Chapter 2 第1話 出会い

人間は…なぜそこまでして我々の土地を奪う…?


戦いに何を見出だすのだ?


支配…序列…法。そんなものに何の意味がある?


真心「こころ!」


こころ「わあ!」


真心「ったく…ボーッとしやがって…《記憶》か?」


こころ「うん…《記憶》だね…あれは…」


狼子「内容は問いませんが…私たちは見られずにこころさんだけ《記憶》が見られるというのが不思議ですね。」


真心「ここ数日でこころの気質が大きく変わっているのも《記憶》の影響だろうか。」


私の中に眠る《記憶》…前世…?それとも別の人から問いかけられている…?


真心「…まぁ、お前は《記憶》の内容を整理していてくれ。世界移動の調整は俺らでやる。」


その言葉に私は黙ってうなずいて、私は静かに目を閉じる。


あの時、あの女性が言っていた言葉。最初に見た《記憶》。これらは関係したものだろうか。それとも、また別の《記憶》なのだろうか。


最初に見た《記憶》で女性が言っていたのは、「貴様」。これは一個人を表すもの。同時に、怒りに燃えているようにも聞こえる。何故か負の感情を感じることができない私には、怒りは無関係なはずだが、なぜ、私と思われる女性はあれほどに怒りに燃えていたのだろうか?


守るべき物…?だとしたら、さっき見た《記憶》と合致する点が出てくる。我々の土地…もしそれが本当にあの人が守りたいものならば…


…だめだ。これ以上はわからない。これ以上は私がどれだけ考えようとも、何も思い出すことはできない。


真心「…着くぞ。さっきの話の通り、俺と狼子、そしてこころの二手に分かれよう。俺らは南を見る。お前は北を頼むぞ。」


こころ「了解。」


そうして、半人が住まう世界、半界に到着した。


真心「それでは、また。健闘を祈る。」


狼子「またどこかでー!」


そうして私はゲートを出た後、二人と別れ、約束通り北へ向かう。北は森だった。探知しながら、森を探索する。遺跡やダンジョン…街みたいな反応はなしか…


…この反応…人!でも、弱い…弱っているのだろうか?とりあえず、そこに向かってみよう。反応の弱さからして、絶対まともな状態じゃない。


急いで草をかき分け進んでみると、そこには私と同じくらい…人間でいう…10~12歳くらいの金髪の少女が倒れている。よく見ると、息が荒い…間違いなく苦しんでいる。


こころ「大丈夫?話せる?」


少女「う…」


だめそうだ。とりあえず、空間術にしまっていた食料を少し分け、回復術式を打ち込む。


こころ「…これで大丈夫かな。水あるけど、いる?」


少女「うん…」


さっきと同じように空間術から水を取り出し、少女に飲ませる。…出会った時よりかは動けるようになっているから、命は助けられたかな。話せる状態になったら、話を聞こう。


それから、数分が経った後。


こころ「そろそろ、大丈夫かな?立てそう?」


少女「うん…ありがとう…助かったよ…」


こころ「一人だけで森に来るなんて、危険じゃない?」


まって、なんで私はこんなご時世と言ったの?まさか…無意識に《記憶》の中の私が出ている…?


少女「でも…私がやらなきゃみんな飢えて死んじゃうから…」


私がやらなきゃ…?この子、見た目そんな歳をとっていないように見えるけど…親はいないのかな。


こころ「みんなってことは他にも誰かいるの?」


少女「二人娘が…あ、忘れてた!また食べ物を集めなきゃ…」


こころ「色々と訳ありみたいだね…手伝うから、同時に事情を聞かせてくれる?」


少女「うん。」


ということで、森で食べ物を集めながら少女とお話。


こころ「ところで、あなた名前は?」


少女「音川琴音おとかわことね。よろしくな。」


こころ「琴音ちゃんね。で、なんであんなことになってたの?」


琴音「いつも通り、食べ物を集めてたんだ。集めきって、帰ろうとした瞬間、いきなりでっかい男の人が何人か出てきて、食料を寄越しなって言って、抵抗したんだけどすぐにやられて全部奪われたんだ…」


こころ「盗賊ってやつかな?人間の世界には山ほどいたんだけど、こっちの世界にいるって珍しいね…」


琴音「それより…まだあの子達が家でお腹をすかせて待ってる…」


こころ「お父さんはいないの?あなただけ?」


琴音「父親はいない…妊娠してすぐ私は捨てられたから…」


ひどい…人間はそんなこと…なんで平気にできてしまうの…


こころ「どれくらい集めようか?私食べ物持ってるから、今すぐ帰ることもできるよ?」


琴音「そうなの?ならすぐに帰りたい。家のこともまだ全然できてなくて…」


こころ「何かの縁。私もついていくよ。」


琴音「ありがとう!家は割とすぐだ。案内するよ。」


─この出会いが、私にとって…いや、私たちにとってとても大きな物語の幕を開けることとなった。

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