIDE






『亀谷くん!すぐ戻って!』




『わかった。今行....うわっ。』




『亀谷くん!亀谷くん!』




『大丈夫。殴られたけどかすったっだけだから。でも、囲まれたっぽい。』




『えぇ!』




『位置、さとられないようにこっちの音量と光、0にするから。』




『・・・わかった。』




『聞こえないけど、スマホは胸ポケットに入れておくね。』




スポッ。




スマホを入れてから、周りを見渡した。さっきのはどこ行った。人か?動物か?それとも・・・?




{グゥルルルルルルルルウ}




僕は正面を見た。そこには体長3Mほどの黒い毛をした、金色の目をした狼がいた。




「あれは、夢で出てきた。確か、・・・ブラックフェンリル。討伐難度B。順災害級。なんでこんなところに。」




{ガウッ}




ブラックフェンリルが勢いよく飛び出してきた。なんでこんなことに。夢の中のように魔法が使えたら。その瞬間、僕は白い光に包まれた。

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