第18話 来訪者
「出来た出来た」
出来上がった五十本のポーション瓶を前に、私は達成感を感じていた。
ミカゲのポーションも問題なく作れたし、通常のポーションも今までの感じと変わらず作ることができた。ブランクはあったけれど、問題なさそうだ。
でも、ミカゲはこんなにたくさんのポーションをどうするのだろう?
材料費はミカゲ持ちだったし作成料もくれるという事だったけれど、なかなかの額になるはずだ。
お友達にあげるにしては、大盤振る舞いではないだろうか?
このずらっと並んだ瓶を見たら、やりすぎな現実に気付いたりするかもしれない。
そんな私の心配をよそに、ミカゲにポーションの完成を話すと手放しで喜んでくれた。
ポーション瓶は確かに大きくないが、五十本もあれば相当の重さのはずなのに、木箱を軽々と持っている。
ミカゲはすぐに配りに行くと、出て行った。護衛が居ないので外に出ないよう言い残して。
そして、お守りといって渡されたものを手に持って、私ははっきりと戸惑っていた。
「これって、お守りじゃないじゃない……」
ミカゲがお守り代わりと置いて行ったものは、小さな家の形をした魔導具だった。
見た目は愛らしいが、玄関以外から家に入ると警告音を鳴らす。そして、その警告音で離れなかった場合は攻撃するという恐ろしいものだ。
そんなものをお守り代わりに置いていくミカゲの心配性ぶりに、びっくりしてしまう。
そして高い。
仕組みも気になる。
流石に人から借りたものは分解したりはしないけれど。
……うん……しない。
手に取っていると誘惑に駆られそうだったので、それを手から離す。
名残惜しい気持ちになりつつも、素材の部屋に向かう。
薬草類は、ミカゲと買い物に行ったときに馬鹿みたいに買ったので豊富だ。これで、今日はポーションを作ろう。
ミカゲから薬屋をやらないかと言われたときは、全然現実感はなかった。それでも、ミカゲと話していると新しい事にチャレンジしたいという気持ちになった。
それに、下心もある。
薬屋をやっていれば、冒険者であるミカゲとのつながりがもてるという事だ。
ミカゲはギルドで定期的に仕事を受けなければいけなそうだったから、ポーションを必要とするだろう。
ミカゲには特別価格で譲ってもいい。もちろん無償であげてもいいけれど、そうすると遠慮してこなくなってしまうかもしれないし。
そこまで考えて、私は両手を頬にあてた。
「下心、ありすぎかも」
会いたい気持ちだけで、開いているわけじゃない。
ちゃんと、薬師という仕事自体も楽しい。
きっと、他の人の役に立つこともできる。この、何にもなかった私が。
薬師だったおかげで、ミカゲの呪いを解けたことが嬉しい。
……結局、ミカゲに戻ってしまう。
こんな、短時間でこんなに人を好きになることがあるんだろうか?
初めて優しくされたから?
いや、こんな私でも学生の時は仲良くしてくれる人も、居た。
でも、こんな気持ちにならなかった。
何故だろう?
今はミカゲと私は雇用主と被雇用者だ。お金を介した繋がりである。
三か月後、ミカゲはお金を払わなくなった私との関係を、続けてくれるのだろうか。
いや、そうならない為に、努力するのだ。
努力は得意だった。
ずっとずっと、誰も居ない部屋で延々と勉強していた日々を思い出す。
積み重ねは、きっと力になる。ミカゲに対しても、信用を、積み重ねるのだ。
まずは、薬師としての実力を見てもらう。そして、薬屋を開く。
安定して供給できることを証明して、お客になりたいと思ってもらう。そして、徐々に距離が縮まるように信用を勝ち取る。
最初はお友達の地位を、手に入れるんだ。
欲深い自分に恥ずかしくなりながら、私は魔物素材を探った。
まずは、ミカゲに渡したポーションをもう五十は作ろう。ミカゲに渡したポーションは低級だ。
中級、上級と続き、私はそれにプラスして特級のポーションの研究を進めていた。
中級と上級は数本作るとして、特級の研究を進めるのがいいだろう。
薬師の実力を見せつけるのだ。
成功すれば、討伐時の安心感もあるだろうし、きっときっと、頼りにしてくれる。
そして、一番重要な事は、他の店にはないという事だ。
私は、とてもやる気が出て、ひとつひとつ魔物素材を厳選していった。
ここにある魔物素材は、改めて見ても本当にすごい。
私は、どきどきとしながら、一つの魔物素材を手に取った。
緑色の葉のように見えるこれは、スウェンという魔物の上に生える、一見植物のように見える虫だ。この素材は何に使えるだろうと考える。
圧倒的に知識が足りない気がする。
薬屋として必要なものはなんだろう?
街にある他の薬屋に行ってみようかな。敵地視察だ。
争わないかもしれないけど。
そもそもポーションはお店で買うものだったのだろうか。今まで考えたこともなかったので、良くわからない。
王城では、作成したポーションに関しては騎士団に納品されると聞いていた。
「ギルドに連れて行ってもらうのが、いいのかな?」
ミカゲは薬屋を営むのはどうかと言っていたし、付き合いのある人が居るのかもしれない。
ギルドに納品させてもらう事は可能だろうか。
作成は割と得意だと思うけれど、どんなお店にしたいかも考えなくては。
接客はあまり得意ではないけど、話を聞いて調合を考えるのも面白いかもしれない。
まだまだ研究途中だけど、こういうものが欲しいというゴールが見えている研究も面白そうだ。
その場合、待たせた結果出来ませんでしただと仕事としては成立しなくなってしまうけれど。
そう悩んでいると、ポーンと聞いたことがない音が家に響いた。
呼び出し音だ。
来客だろうか。
私はこの街に尋ねてくる知り合いは居ないので、ミカゲのお友達かもしれない。
そう思って、そうっと階段を下りる。
ミカゲのお友達なら、出ない方がいいかもしれないので、なるべく足音を立てないようにする。
そして、のぞき穴から、外をうかがう。
「……!」
声が出そうになるのを、慌てて両手で口を押さえて我慢する。
まさか。
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