私たちの丸い星

おみゅりこ。

フシギなボウシの彼女

 「…ねえねえ!こないださ、スッゴイモノ見つけたんだけど!」


—いつもの様に下校をする。隣に居るのは1番よく遊ぶ友達“ルノ”。近所の悪ガキとしても有名だ。


 「でさ!今から行ってみない?ホントにスゴイから!」


—どうせまた危ない遊びでもするんだろう。まあ、用事もないし行ってあげよう。



 私の名前はベル。小学校に通うフツウの小学生。今年で11才になった。彼女も同じクラスだ。


 彼女はどんどん進んでいく。普段通らない道を行き、工場がたくさんある所に出た。


      「よい…しょっと!」

彼女が柵を乗り越える。私はだんだんと怖くなってきた。


「やめよ!勝手に入っちゃダメだよこういう所!」


    「大丈夫大丈夫!誰も居ないし!」


イヤだった。でも私は彼女が心配だからついて行った。


 その工場の周りには、たくさんの部品が捨てられていた。私には、どんな事に使うのか想像もできない。

ある地点まで行くと、彼女が指差した。


   「ジャーン!アタシの秘密の入り口!」


 そこに在った石とトタンをどかすと、私たちが何とか入れそうな穴が空いていた。私は服が汚れるのを気にしながら入った。


 中はただただ暗かった。天井付近の半透明な板から光が差し込んでいる。


    「足もとっ!気をつけてねっ!」


 彼女は器用に進んで行く。私もなんとかついて行く。



    「はい到着!…いかにもでしょ?」


    【関係者以外絶対立ち入り禁止!】


  「アタシ関係者だもんねー。何回も来たし!」


 意味不明な理屈を展開する。…これはエレベーターか何かだろうか…?

彼女がポータブル発電機と称したモノを棚から取り出した。なにやら線を繋ぎはじめる。

    …私は既に帰りたくなっていた。


 しばらくすると、エレベーターの上のランプが光った。


     「さあどう…かなっ!?」


 下降ボタンらしきモノを押した。軋んだ音を出しながら、ソレはどんどん、どんどんと降りてゆく。


    「…やった!アタシ天才っ!」


「……乗らないよね?」 「乗るでしょフツー。」


 …しばらくすると、エレベーターは動きを止めた。彼女は上昇ボタンを押し、到着を待った。


    「もうヤダっ!!私帰るっ!!」


私は本当に帰った。怖いし、お父さんとお母さんに怒られる。



————————————————————————



 「まったく。いくじなしだねぇベルっちは。」

 

アタシはこのドキドキを1人で体験する事にした。どうせお母さんは今日も遅いし。お、来た来た。


 ボタンを押すと、降り始めた。格子の奥の壁が次々過ぎ去っていく。


どこまでも暗い空間に落ちていく。アタシもちょっとづつ怖くなってきた。



 1番下まで到着した。壁に囲まれた空間が広がっていた。暗く、ここにも人の気配はない。


エレベーターの正面に頑丈そうな扉がある。どこに繋がってるのかな?重たかったが、ソレはフツウに開いた。一歩外に出て…


      アタシは空を見上げた。



————————————————————————



  「おかえり。ちょっと遅かったじゃない。」 

    「べつに!こんな時もあるよ!」


 部屋に戻ると、少しづつ怒りが収まってきた。そしてだんだん、彼女の事が心配になってきた。

…宿題をなんとか終える頃、お母さんが掛かってきた電話に出た。ふたこと目には声をひそめた。


「ねぇベル…ルノちゃんが帰ってないみたいなんだけど。」


心臓が跳ね上がる。


「あなた達仲いいでしょ?あっちのお母さんが知らないかって…。」


    私は…私は…どうすれば…いい?


