Chapter2 第8話 時計塔

あれから数ヶ月。優愛は晴瑠人の下で、私と琴音はこころの下で研鑽を積んだ。例のダンジョンも、もう18層まで攻略できる。こころは私達の成長を早すぎと言っていたけれど…いまいち実感がわかないや。対人を身内でしかやってないから。


今日も鍛練をしようとおもったんだけど、晴瑠人と優愛が慌てたようすで入ってきて、できなくなった。


こころ「話って?」


晴瑠人「これのことだ。」


と、晴瑠人は机にある紙を広げる。それは、ある巨大な時計塔の写真。


こころ「これがどうかしたの?」


晴瑠人「偶然この近くを通りかかった時にだな、この時計塔の心臓部とも言える《蓄積の核》に爆破術式がかかっているのがわかった。《蓄積の核》の直径は約2m、周辺の街はまず間違いなく消し飛ぶし、最悪3kmある俺らの家にまで被害が及ぶ。」


こころ「…いつ爆発するかは特定できた?」


晴瑠人「できてないが、術式は9割方完成していたとだけは。」


こころ「じゃあ、近くてあと三日後だね。」


心愛「ちょっとまって、私達だけ話についていけない。」


こころ「…《蓄積の核》が何か、だよね。」


…そう、当然のように出てきた《蓄積の核》。それがなんなのか、私にはわからない。名前からして何かを溜めることができるんだろうけど…それがなんで爆発するとそんな威力になるんだろう。


こころ「じゃあ、説明するよ。《蓄積の核》とは、全ての術式に組み込まれている、弾幕を溜めるための場所。たとえ術式を組んだとしても、弾幕を込めなければ発動できないでしょ?その弾幕を溜めて、発動する!ってなったときに一気に放てるように、そこに一時的に溜める。そんな性質を持った術式の一部を特殊な技術で取り出し、固めて巨大化したもの。この《蓄積の核》は大量の弾幕を溜めることができて、溜められる量は大きさに比例する。溜めるだけだと何にも使えないから、核に術式を打ち込むと、中にある弾幕を使うことができる。たとえば、大量に弾幕を溜めた核にバレッドスラッシュの術式をかけたら、核にある弾幕が尽きるまでバレッドスラッシュを撃ち続ける。同じような要領で、核に爆破術式をかけて、弾幕が許容量を超えたら…一気に爆発する。」


心愛「…そんな恐ろしいのが…!」


琴音「私達で止められるのか?」


こころ「核に爆破術式がかかっているのなら、まず中にある弾幕をゆっくり外に放出して、術式を解除すればいい。術式の解除は私がやるから、みんなには弾幕の放出をお願いできるかな?」


優愛「でも…どうやれば…」


こころ「光術式、回復術式、音術式、経験値術式とか、無害なやつを大量にかけて。」


優愛「わかった。」


こころ「向かおう。そんな術式があるなら、解除しなきゃね。事情があるなら、当事者に聞けばいいし。行って損はないよ。」


琴音「よっし…準備して向かうぞ!私達の始めての冒険だ!」


と、いうことで、晴瑠人と優愛も連れて、件の時計塔にやってきた。見たところ、本当にかかってるみたいだな…術式はこころが解除してくれるらしいから、私達は弾幕の放出が任務。


琴音「入ろう。」


全員、無言で頷き時計塔へと近づく。誰もいなかったので、一応警戒しつつ進む。すると、


こころ「止まって。」


そう、私達に指示をした。すぐさまこころはブラスターを取り出し、辺りを見回す。


こころ「誰か、私達を監視しているね。それも、高度な隠密術。能動型探知をしていなかったら気づけなかった。」


こころは探知の精度を極限まで上げる。こころが放つ波状型の弾幕を肌で感じることができる。少しくすぐったい…


こころ「そこか!!!」


何もないところに、全力のブラスターを放つ。すると、そこから…ケモミミの女の子が現れた。


「っとぉ…知ってたから避けられたものの…やっぱ隠密は苦手です…」


全員、無言で武器を構える。こころだけは、武器を構えずに相手の方を見つめ、少しして後ろへと下がった。


「…私達を邪魔しようとするなら、全力で追い返させていただきますね?」


そういうと彼女は格闘技の構えをした。踏み込みで、地面が割れる。


待て待て待て待てどういうことだ地面が割れるって。普通こういうのは全力の叩きつけで割れるものだろ!?ただの踏み込みで割れるってどうなってやがるんだこいつ!!!


「…隙だらけですねみなさん。研鑽を積んだのはわかりますが、ちょっと粗いですね。」


次の瞬間には、こころ以外、誰一人として彼女の攻撃を防ぎ、ましてや立っていられた者すらいなかった。

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