一日一首(令和五年六月)

松の木の影に咲きそろふ文目かな大和心湧く水無月の朝


庭籠めて妖艶なる香を漂はせ芍薬咲けり白桃色に


金婚と錫婚祝ふ我が庭に紅白の薔薇あまた咲きをり


蔓薔薇と木香薔薇はよりそひて紅白まじへパーゴラを昇る


青森県知事選挙なり。変革の二票を携へ夫婦で行かむ


人種などミトコンドリアにして見ればみな混血のホモサピエンス


朝陽あぶる玄関前の花ら眺め雪掻きし日もありしを想ふ


長寿の世、健康余命を伸ばさむと一汁一菜に気をくばる妻


強風に萱草の花のあふられて鵞鳥が泣き叫ぶさまにも似たり


木漏れ陽に薄紫の丁字草が遊ぶ子らのごとく五弁をひらく


雨あがりのキッチンガーデンにプチトマト黄花を咲かす実も近からむ


梅雨近き庭に黄金色(こがね)の八重の薔薇かがやくは正に輝夜姫なり


義母が形見、躑躅と思ひしによく見れば雄蘂の数などで皐月と知りぬ


ミニ薔薇と語れる妻を写さむとスマホを向くれば寄りそふ影も


食べごろの絹さや三本を収穫し夕餉の味噌汁に。長女帰省して


九蓋草の花評をすれば滑稽にも体かくして尻尾かくさずか


週一の勤めなれども医者として生き甲斐を得る残生の光(かげ)


梅雨空に向かひ咲きゐるアスチルベ赤白ロゼにて芳香はなつ


生きるとは動的平衡。食物で明日の我が身を再構築せむ


老いたるや新陳代謝の鈍くなり体内時計のネジもゆるめる


受精卵は三十七兆個に分化して動的平衡で生命つぐらし


丸刈りせし頭上に夏至の太陽の八分前のパワーを感ず


三陸の海を遮る防潮堤。そこに潜めるショック・ドクトリン


梅雨の庭に家中(いへぢゅう)の鉢を出して並べ「うれしいでしょう?」と声かくる妻


その若葉に雨浴びてゐるバジルつみトマトに添へて朝食の菜に


新型コロナはや三年余なり顧みて「常在型」と呼ぶべくならむ


コンテナに植ゑし明日葉つみとりて天ぷらにすれば歯ざはり宜し


花をへし蝋梅の枝に実がひとつその種子カリカンチンなる毒をもつらし


毛越寺で手に入れしアヤメが今年もまた梅雨の晴れ間の庭を飾れる


梅雨の晴れ間、木陰の紫陽花の毬花にのる雨粒が青くにじめる


ディズニーのアニメのやうな愛らしき親指姫みゆ蛍袋に

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