 「知らない。今日は1人で帰ったし。ちょっと寄り道はしたけど…。」


嘘をついた。お父さんも帰ってきて、ルノの事を話してるのが部屋まで聞こえた。


 

 …朝になっても戻らなかったらしい。私はランドセルを背負い、支度をした。


「気をつけていくのよ。知らない人にはついて行かないのよ。」


私はわかった、と言い玄関を出た。…足取りが重い…呼吸が難しい…。


 とにかく私は走った。必死に、昨日の道を辿った。


あの穴はそのままになっていた。…つまりルノは、戻って来ていないかもしれない…。



————————————————————————



     【少女失踪事件捜査対策部】


 あの事件が起きてから、今日で3日。何も進展が得られず、俺はいきどおりを感じていた。

ここ数年、この地区では物騒な事件は無かった。とはいえ人間だ。もちろん、些末な事はある。


 今日も俺たちは捜索を続行する。森や川、人が立ち入らない所まで隈なく探す。

監視カメラのチェックも並行して行われるが、未だ何の報告も無い。


 彼女らの両親に話を聞き、生活圏内を重点的に探す。誘拐も視野に入れ、聞き込みも欠かさない。


 本当に些細な違和感だった。とある工場の鉄格子の一部のホコリが、少し薄まっていた。

成果を出さないといけない。仕事だからな。俺たちはいつだって藁にもすがる思いだ。


 勝手ながらに捜索をする。すると小さな穴を見つけた。

建物はしっかり施錠されており、入り口は他に無い。


       「…まさかな。」


 …調べた結果、ここは既に誰の所有物でもなかった。工場の業務は部品製造とあった。


翌日、扉をこじ開け内部を調査する。見慣れない金属のような部品があちらこちらに落ちている。及びそれらを加工する機械も。


 一見すると普通の廃工場だが、奥の階段を降りるとソレはあった。電源部に、何か機械が繋げてある。コレだけ妙に新しい。俺は予感をする。


 午後には電気技師が到着した。あまりに古い代物だと溜め息を漏らしていた。


慣れた手つきで作業をする。15分程で作業が完了し、ソレは動き出した。


…それにしても誰がこんな物を…。地下を工事するには、相当に大変な行政の許可が必要だ。それにタダじゃない。莫大とも言えるお金も。


 技師は引き上げた。ここからは俺たちの仕事だ。数回動作確認をし、とりあえず安全だとした。


俺が行く事になる。イチバンの経験者だからな。しかし、少々足が震えてきた。例の機械は回収された。


 俺は子供の頃行ったおばけ屋敷を思い出していた。そして自身の無事を祈る。


        (…神様…!)


…無事に着いた。しかし!突然ワイヤーが火花を飛ばしながら落下して来た!


       「う、嘘だろっ!?」


 顔が青ざめる。危険は回避したが、これでは…。

振り向くと半開きの扉があった。これは…


        これは…一体……。



————————————————————————



 オレはオーク族のギガス!!…さァあて!今日も町を元気に闊歩するとするか!!

モチロンッ!父から継承したこの“巨大戦斧”も一緒になァ!


 ぬ?俺のお気に入りの工場ダンチに警察共が居る。しめしめ…後をつけてやる!!


 キープアウトか…まァオレ様には関与しない事柄だ!!



     「な、なんだいきなり!?」


フン…警察共が驚いている。オレは質問した。


 「楽しそうじゃねぇか!オレも仲間に入れろ!」

         


「せ、先輩っ!コイツ巨大戦斧を持っています!…銃刀法違反です!」先輩が手で制す。


「彼の武器は現在、“神具”として携行が認められているの。もちろん、自由に生活するのもね。」


「そォいう事だ新人。グフフ…気が狂うホド願書を書き綴りまくった甲斐があったなァ…!」


       「ぬぅうん!!」


 オレはヤツらが見ていたワイヤーを断ち切ってやった!オレ様に意見したバツだ!!

——突如!オレはヤツらに蹴り飛ばされた!


       「ぬぉぉお!?」


 穴の中に落としやがった!?オレは落下死を防ぐ為、両手両足をツっ張る!!覚えてろよ…!


ぐっ…!手足が焼ける!…だがナントカ下に着いた。我が巨大戦斧もブジなようだ。…ホッ。


 何やら扉があるな…オレ様には狭そうだ。


      「ぬぅぅぅうン!!!」

 一撃を持ってして破壊してヤった!行くぞ!!


———————— 、 ↓ ・ − ——————————


      「楽しそうなトコロだ!」


 しかしながら、何も無いな…!空も赤い!

オレは走り回った!どこまでも続くガレキ!変なイキモノ!我が体力を増強するにはモッテコイだ!!


