前世の記憶を持つ俺が世界最強の冒険者になるまで。使えないと思っていたスキルが実は最強でした?~いやいや、この世界ハードモードすぎるんですけど~

ガクーン

ある男の物語

この世界は、モンスターと呼ばれる、人間ならざる者たちに支配されていた。


 その者たちは、神と呼ばれる者たちが作ったこの地を、自分のものにしようと企み、神たちに勝負を仕掛けたのだ。しかし、想像を絶する力を有する神たちでさえも、その者たちの強さに恐れを抱き、別世界から、後に勇者と呼ばれる者たちの魂を呼び寄せ、その世界の人間種と協力して、人間ならざる者たちを討ち滅ぼせと天命を出した。


その日から、その世界をかけて、勇者と人間ならざる者たちの戦争が始まりを告げ、その地は混沌と化した。



 それから約100年ほどの歳月を得て、別世界から来た勇者たちの力で、人間ならざる者たちの親玉は討ち滅ぼしたのだが、すべての人間ならざる者たちを討ち滅ぼすことはできなかった。


 そこで勇者たちはこれ以上悲劇を繰り返さないように、人間種たちとその人間ならざる者たちとの住む地域を分けることに成功し、人間種たちの住む地域を生存域。人間ならざる者たちの住む地域を暗黒域とし、この戦争に終止符を打ったのだ。


~それから約1000年後~


「で、1000年後の世界が俺がいるこの世界って訳か、ってか、この人間ならざる者ってやつが今はモンスターって呼ばれてるやつで、別世界から呼ばれた人の魂ってやつは俺が元居た世界の人間の魂なのか?

いや、別の世界から呼ばれている可能性もあるか。まぁいいや、俺がこの世界で最強になれれば!

 早く16歳になりてー!!」


 俺こと、バン・アルフレッドは前世の記憶を持つ男だ。


 俺の前世は、地球と呼ばれる世界の日本と呼ばれる所に、2000年に生まれ、2022年に家に強盗にあって、その時たまたま家にいた俺がその強盗に刺されて死んだ。


  ほんと運が悪かった。会社に出勤するまでは良かったんだけど、その日に限って重要な書類を家に忘れるなんて。それで家に取りに戻ったら強盗にばったり遭遇し、その犯人に見つかり、ナイフを片手に腹を複数回刺されてENDって訳だ。


 ってか、死ぬときって、少しでも延命を図るために重要度の低いものからゆっくりと機能を停止していくように脳がプログラムされているって話ホントだったわ。まぁ、その話はおいておくが、もう死ぬことだけは絶対にごめんだな。


 ってことで、この世界での目標は、安全第一に死にかけることが無く、俺最強を実現することが夢だ!



 で、話は戻るが、この世界は俺たちが住んでいた地球とは違うことがたくさんある。


 まずはこの世界に存在する人種は人間と呼ばれる人間種だけじゃないんだ。いまから約1100年前にいろいろな別世界から神が魂を呼び寄せたらしいんだが、その時に人間と呼ばれる魂以外にも、エルフやドワーフなどの人間に似た魂とかも呼び寄せちまったから、この世界にはいろいろな種族が暮らしてる。


 でも、今は種族差別がひどく、ひどい所では、人間以外は劣っているから人間種以外は絶滅させるよう働きかけている国もあるらしい。


 まぁ、俺からしたら、そんなものクソくらえなんだが、この話はおいおいするとして、本題に入ろう。



 この世界は3種類の者がいるらしい。一つは権力者、この者たちは先祖代々から受け継ぐ者が多く、またの名を貴族と呼ばれている。続いては強者、ステータスが高かったり、特別なスキルを持つ者たちである。この権力者や強者たちは、ある国では絶大な権力を持っていたり、億万の富を築き上げている。そして、最後は持たざる者、権力も力もない者たちである。この者たちは一般的に市民が多く、中には奴隷も含まれる。


 そう、これがこの世界の共通認識らしいんだ。だから、この世界で俺最強を実現するには、権力者ってもんは俺の柄じゃねぇから、これは無し。と言うことで、強者になるのが俺のこの世界の目標だ。強者って言っても、どこまで行けば強者って呼べるかって問題があると思うんだが、ひとまずは、この世界でいうSランク冒険者ってもんになろうと思う。この世界じゃSランク冒険者は国をも変えるほどの力があるって言われているぐらいだから、最初の目標としてみればいいぐらいだろう。それじゃ、今日も頑張ってくるわ!



 この物語は、持たざるものであった、前世の記憶を持つある男が世界に名を轟かせるお話であり、その男の半生を語ったものである。



 





 みんな、久しぶりだ。あれから十数年がたって、俺はSランク冒険者になって…ない。


 そう! なれていないのだ! これには理由があってだな、この世界のモンスター強すぎ!


