第48話

「それってどういう事?」


ライリーさんに恐る恐る聞く。

まさかライリーさんもロータスの仲間…って事はないな。


浮かんだ考えに自分でないないと笑ってしまう。


「それは私からの命令で彼を泳がせるように言ったんだよ」


ジムさんが間に入って説明してくれた。


「ライリーがそばにいない時はブルード伯爵の部下のグリフィスがその役目を担っていたんだ…しかしあそこまで愚かなやつだと思わなかった。怖い思いをさせて本当にすまなかったね」


ジムさんも申し訳なさそうに謝ってくれる。


「なんだ、そんなことかー。ちゃんといざと言う時は守ってくれる気でいたんでしょ?」


「もちろんだ!何度あいつを殴ってやろうかと…」


ライリーさんが拳を握る。


「それを何度止めたか…」


ジムさんがはぁと隣でため息をついた。


どうも見えないところで彼らも戦っていてくれたようだ。


「ふふ、大丈夫ですよぉ。そんなにヤワじゃないですから、強くなきゃ下町で銭湯なんてできませんからね」


私の言葉に少しホッとしながらもライリーさんはまだ気にしているようだった。


「あっならひとつお願い聞いてもらえません?それでこの件はチャラにしましょう」


「お願い?」


「ええ、さっきからずっと我慢してた事なんです…」


私はライリーさんとジムさんにお願いを耳打ちした。


「「ええ!」」


二人は私のお願いを聞くなり大きな声を出して驚いている。


「ダメですか?」


「いや、ダメじゃないが…」


「やめた方がいいんじゃ」


二人は私のお願いにあまり賛同したくないようだった。


「えー、じゃあ私の事を騙してた事、一生根に持ちますよ」


本当はそんな気ないが軽く脅してみる。


「うっ…」


ライリーさんの渋そうな顔に思わず笑ってしまった。


「わかった、その代わり俺が必ず一緒に行くからな」


「やった!」


私は思わずガッツポーズをしてしまう。


「一体何を頼んだの?」


お母さん達が気になったようで聞いてきた。


「そりゃあの男に一発食らわせてくれって!」


私は拳を前に突き出して殴るふりをした。


「まぁマキったら」


「なにーお母さんは反対するつもり?」


「しないわよ!やるなら思いっきりやってきなさいよ」


「任せて!」


「はぁ…ほどほどにしなさいよ。全くジムさん娘が迷惑をおかけしてすみません」


「いや、そのくらい大丈夫ですよ。ただ怪我や危険が無いとも言いきれないので…」


「そこは本人に責任を取らせますのでお気になさらずに」


お父さんはジムさんにペコッと頭を下げていた。


「よーし!そうとなったら今日の掃除もさっさと片付けちゃおう!」


私は腕まくりをすると銭湯に向かおうとして、くるっと振り返った。


「ジムさん達入って行きます?」


「いいんですか?」


「是非!」


「お父さんいいよね、今日はもうお客さんも来ないでしょ」


「そうだな…」


お父さんと頷きあっているとなんだか外が少し騒がしく感じる。


私達は顔を見合わせてみんなで外に出ることにした。

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