      ガハハハハハハハッ!!


————————————————————————



      「なんなの…ココ…?」

 体が…体が震える…。台風のような赤い雲が空を囲む…。イヤに生ぬるい風が吹いている…。


どこまでもガレキの光景が続く。どうして、アタシの住んでいる所の下にこんな…。


 もう…戻ろう…。来ちゃダメだったんだ…やっぱり…。


 !!ナニカ居る!?……何なの…アレ…!?


 黒い…見たこともない生き物。白い斑点がある。ゆっくりと呼吸をしながら、ソレらは動き回っていた。


      (…目が合った…!?)


…ゼッタイ…ゼッタイこっちに来る…!…逃げなきゃ…逃げなきゃ…!


…!!


  (お、落とし穴!?…血が……痛い…!)


 アノ生き物は穴を覗くと、すぐに去った。…でもこの穴の深さは…。

ヤダ…死にたくない…こんな所で死にたくない…。


     …お母さん…ベルっち…。



————————————————————————



 俺は想像していた。ここは、かつて俺たちの先祖が住んでいたのではないだろうか。

粉々にはなっているが、確かに文明の痕跡が見られる。だが、決定的な物は見つからない。


……無線は…やはり駄目か。


    俺は一旦来た所を振り向く。…!?

    どういう…コトだこれは…!?


 俺は確かに、あのエレベーターに乗って来た。

          だが…。

そこにはどこにも繋がってない黒く、四角い建物があるだけだった。死の予感がよぎる。


 あの建物には結局何も無かった。…救援を待つか…それとも…。俺は周辺を歩きまわる。

すると建物の扉がいきなり破壊された。


あれは一体!?…推定2.5mはあるだろうか。ソイツは大声を発しながら走り回っていた。



…オーク族だった。彼もこちらに気づくと、走り寄って来た。


 「どうしたニンゲン!?お前も落ちて来たのか!?」

「まあな…。しかもエレベーターが壊れて帰れないときた。」


 「オレ様がワイヤーをブチ切ってやったのだ!生意気な警察共の鼻をアカス為になァ!!」


…どうやらこのアホがとんでもない事をしでかしてくれたらしい。ふざけんな。


「…とにかく、ここに居てもラチが明かない。調査を手伝ってくれないか?」


 「いいだろう!タイクツそうな場所だからな!」


 

 彼によると、あの不思議な生き物は危害を加えてこないらしい。半信半疑だが、今は信じるコトにした。

そして…俺たちの事情を説明した。


 「子供が迷子だと!?それはイカン!オレがゼッタイに助け出してやる!」


妙に協力的だった。オーク族とはこうなのか?


 手分けして探していると、か細い声が聞こえてきた。…目標を発見。オークのギガスがワイヤーを持って来て、彼女を手繰り寄せた。



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 「…ルノ!?居るんでしょ!?居たら返事して!」


 怖い…。私は今まで見たことないような場所に居た。建物を振り返ると、上に向かって伸びている。それに…ぼんやりと…何かが見える。


 

 恐らく2日は経った…。私は謎の生き物から逃げまどい、ルノも見つけられずにいた。もう元の場所もわからない。確かにアッチにあったハズなのに…。


      「お腹…すいたな…。」


きっと私は…ここで死ぬんだ。お母さん、お父さん…いつもゴメンね…。


 …それでも私は歩いた。あの子を見つけるまで、せめて歩こう…。


ガレキに混じって、建物のようなモノがあるのが見えた。私は期待した。


      ルノ…そこにいるの…?



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   「あり…がとう。オークのおじちゃん…。」


 アタシは大人2人に発見され、あの穴から助け出された。生きてて…生きててよかった…。


 「いいってことよ!務めを果たしたぞ!」

彼がビスケットのようなモノをくれた。



「…君は、行方不明になっていた相田ルノちゃんで間違いないね?」


   「はい…迷惑…かけちゃいました。」


 警察の人は色々と質問し、状況を教えてくれた。あの日の行動や発電機のコト。アタシは全て素直に答えた。

   …そしてベルっちが居なくなったコト…。


 「学校に行く、と家を出たきり、そこで行方が途絶えた。何か知っていたら教えて欲しい。」


「わかんない…です。あの子は、アレに乗るのコワがってたから…。」


…更に、あのエレベーターが壊れたコト、今の所帰る手段が無いコトも教えてくれた。


 勝手に走り回っていたオークのおじちゃんが戻って来た。なぜか興奮していた。


 「アッチに何かあったゾ!!行くぞお前ら!」



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    …なんて表現すればいいだろう…。

あの建物の中には、ヒトの様な…なんとかヒトと判別できるような人物…が居た。


 私は最初、ルノが死んでしまったと勘違いしたが、どうやら違った。でも…このヒトは…?