 なにこの世界! ハードモードすぎるでしょ! 俺がしたかったのはこんなんじゃないんよ、俺がやりたかったのは、一振りでモンスターを倒して、この国のかわいい子や美人な人たちとッキャッキャ、ウフフ、な展開を期待してたのにさ、これじゃ無理じゃん。一番弱いモンスターでも、人を簡単に殺すんだぜ? この世界の住民すごいなって思ったよ。一応冒険者になったけど、これじゃ、この先暗い未来しかないぜ……


 そんなこんなでもう朝か、よし! 今日を生きるためにも、モンスター狩りに行ってきます!




 「はぁ、今日もこれだけか…」

 俺こと、バン・アルフレッドはルーゼンの森と呼ばれる森から帰ってきて、冒険者ギルドと呼ばれる冒険者のクエストの発行や、モンスターの素材の買い取りなどを専門に行う場所に来ていた。


 なぜ、俺がここに来ていたかと言うと、ルーゼンの森で倒したモンスターの素材を売るためである。


 一人が一日を過ごすのに必要なお金は銀貨1枚程度であり、町や都市で働いている人はこのぐらい1日で簡単に稼げるのだが、俺がしている職業は冒険者であり、Dランク冒険者である俺はこの銀貨1枚を稼ぐのにも苦労していた。


 またルーゼンの森とは、ルーゼンという町の近くにある森であり、大人なら比較的安全に探検できる難易度の低い場所であった。


「あれ? バンさんじゃないですか」

 そういって、声のした方へ顔を向けると、茶髪のショートカットの可愛らしいい女性が立っており、食材が入っているだろうと思われる袋を肩から掛けていた。

 

「どうも、リリアさん、こんにちは」

 この女性は、リリアさんと呼ばれる女性で、私行きつけの居酒屋で働いていてるんだけどとってもかわいい。むしろ、この子の顔を見るためにこの子が働いている居酒屋に行っていると言ってもいいだろう。


「今日は早いお帰りなんですね、どうでした? 今日の狩りは」


「今日はダメでした、レッサーラビットがいつもより居なくて…、それに、薬草もあまり見つけられませんでしたし」 

 そう言って俺は、リリアさんに銀貨と銅貨の入っている袋を持ち上げて、少ない量のお金が入っている袋を振って音を鳴らす。自分でも驚きの少なさである。

 

 *銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚。この上にも金貨100枚で大金貨1枚。大金貨100枚で聖金貨1枚となるのだが、当分大金貨以上のお金は出てこないと思います。


「そうだったんですね。最近、モンスターの出現数が少ないとみなさんが口々に話しているので、何かルーゼンの森で起きているのでしょうか?」


「どうなんでしょう。何かあったとしてもこの町にはCランク冒険者のパーティがいるので大丈夫ですよ」

 そう、この町にはCランク冒険者のパーティがいるのである。ここで、冒険者のランクについて話しておこう。まず、冒険者のランクはFから始まり、E→D→C→B→A、そして冒険者のランクはSが最高である。伝説ではSSランクと呼ばれるランクもあったそうだが、真実かどうかは分かっていない。


 でまぁ、この町にはCランク冒険者パーティがいるのだが、この冒険者たちがどのくらいすごいのかと言うと、このパーティでCランクモンスターを討伐することが出来るぐらいには強い。モンスターの強さのランクも冒険者ランクと同じでE~Sまであるのだが、基本的に同じランクの人たちでパーティを組めば、同じランクのモンスターといい勝負ができると言われている。


 俺は昔から自分より格上と戦闘したことが無いから分からないが、自分のランクより上のランクのモンスターと戦闘した場合は、結構な確率で殺されるか、逃げるはめになるという。


 なので、冒険者ギルドでは、自分のランクと同程度のモンスターやそれ以上のモンスターを見つけた場合はすぐに逃げるように言われている。


「そうですよね、Cランク冒険者パーティがいますもんね。 バンさんも何かあったらすぐ逃げてくださいね! 命あっての冒険者ですからね…。では、また今度お店でお待ちしてますね」

 俺は、頭を下げてお礼を言うと、リリアさんは冒険者ギルドから出ていった。


「何かあったらか…、何もないように森の奥にはいかないようにしているし、でもこのままの状態が続くと、稼げないしな、明日はもうちょっと深く潜ってみるか…、よし、今日も訓練場へ行くか」

 訓練場とは、冒険者ギルドの中に併設されている、冒険者ギルドに加入している者のみが使える施設で、筋トレ器具を無料で使えたり、自分のスキルなどを使ったりすることが出来るスペースや、対人戦をする場所があったりといろいろなことが出来る場所である。そう! 何といっても無料で使えるのがほんと大きい。だから、ここで少しでも剣の使い方が上手くなるように日々頑張っている。


 また、最近は人が居らず、俺一人の貸し切り状態が多い。そこで、狩りを終えた後、俺は人の目を気にせず、宿での夜飯の時間が来るまで、永遠と剣を振り続けたり、筋トレをしていることがほとんどだ。

 

