第47話
「そう言えばそんな事言われたような…」
「だと思いましたよ、ここでの生活に慣れてきたのは嬉しいですが君達が客人である事には変わりないからね」
「それって…なんか違うもんなんですか？」
「もちろんだよ、君達が敵意が無いことも証明出来たし国からきちんと保護対象として迎えられているんだよ。君達に危害を加えると言うことは国に逆らうのと同じ事だよ」
「そ、そうなんだ…」
来日した他国の重要人物的な立場なのかな？
「でも君達はあまりそういうのを望んでないようなので普段はいつも通り接しているけどね」
「あっ、その方がありがたいです」
これからもそうしてもらおう。
「コーヒーだってなんなら国から支給して貰ってもいいけど…」
「いや、そういうのはいいです、商売なんで！」
ジムさんはだと思ったと苦笑していた。
そんなタダで貰ったものを売って生活するなんて…楽そうだな。
私は甘い考えにブンブンと首を振る。
ダメだ！そんな事考えたらおじいちゃんに怒られる。
それに銭湯としての誇りもある。
私の心の中の葛藤を見透かすようにみんながじっと微笑みながら見つめていた。
「だからね、ブルード伯爵との繋がりを作ってコーヒーを仕入れてもらおうと思ったんだよ」
「それは、助かります」
私はジムさんとブルード伯爵にペコッと頭を下げるとブルード伯爵を見上げた。
「ですが、ブルード伯爵は本当にそれでいいんですか？領主のジムさんに言われたからいやいやとかなら断ってくださっていいですよ」
私の言葉にブルード伯爵は驚いた顔をしてジムさんに視線を向ける。
そしてジムさんがほらなと勝ち誇るように笑った。
するとブルード伯爵は「はぁ」とため息をついて私を見つめた。
「先程も言ったようにそんな事でこの件を決めたわけではありません。私は私がいいと思ったから返事をしたのです」
ブルード伯爵は真面目な顔で淡々と話す。
「でも…」
ブルード伯爵にメリットがあるとは思えなかった。
そう言おうとするとお母さんに止められる。
「マキ、これ以上は失礼になりますよ」
お母さんが子供をあやす様に言った。
「そう…だね。ブルード伯爵失礼なことを何度も言って申し訳ありませんでした。コーヒーの件よろしくお願いします」
「ああ、では後日そのことは改めて相談しよう」
「はい！お母さん、お父さんいいよね」
「いいよねってこちらとしては断る理由がないもんな」
「よかったわー、コーヒー牛乳がまた飲めるのね」
二人とも賛成だと笑顔で頷く。
明後日にお屋敷にうかがうことになり、ブルード伯爵を見送った。
「よかった」
ホッとして疲れたと番台に寄りかかってため息をつくと、ライリーさんが申し訳なさそうに近づいてきた。
「ライリーさん、あの時はありがとう」
そう言えば助けて貰った時のお礼を言ってないと思って立ち上がると頭を下げた。
「やめてくれ、頭を下げなきゃいけないのは俺の方だ」
なんか神妙な顔のライリーさんにらしくないと眉間にシワがよる。
「ライリーさん、どうしたの？なにか変なもんでも食べた？」
心配になって顔を覗き込むとサッと目をそらされる。
なんかその仕草にムカッときてわざと背けた方に動いて正面から見つめた。
「ライリーさんらしくない！言いたいことがあるならはっきり言って！」
じっと見つめるとライリーさんも見つめ返してきた。
「守るのが遅れた事だよ」
「遅れた？別に遅れてないでしょ、むしろいいタイミングだったよ」
「違う、俺はずっとロータスが問題あるのを知っていたのに放置していたんだ」
「え？」
ライリーさんの告白に私は驚きを隠せなかった。
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