 「ね…ねえ…アナタはここで…何をしてるの?」


        …返事はない。


 何度も話しかけたが、何も言わなかった。でも確かに…生きている…。


  気のせいか…遠くから声がする…人の声…?



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「ココだァ!!いかにも居そうだろう!?もう1人の迷子がなァ!!」


 オレ達は3人で、件の建物に向かった!!チンタラ歩いていたら随分時間がかかってしまったわ!!


 オレ様は扉を破壊しようとしたが、男に止められた。フン…目立ちたかったのに。

 

普通に入った。そしてヤツの真似をして、目標を発見!!と叫んでやった。



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    「ベルっち!!」 「…ルノ!!」


 アタシたちは抱き合って、静かに泣いた。そしてソノヒトの事を話してくれた。


 「彼女は…一体…。」警察の人も驚いている。オークのおじちゃんはジッと見ていた。


…部屋の奥に…何かがある…。ホコリだらけでよく分からないけど…帽子のような…。


 ソレに手を伸ばそうとしたら…ソノヒトが動いたような気がした。



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 私が産まれた時、誰もが祝福してくれた。そして何不自由なく、1人の女の子として育った。

——すると突然!!お花摘みをしていた私の元に何かが降ってきた!!


    「どわぁぁぁぁぁあ!?!?」


 あっ…危ねぇ!?もし当たっていたら…!!

私はお花摘み中にお花摘みをするトコロだった(?)


    「ひょえ〜、でっかい穴ぁ…。」

 

 モチロン!何かをチェックしなければ!きっと、とんでもないお宝に違いない!!

躊躇なく穴を降り下る!私は胸が張り裂け散らかしそうなホド興奮を覚えていた!


「何だコリャ?…帽子?…中々モダンじゃんか!」


 ちょうど日差しが強かったから良かった!フダンの行いを見た神様からの贈り物だろう!


 フンフ〜ン♪それを被りお花摘みを続行した。これで冠を作り、寝ているじじぃの股間にくくりつけてやるのだ!


     (お腹すいてきたなぁ…。) 


そう思ったら急にマンプクになった。…??


   …?私さっき…お腹すいてた…よね?


まあいい!今日はお終いだ!さっさとウチに戻るとするか!



 「おいじじぃ!見ろよこの帽子!中々シャレオッツじゃないか!?」


「よかったのう。で、頼んでた庭の掃除はしてくれたのかな?我が孫よ。」


しまった!頭の片隅にすらなかった!私は庭へダッシュした。


(メンドクセー。さっさと終わんないかなコレ。)


すると庭の草が消えた。もしかしてコレ…。


 「クソじじぃ!コレ何かアレなの!私の思った事が…何か叶う!!」


「よかったのう。頑張ればすぐ終わるのに、お前ってヤツは…」


 「そうじゃなくて!私ホトンドやってないの!でも終わったの草むしり!」


 私はじじぃにもかぶせてやった。そして何でも願うように言ってやった。


「何も起きぬが…?まあお前に返すよ。」


     「どんなお願いしたの?」


「言うまでもなく!ワシが全盛期の肉体を取り戻し!その肉体を持ってして若いオナゴを枚挙にいとまが無いホドにハベラせるのじゃ!!」


 「気持ち悪い願いゴトすんなよ!まぁコレ私のって感じで!」



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     「…ダメ……駄目……!!」


 そのヒトが初めて言葉を発した。それはかろうじて聞き取れる程…か細い声だった。


    「…ヤハリ…そうだったか…。」


 オークの人が口を開いた。何が…やはりなのだろうか。


  「あまりに遠い…昔の話ナノだが……。」



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 「よぉデイダ!今日も輝いてるな!貴様のソノ巨大戦斧がなァ!」