 いきなりなんだが、俺は今年で25である。16の時に親しかった同じ村の友人3人。合わせて4人でこの町に来て、4人でパーティを組んだのだが、私以外の友達はメキメキと実力を発揮していき、俺と、他の3人とで差が開いていき、18の時にパーティを解消、そこからは俺一人で狩りをしてきた。その3人は風のうわさでは、王都でAランクパーティになっていると聞いたのだが、俺にはもう関係のない話か…

 

 と、ここまで話をしてきたのだが、なぜ、俺がここまで成長できなかったのだろうとみなさんは疑問に思っただろう。その理由は強い相手と戦ってこなかっただとか、死ぬのが怖く戦闘をあまりしてこなかったということもあるが、一番の原因はスキルが全然取得できなかったのだ。そう、この世にはスキルが存在するのだ。異世界転生ものなんかではおなじみだよな。


 スキルの確認方法は、スキルを見たいと頭の中で念じればいいだけであり、ついでにステータスも見られる。私のステータスは以下の通りだ。



 名前:バン・アルフレッド

 

 レベル:8

 体力 :35/35

 魔力 :15/15

 物理攻撃力:17+5

 魔法攻撃力:10

 物理防御力:21+10

 魔法防御力:12

 速さ :25

 補正値:12

 幸運 :21


 スキル:強打、逃走

 EXスキル:挑戦者

 装備:鉄の剣、皮の胸当て、皮のズボン



 となっている。見たら分かる通り、俺はスキルを2つしか持ってない。俺みたく、10年ぐらい冒険者をやっていれば嫌でもスキルをもっと習得してるはずなんだが、なぜか習得が全然できなかったのだ。最初はスキルが存在することに興奮を覚えていたが、いまでは全然習得できないからその熱も冷めている。

 

 ここで、各項目の説明をする。

 レベルはその者の強さを表しており、強い相手との戦いの場合はたくさんの経験値をもらえ、弱い相手との戦いの場合は少ないながらも経験値をもらえる。また、レベルを上げることでレベル以下のステータスを上昇させることが出来る。しかし、補正値は上げることが出来ない。


 *体力と幸運はレベルアップ時でしか値を上げることが出来ないが、それ以外は訓練等で一定の値までは上げることが出来る。


 体力はその名の通り、その人の生命力を表しており、0になったら死んでしまう。


 魔力はスキルを発動すると消費されるもので、強力なスキルほど、魔力の消費量が増える。


 物理攻撃力は、剣や弓など、相手に直接あたる攻撃はすべて物理攻撃力に影響される。


 魔法攻撃力は、間接的に当たるもの攻撃はすべて魔法攻撃力に影響される。例としては、ファイヤと呼ばれる火の玉で攻撃した場合は、自分で直接攻撃したわけでは無いので、魔法攻撃力に影響されるなど。

 

 物理防御力は、物理攻撃力に影響される攻撃を受けたときにダメージが減少するようになっており、物理防御力が高ければ高いほどダメージ量が減る。


 魔法防御力は、魔法攻撃力に影響される攻撃を受けたときにダメージが減少するようになっており、魔法防御力が高ければ高いほどダメージ量が減る。


 速さは、その名の通り、走るスピードが速くなる。


 補正値は、疲れにくさや状態異常になりにくかったり、ストレスの耐性に影響が出たりと、この値を上げることによって様々な恩恵が得られるだろう。しかし、補正値はレベルアップでは上げることが出来ず、実践で経験を積まなければ得られないのが難点である。

 

 幸運とは、その名の通り、幸運なことが起こる可能性に影響を与える値であり、クリティカルヒットや宝物を得たり、相手の攻撃が急所を外れたりなど、様々なことが起こる可能性を秘めている。


 また、スキルの説明は省くが、スキルとEXスキルの違いを説明しておこう。まず、どちらも取ることは可能なのだが、EXスキルは獲得方法が非常に困難である。生まれ持って獲得している者もいるが、ごくわずかであり、EXスキル一つを持っているだけで強者になり得るほど強力であり、人々が欲しいと願ってやまないものである。


 と、話は長くなってしまったが、俺が言いたいことはただ一つ、そう! 俺はEXスキルを持っているのだ! 小さい頃はこのスキルを使って俺最強を夢見たこともありましたよ。しかし、俺には使用方法が全く分からず、一度も使えたことが無い。普通ならこのEXスキルを使って無双したりするもんだとばっか思ってたんだが、どうも使えないんだ。


 無論、使おうとしたさ、ここらへんじゃ一番弱いレッサーラビット相手に挑戦者を発動しようとしたけど発動しなかった。その後にも何度か挑戦しかけど結果はすべて失敗。EXスキルがあった時は俺は強くなれるんだと思ってたけど、こんなんじゃこの先が思いやられるよ…


 EXスキルを持っていればAランク冒険者は確実だと言われているのに、俺はAランク冒険者どころか駆け出しのDランク冒険者である。はぁ、どうにかならないものか…、でも諦めないからな! 目指せ、Sランク冒険者!

 

 そうこう話しているうちに、宿での夕食の時間になったので、宿に帰ろうと思う。


 明日こそは稼ぐぞ! そう心の中で決心したのだった。

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