俺はイケメン最強ハーレムチート主人公
甘糖牛
第1話 転生したらそこは異世界でした
言葉には言霊が宿るという。言えば叶うというアレだ。
謎の精神論者や怪しい宗教関係者なんかは、言葉は波動とか幸福引き寄せ術とかそんな風に言うらしい。引き寄せの法則なんて言い方もする。
まあとにかく、実際に言葉に出すのと出さないのでは、求める結果は違ってくるかもしれないというやつである。
だから俺はこう言うのだ。俺はイケメンハーレム最強チート主人公である、と。
そんなこんなで異世界に転生した、俺ことライルである。
そう、なんと俺は異世界転生なるものを果たしたのだ。ちなみにこのライルという名前は今世での名前である。前世での名前? そんなものは忘れた。なんと異世界転生を果たした俺であるが、なぜか前世での自分をほとんど全く覚えていなかった。理由は不明である。ただ物心というか自意識というか、そういう個人としての自我を得た際に、自然と異世界転生したという意識が記憶の底から浮上したのである。
それは転生と言えるのか、子供特有のおかしな自己妄想ではないか。
そういう疑問は当然持った。だがやはりと言うべきか。何度自問しようと、同じ自答が帰ってくるだけである。だから俺は異世界転生をしたのだ。誰がなんと言おうと、俺はそういう人間として生まれたのだ。
異世界転生を果たした俺であるが、生まれたのは王族ではなく貴族でもなく、金持ちの商家でもなく特別な血筋とかでもない。ものすごい冒険者なんかの養子とも違う。ごくごく普通のありふれて平凡な、そんな田舎に暮らす一家である。両親も普通の人だ。
ここでいう普通とは、奇天烈や猟奇的などといった、特異な性格や人柄を否定する意味合いではなく、前世にもいた人間そのままという意味である。
なんたってここは異世界だ。異形に生まれ変わる可能性もあった。だから本当に喋るトカゲや触手星人の子供じゃなくて良かった。発狂死して転生早々リボーンせずに済んだ。生まれ変わろうと俺の精神は普通の人間なのだ。
俺の両親の話に戻るが、この二人はこの世界では、人族という種族のヒュウムと呼ばれる人種になる。この人種とは前世のそれとは異なる。この世界には俺の前世の世界で言う、亜人的な人間が存在するのだ。前世の知識を参照するとエルフとか獣人とかそんなのである。それを俺は村の中で見かけて驚いた。というかその衝撃で前世の存在を思い出したと言っていい。
ちなみに亜人みたいな言葉は差別発言である。それは人っぽい人というより、その人種が主に築いているコミュニティの中での話だ。だから世界のどこかにあるという獣人国家やエルフ国家では、ヒュウム種に対して亜人は蔑称になるのである。だから出来るだけ使わない方がよろしいと両親から教えられた。緩い場所だと互いに互いを亜人と呼んで笑いあったりもするらしいが。まあ用量を守ってほどほどに使おうという話である。
人種の話はここまでにしよう。世界には他にもなんかいるらしいが、普通に生きていれば会うことも少ないそうなので、その都度がよろしかろうである。
異世界と言えば魔法である。至言だ。
中には魔法が存在しない異世界もあるかもしれないが、というか我が前世の世界がそうであるが、異世界といったら魔法である。
俺がこうして言う通り、俺が転生したこの世界にも当然魔法が存在する。俺はそれを知ってとても喜んだ。そしてすぐに消沈した。魔法はある。あるにはあるが、容易に使えるようになるものではなかったのである。別にこれは素質や才能的有無とか遺伝とか血統とか、選民思想を助長する制限が課されているわけではない。
この魔法というものを語る前に、まず魔力という力について語らねばならない。
魔力とは世界に満ちるエネルギーだとか、 生き物なら誰でも持つとか、無機物にも宿るとか、そんな感じでこの世界ではありふれた存在の一つである。もしかしたら前世世界にもあったかもしれないが、俺は知らなかったのでそこはどうでもいい。
それでこの魔力であるが、俺も生き物の端くれであるので、当然その力を持って生まれてきた。魔法というのは、この魔力を必要として使うそうなのである。だから俺も魔法使いになるための最低条件は持っていると言える。
しかしながら、現状俺が魔法を使うことは不可能である。なぜなら魔法を使うには、なんか変な果実を食べなければならないそうだからだ。意味不明だ。なぜ果実を食べると魔法に繋がるのか。この話を始めて聞かされた時、俺は両親の正気を疑った。しかし話は事実でした。
なんでもこの世界には、宿魔の実という不思議な果実が存在するようなのだ。なんだそれは。悪◯の実かい。俺は一人そう突っ込んだ。ただ悪◯の実と違い、この宿魔の実はそれほど貴重でも希少でもないそうだ。割とありふれているというか、金さえ払えば誰でも彼でも入手は可能らしい。なんだそれなら簡単じゃん、と思ったそこの俺。忘れてはいけない。自分の家は貴族でも金持ちでもないということを。
その宿魔の実は特別高価というわけではないが、それでも田舎のど庶民には高級果物なのである。子供が欲しいなと強請った程度で、易々と手に入るものではない。
しかも話はまだ続く。この宿魔の実、食べれば確かに魔法を使えるようになるが、それに付けられたランクによって価値が大きく異なるそうなのである。一番やっすい最低ランクの実だと、本人の資質もあるがカスみたいな魔法しか使えないようなのだ。そして、まともな魔法を使えるようになる強い宿魔の実は、田舎庶民の年収を普通に超えてくる。絶対おかしい。
この金持ち御用達の超高級果実。富豪なら札束を積めば楽に手に入れられる。しかし、実はそれ以外の方法、つまりは金を払わずに手に入れる手段もある。これを聞き、俺はまた希望を取り戻した。その方法とはズバリ、自分の手で直接採取に向かうのだ。俺はおかしくなっていない。本当にこの世界ではそれが当たり前に行われている。農家が栽培しているわけではない。
この世界にはダンジョンがある。ゲームとか創作で出てくるそのダンジョンである。この世界の言葉で言うならばホウルスト、恵み齎す異界の地という意味の古語だが、俺はダンジョンと呼ぶし呼んでいる。
それでこのダンジョンであるが、この中に件の宿魔の実がのびのび育っているそうなのだ。なんだそれなら簡単じゃん、と思ったそこの俺。忘れてはいけない。ここは異世界。前世では人類は頂点捕食者と呼ぶべき存在だったが、この世界には我々人よりも強力な存在はごまんといるのだ。
ダンジョンの中には魔物がいる。ダンジョン内をうろちょろしている奴らである。こいつらは人がダンジョンに入ると問答無用で襲ってくる。殺しにくるのだ。つまり宿魔の実を手に入れるには、襲いかかってくる魔物を返り討ちにして進まなければならない。
そしてこの魔物という奴ら。普通に強いらしい。鍛えた人間が武装すれば勝てるのだが、魔法も使えない武器も振るえないただの子供が戦ったところで、当たり前に殺されるだけなそうな。そりゃそうであると思った。
『じゃあその辺のダンジョンに、お父さんが代わりに挑んで採ってくるよ息子よ』。こういうわけにもいかない。確かにただの庶民でも、大人ならある程度鍛えて武装すれば最低ランクのダンジョンに挑むことは可能である。しかし宿魔の実とは、初心者お断りのそこそこ難しいダンジョンの奥にしか生っていないのである。そしてそんなダンジョンに挑む者たちは、大抵が魔法を習得済みなのである。アホかな。
というわけで、異世界転生して現在5歳の俺は、世の無情を、家の裏にある庭の地面にぶつけるのであった。
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