 オレは村1番の力持ち!且つ!村の長でもある!しかしオレたち部族には深刻な悩みがあった。


  「えーん。今日もヒトにいじめられた…。」


 我が息子が泣きながら帰ってきた。ただ、ちょっとしたオツカイを頼んだだけなのにも関わらず…。


 ヤツらの差別の感情は、長い歴史の垣根を乗り越えても消え去らなかった。ヤツらは石を投げ、住処に火を放った。


      「ぬぅぅぅぅうン!!」


 オレはヤツらに報復をする。しかしこの行動の結果を、ワザワザ語る必要もあるまい。それでも…。


     あくる日、村に変なヤツが来た。


 「フッフーン!!私は旅の魔女!お困りゴトを不思議な力で解決します!…え?差別なくす?いいよ。」


 フシギなボウシの彼女はあっさりと言いのけた。


…信じられないが、この日を境に我々はフツウにヒトと接する事が出来た。彼女は既に去っていた。


 「まったく…わかんないねぇ…!何だか苦しくてねぇ!…おいアンタ…村を頼む…よ…」


 我が妻が急死した。…昨日まで丸太投げ大会で優勝する程に元気があったのダガ…。


 きっと、妻の犠牲が我らの問題を解決したのだ。…オレはそう思うコトにした…。



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 「お前の先祖が、そこに住んでいたんだな。」


 ギガスは、気の遠くなる程の昔だと言った。この子は…その時の旅の魔女と関係しているのか…?


「この逸話は、我がオーク族に脈々と継がれてキタ。この巨大戦斧も、彼女の偉業をタタエル為、同様にな。」


 「そんな大事なモン振り回すなよ…。」


「力こそ象徴。武器トハ、使ってこそだ!」


…これ以上は、彼女から事情を聞かないと分からない。しかし…この状況では…。



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 アタシはその汚い帽子をかぶった!…だって、さっきの話が本当なら…!


     「…おい!!よしなさい!!」


      そしてアタシは、願った。


    「ダメだよルノ!!取ってっ!!」


…アタシの願いは叶ったのだろうか…どうやったら…確かめられる…?


 …ソノヒトがわずかに腕をあげる。…多分返して欲しそうに。アタシはそっと、かぶせてあげた。



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 私たちは一瞬で、あの工場に移っていた。…あのヒトを除けば…。


     「帰って…来れたのか…?」


警察のお兄さんも困惑していた。そして全員が無事を実感し始めた。

—瞬間!オークの人が再びエレベーターに飛び込む!


 しばらくするとヨジヨジ戻って来た。


「オレ様が見てやったが、何処にも繋がっていなかったゾ。」


 「…俺も不審に思っていた。物理的にアソコに降りたのに、来た所を見ても、ただの四角い建物があっただけだった。」


 あの…と、私は挙手した。

 

「私が見た時、エレベーターはちゃんと上まで伸びていました。」

 「アタシも…見た。」ルノも同調する。



 「やっぱり、お前がワイヤーを切ったせいじゃないのか…?」


「まァ、済んだ事はいいだろウ?(よくないけど)…そもそも、コレは誰が作った?」



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   全員が帰宅する。既に夜の11時だった。

明日、本格的な調査をしなければ。誰がいつ、コレを作ったか。俺たちの科学力をゆうに超えたコレを…。


 翌日、人を集め、あの工場の過去を徹底的に探った。その最中、あそこで働いていた従業員の存在を知った。県外の彼の自宅を目指す。



  「先輩が無事で…ホントによかったです。」

助手席の彼女が呟く。名前はケイ。俺の部下だ。


「ハハッ、何回言うんだよ。まあ実際焦ったけどな。あの子たちも無事に帰れた。取り敢えずは安心だ。」


 「今日行く人は、アポは取れたんですよね?」


「ああ、普通に了承してくれたよ。あの場所について、何か聞ければいいんだが。」



 県道から外れ、郊外の一軒家を見つける。ここが彼の家だ。

今の所普通の民家だ。怪しい物は無い。今は一人暮らしらしい。座敷にお茶を用意してくれていた。


  俺たちは自分の立場と名を告げ、話に移る。


 「斡旋屋ってのが居てね。その人の紹介で行ったんだよ。」

 

