強敵との遭遇その3

 EXスキル、挑戦者を発動して、オーガを一瞬見たのちに、バンはオーガの方へ走り出した。

 

「グルゥゥッッッ!? ガァァ!」

 バンの異変に気づいたのか、一瞬驚きの声を上げたが、次の瞬間にはオーガもバンへ走り出していた。オーガのスキルかは分からないが、バンが与えた足の傷をもろともせず、走り出したオーガにバンも驚いたが、バンもすぐさま思考を切り替え、オーガに飛び掛かった。


「はぁぁぁぁ! 強打ぁぁぁぁ!」


「ギガァァァァァァッッッ!!」


 その時、バンのスキル、強打を使用した攻撃と、オーガの攻撃が衝突した。

 両者の攻撃が拮抗したかに思われたが、徐々にオーガが押されはじめ、最後にはオーガの丸太が砕け散り、オーガの胸にバンの攻撃が振り落とされた。


「ギャァァァァァッッッ!!?」

 オーガはバンの攻撃を受け、大きく体を揺らし、地面へ倒れた。しかし、まだ息はあるのか、両手を使い、体を起き上げようとする。


「はぁはぁはぁ、これで終わりだ。強打!」

 最後の一撃を浴びせるため、バンはゆっくりとオーガのもとへ歩き、スキル強打を使用し、オーガの頭へ打ち込んだ。

 オーガの頭は、バンの攻撃を受け、原形が分からないほどに粉砕され、ピクッ、ピクッっと体を痙攣させ、遂には動かなくなり、その生涯を終えた。


「はぁはぁ、これで……終わったのか? ……終わったのか。よし、勝った。すぅぅ、勝ったぞーー!」

 うれしさのあまり、バンはオーガのすぐそばに倒れ込み、大きく息を吸い、勝利の雄たけびを上げたのだった。



 その後、バンはゆっくりと立ち上がり、周囲を確認しながらライのもとへと移動し、ライと共に町へと帰還するのであった。



 ~町の衛兵~

「うん? 血まみれ!? おい!血まみれの人と子供が帰ってくるぞ! 救護班を連れてこい! 早く!」


「おいっ! お前大丈夫か?! って、バンじゃねぇか、いったい何があったんだ? ってか、そんなに血を流してダイジョブなんかよ?!」

 衛兵は驚いた様子で、血まみれのバンに迫るように言った。


「大丈夫ですよ、って言いたいですが、正直立ってるだけでも精一杯です。何かポーションとかありませんか? その分の代金は後でお支払いするので。あと、この血は返り血ですのでご心配なく」

 そう、苦笑いした表情でバンは話した。すると、衛兵は納得したかのように


「そうか、何があったとは聞かねぇ、ひとまず冒険者ギルドに連絡するから、そこの医務室で少し休め、後、すまねぇんだが、今の手持ちのポーションが最下級ポーションしかねぇんだ。これでも飲めば少しは気休めになるだろう。後、その子は俺たち衛兵が家に帰しといてやる。それでいいよな?」

 この世界のポーションは、最下級、下級、中級、上級、特級、最上級となっているが、上級以上はあまり流通しなく、特級以上からは部位破損した体を修復できるようになり、最上級は死にかけの人すら一瞬で治してしまうほどの効果があるらしい。


 今回、バンが受け取ったのは最下級だが、駆け出しの冒険者なら、飲めば半分ぐらいの体力を回復させられるほどには効果がある。

 

 しかし、失った血や、お腹が満たされるなどの効果は無いため注意が必要である。あと、ポーションは苦い! それはもう青汁の数十倍から数百倍は苦い。


 伝説では、最上級は、無味無臭であると言われている。なぜ苦くないのかは筆者も分かっていない。


「はい、ありがとうございます。いただきますね。ごくっ、ごくっ、っっん! やっぱり苦いですね。では、俺は冒険者ギルドに行きます。ライ君もこの衛兵さんにお家に送ってもらいな。では、また」


「わかった! 今日はありがとねおじさん! ばいばい!」

 苦そうな顔をしながら、ライや衛兵に挨拶をすると、バンは冒険者ギルドに向かって歩いて行った。


 ~冒険者ギルド~

「うん?」なにかあったのか? 騒がしいったらありゃしねぇな。 なんだあれ? 真っ赤だな…、ってあれ血か? それにあいつは…バンじゃねぇか! おいバン! ダイジョブだったのか!」

 ガリッシュは驚いた顔をしながら急いでバンのもとへ向かった。そこには、血まみれのバンが立っており、周囲の人は避けるように口々と噂話を始めるのであった。


「あっ、ガリッシュさん、ちょっともう限界だから手短に話しますね。まず、今回の緊急クエストをクリアしました。子供は衛兵にお願いして家に帰らせました。あと、森で変位種のゴブリンがいたので討伐しておきました。薬草を採取するところの奥を行った場所に、木々がなぎ倒されている所があるはずですので、そこに俺が討伐した変位種ゴブリンが死んでいるはずです。では、後はよろしくお願いします…」

 そう言ってバンは、ガリッシュに支えてもらうように倒れると、静かに寝息を立て始めた。


「なんだって! っておい、 はぁ、分かった。おい、誰か! バンを医務室へ連れて行ってやれ! ベットに寝かせるときはその汚ねぇ装備を外してやれよ! あと、数人戦えるやつを連れてこい! 俺と一緒にレーゼンの森へ行くぞ!」

 ガリッシュはあきれたようにバンの方を見ると、少しうれしそうにしながら冒険者ギルドの職員に指示を出し始めた。


 ガリッシュは、昔は荒くれ者のガリッシュと言う異名で知られていて。全盛期にはAランク冒険者になったりと、王都では結構有名な冒険者でした。今でも、Bランク冒険者並みには戦えるので、ルーゼンの町で一番強いのはガリッシュかもしれません。もう、冒険者は引退してますけどね。


 

 この世界のレベルアップの原理は、敵を倒したらもらえるのではなく、どれだけの経験を積んだか、またはどれだけの功績を積んだかです。一番レベルが上がる例でいうと、格上のモンスターを倒したとかですかね。今回のバンはそれにあたります。一応、弱いモンスターと戦闘しても経験値はもらえるんですが、あまりもらえません。しかも、バンはレベルがある程度上がってるのに自分よりも圧倒的な格下としか戦闘していなかったので、全然強くなれていませんでした。


 次はオーガと呼んでいたモンスターを倒した結果どのくらいステータスが上がったかが注目ですね。

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