昔のトゲ

第1話

心のトゲが突き抜けた。

にぎりつぶした手の中は、

真っ赤なモモみたいだった。

ひきとめて、ひっぱった背中を

両手で思いっきり押してやった。

憎しみに満ちた瞳で、唇をかみしめた。

訳もわからず、かまわず出てくる

涙はちょっと、しょっぱかった。

ホロホロこぼれる甘い言葉は

もう、すっかり聞き慣れて

馴らされ続け、だまされ続けた

解（し）らないふりの毎日に

最近疲れが見えはじめていた。

冷たく笑う心の陰に

すっぽりはまってしまったみたいだ。

昨日夢見た昔の誰かと、

今日久しぶりのkissをした。

あの日のまま時間が止まれば、

今の憎しみなんてなかった。

全てを小さな箱に分けた。

時々別のひきだしを開けた。

箱の中身を忘れた頃に、

そっと、またのぞいてみよう。