 「どんな仕事をしていたんですか?」


「仕事内容に怪しい所はないねぇ。普通の工事用車の部品を作ってたんだ。」


 「社長や他の従業員に怪しい所は?」


「特に何も…。まあ社長は時々、誰かと楽しそうに電話をしていたね。」


 「電話の内容は分かりますか?」


「さぁ…多分金の話でもしてたんじゃないかね。」


 「あの階段の奥の部屋に入った事は?」


「いつも鍵が掛かってたね。まあ大事な書類でもあるのかなと思って気にせず仕事してたよ。」



 …結局大した情報は無かった。俺たちは礼を言い、署に戻る事にした。


 「あの電話の相手…なんとか突き止められないですかね。」


「今の所情報がなさすぎる。地道に当たっていこう。」



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 ……ワタシは狂った科学者!!40年前、ワタシの特製レーダーがある観測をした!

それによると我々の住む所はいかにも限定的らしい。説明するまでもなく、この目で外を見たくなった!


 オンボロ零細企業の社長に金をたんまり渡し、秘密裏に研究及び工事に着手した!


 取り敢えず物理的に地下に掘り進めたが、圧倒的な質量のプレートが在り、そこは断念した。

そこでワタシは考えた!エレベーターに擬装したワープゲートを作ろうと!


 社長にメンドクセー手続きをして貰い、1年後に許可が下りた。と、言っても、既に掘ってあるのだがな!ワハハ!


 結果を言おう。ワタシは10年の歳月をかけ、ソレを完成させた!チビリそうなホド興奮したよ!すぐに乗った!


 設計通り、安全にソコに到着した。どこまでも続く荒廃した景色!赤い空!モチロン、ワタシは勝利の立ち小便をブチかました!


 嬉しさの余り駆け回る!ホドなくしてワタシは落とし穴にハマってしまう!


  結果を言おう。そこでワタシは息絶えた!!



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 お母さんが私の背中にまわした手をホドくと、口を開いた。


 「今日はもう寝なさい。明日は学校休んでいいからね。」



…警察のお兄さんたちと口裏を合わせた。

ルノが山で迷い、探しに行った私も迷う。2人は合流するが、帰り道がわからず途方に暮れ、そこにお兄さんが来た…そんなストーリー。



 2日が経ち、学校に行く事にした。庭を一歩でるとルノが立っていた。


  「お…おはよ。」 「ヤッホーベルっち!」


 何だか元気だ。私はずっと考えていた質問をした。


 「ねえ…あの帽子がもし…願いを叶えるモノだったとするよね?ルノは…」


  「お父さんが帰って来ますようにって。」


    「…………帰って来るって…。」


 「変じゃないよね?何でも叶うんだし。」


   「でもだって……ルノのお父さんは…」


 「そのウチ家に帰ってくるよね!?ちゃんとお願いしたもん!!」



 …ルノのお父さんは…彼女が小さい時に…亡くなっている…。いくらなんでも…。



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 オレ様は夜中にコッソリ!例の場所に行った。昼間は警察共がナニカしてるからな!


 穴に巨大戦斧を放り投げ、オレも下った!


       「ぬぅぅうン!!」


 次々と破壊を繰り返す!グハハ!気分ソウカイだ!


        「ぬおッ!?」


 突然オレは落下した…!と思ったら例の部屋に着いていた。フシギなモンだ。


 さて、例の彼女にマタ会いに行こう。我々部族に必ずユカリがあるハズだ。オレの巨大戦斧にもソウ書いてある!



 「来てやったゾ!お土産もあるゾしかし!!」


…マッタク相変わらず元気がなさそうダ!さて、オーク特製スタミナ料理とスタミナジュースを配膳しまくってやるか!


 「…食べナイのか?必ずや元気になるコトが確約された料理なのダガ…。」


      「……フ……ロ……」


   「お風呂ダナ!ちょっと待ってろ!!」


オレはその辺の地面を砕きまくった!説明不用ダガ、努力の末に温泉を掘り当てた!…すかさず彼女を連れて来て放り投げてやった!


      少しすると浮かんできた。



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私たちの丸い星 おみゅりこ。 @yasushi843

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