ギルド最弱と呼ばれているけれど、実は数年前、大厄災を起こした最強の能力者でした。最高のヒロインと一緒に隠していたチートの力を使って無双します
シア07
プロローグ
突然だが、俺は一つだけ聞きたいことがある。
もしも、誰かに嫌がらせや、悪口を言われたとき。
どうするのが一番合理的なのだろうかと。
殴って成敗する? 違う。
口で言い負かす? 違う。
答えはこうだ。
「おい、見ろよ。あれ」
「ああ、アイツのことか」
「気持ち悪いよなあ」
「…………」
無視である。
無視することが一番最適なのだ。
抵抗するなどもってのほか。非効率。
俺はこの数年間でそう学び、実感した。
「っち、なんで言い返さねぇんだよ、この野郎!」
近くにいた三人衆が俺の方を向いて言ってくる。
その一人が俺に向けて石を投げ込んできた。
俺は軽く首を曲げてそれを避ける。
「……避けやがって。うぜぇなあ」
「ほんとだよな。最弱なら最弱らしくやられとけっつの」
こんなことが俺の周りだと日常茶飯事だった。
いつもの光景であって、いつも通りの日常だった。
俺はそいつらを無視しながら、歩いていく。
「おい、もう逃げんのかよ」
「……もう、ダンジョンにいかないといけないからな」
今日はあまりにもしつこかったので、少し話してみる。
これくらいなら怒りはしないだろう。
「ダンジョン? っぷ、最弱のお前がかよ。やめた方がいいんじゃねぇの!」
「まあ……敵と戦うことはしないから大丈夫だ。今回のクエストは採取だし、別に問題ない」
「今回は……? いつもだろ。俺、知ってんだぞ、お前がギルドでクエスト受け持ってんの採取のクエストしかねぇの」
「マジかよ!」
「やっぱ、雑魚じゃねぇか」
そういうと、三人だけでなく近くにいた人たちにも笑われる。
それは事実だし笑われても仕方がない。
俺が受けるクエストは採取だけ。
討伐のクエストは受けたことがない。
「……じゃあ、俺は行くから」
後ろを向いて歩き出すと、
「おい待てよ! 話はまだ終わってねぇぞ!」
「「そうだそうだ」」
「……まだなにかあるのか?」
「なんでお前は武器持たねぇんだよ、馬鹿なのかよ」
そういうとひと笑いが起こる。
俺は思考を巡らせ、答えを出す。
「……死ぬか。そうできたらいいのかもな」
「なんだよ、どういう意味だよ!」
怒らせてしまう。
言い方を間違えてしまったらしい。
「……もう時間もないし、行かせてもらう。話はまた今度にしてくれ」
「っち、ふざけんな、俺をなめてんのか!」
「別に舐めてない」
「もういい。ふ、勝手に死ぬなよ。俺の遊び相手がいなくなるんだからな!」
「ダンジョンでやられても、助けれる奴なんていないからな~」
「心配してくれてありがと、じゃ」
俺はダンジョンに向かって歩き出す。
後ろで笑われているのを知りながら。
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「着いた」
数十分歩いた所にそれはあった。
ダンジョン。正確にはシヴァニア王国になかにある町、レアルスタルあるダンジョン。
名前は『マーヴェリック』という。
魔石を落とすモンスターや、希少価値の高い草や花が普通の場所よりも多く存在し、冒険者にとっては楽園のような場所。
しかし、同時に強敵が住み着いていて、やられても助かる人は少なく、死人が最も多い場所でもある。
「……入るか」
なかに入り、まずは下を目指す。
ダンジョンには層があり、うわさに寄れば100階層近くまであり、1層1層にボスがいるらしい。
しかし、歴代で行った層は24階層までだと聞く。単なるうわさでしかないだろう。
俺は第2階層まで降りて、採取用の草を探す。
採取クエストをやりこんだおかげか、どの場所にどの草が生えているのかわかるようになっていた。
モンスターがどの辺に湧くのかも大体理解しているので、安全に行ける。
いつものように草を見つけ、採取する。
あとはこれをギルドに届ければ、クエスト完了。
これで今日の仕事は終わりだ。
「戻るか……」
その時だった。
「キャアアアアアアアアアア!」
「!?」
女の子の悲鳴が聞こえて来た。
奥の方からだった。
「……モンスターに狙われているのか……」
気づき、すぐにそっちの方へ向かう。
ダンジョンのモンスターは凶暴だ。
たったの数秒が命取りになる可能性がある。
今すぐにでも助けないとマズイ。
向かった先には追い詰められた少女がいた。
近くには数体の犬型のモンスター。
どうやら囲まれているようで逃げ道はなさそうだった。
「……助けるか」
俺は一瞬でそう決意して、モンスターのすぐ近くに行く。
「!? お兄さん逃げてください。モンスターです! 私のことはいいから……」
「……大丈夫だ。別に倒す気はない」
凶暴な目をしたモンスターは視点が少女から俺の方へ移る。
少女より俺を先にやっておきたいらしい。
物凄い形相と声で威嚇される。
俺はものおじせず、じっと睨む。
特になにもせず、睨む。
するとそのモンスターたちの目がそっと俺から離れる。
そして、すぐさま消えていった。
俺は少女の方へ駆けよる。
俺よりも多分年齢は下で小柄。
整った顔立ちに長い黒髪をしていた。
「ふぅ……大丈夫か? 怪我とかは……していないか?」
「だ、大丈夫です。傷一つありません」
「そうか、よかった……」
とりあえず安堵する。
一安心だ。
「なんでこんなところにいたんだ……危ないだろ」
「今度はじめてのクエストにいくので……ダンジョンってどんな感じなのかなって思って……嬉しくなっちゃってちょっとだけ下見に……そしたら帰り道がわからなくなっちゃって……」
たまにいるパターンだな。
まだダンジョンの危険性がわからない奴にありがちなことだ。
「……今度からはきちんとパーティーを組んでくるといい。ギルドで一緒にやる人を集めれば簡単だから。とりあえず、ソロは危険だ。わかったか?」
うんうんとうなずく。
すると、変なことを口走ってくる。
「そういえば、いまの……凄かったです……」
「……別に。そこまで凄いことではない」
単に睨んだだけだからな。
「見ていたらわかりますよ。あのモンスターを目だけで追い返すなんて……」
「普通だ。あのモンスターは最弱のモンスター【ドーベルマン】だしな」
「それでも……凄いです。なにかの
「俺は…………
含みのある言い方で言う。
「そうなんですか!」
にこにこと笑顔で話す少女。
俺の少し苦手なタイプだった。
「……じゃ、俺は行くから。あそこに上への階段がある。そこをあがれば、外が見えるから。あとは一人でダンジョン出れるな?」
「出れますけど……」
「ならいい。じゃあな」
「もう行っちゃうんですか! お礼させてくださいよ!」
「お礼なんかいらない」
俺はそのまま去っていく。
少女はぽかんとした顔で俺を見ていた。
「え! ちょっと!」
数歩あるいてからまた呼び止められる。
足を一旦止め、振り向く。
「せめて……名前だけでも教えてください!」
「名前……名前はレン。ただのレンだ」
「レンさんですか……覚えておきます!」
俺はまだ気がつかなかった。
これが運命の出会いであるということに。
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