第12話 カオス! カオス! カオス!
「付き合ってなどいません!!!」
「つ、つ、付き合ってててて」
俺は即座に否定するが、泡瀬さんの様子がおかしい。顔を真っ赤にして、今にも倒れそうになっている。
普段の泡瀬なら、俺と同じように即座に否定して俺に文句を言ってきても不思議じゃないけど…泡瀬さんは違うらしい。最早、別人格かよ!
そんな俺たちの様子を見て深谷先輩は、少しホッとした顔をして呟いていた。
「そうなのですか! 付き合っていないのですね? 私は、てっきり泡瀬さんの態度から付き合っているのだとばかり」
「はい、俺と泡瀬さんは付き合っていません」
「つつ、付き合ってててて」
「おい! 泡瀬さん?」
とりあえず、未だに顔を真っ赤にしている泡瀬さんを宥めることとする。泡瀬さんは、しゃがみこんで頭を抱えてしまっているので、
俺もしゃがみこんで視線を合わせる。
「落ち着け、深谷先輩には分かってもらえた。慌てなくていい」
「ほ、ホント?」
「あぁ、ホントだ。だから、落ち着け。ゆっくり立ち上がって、学校行くぞ?」
「う、うん」
朝の寝ぼけている泡瀬さんを宥め、学校に行くように勧める。俺としては、早く学校に行きたいが…流石にこんな状態(寝ぼけている)泡瀬さんを放っていくわけにはいかない。
しかし、そんなことをしていると深谷先輩がジト目でこちらを見てくる。どうしたんだろう?
「…本当に付き合ってないんですよね?」
「はい、付き合っていません!! むしろ、犬猿の仲といっていいほどです」
「流石にそれは嘘ですよね!? 流石の私も騙されないですよ!?」
深谷先輩が驚愕した表情を浮かべている。そりゃそうか、今日のこの泡瀬さんの様子を見たら変に思うか。
「それが本当なんですよ。普段の泡瀬なら俺と争いまくるんですが…今日は寝ぼけてるらしく全然噛み付いてこないだけで」
「そんなことあるですか!? むむむ、これを取り入れたらより面白くなるかもです」
「えっ、何を取り入れるんですか?」
「お気にしなくて結構です」
「はぁ、そうですか」
深谷先輩は本当に不思議な先輩だな。先輩なのに全く先輩感がない。(本人に言うと怒られそうなので言わないが)
「じゃあ、泡瀬さん行くぞ?」
「…」
「おーい、泡瀬さーん?」
急に泡瀬さんの反応がなくなってしまった。
目に光がないがどうしたんだ?
「おーい、泡瀬さん?」
「返事ガアリマセン」
「今、返事あったぞ!? そして、何そのロボット的音声!?」
「返事ガナイ。只ノ屍ノヨウダ」
「ドラ◯エ!?」
まさか泡瀬さんがそれを知っているとは思わなかった。って言うか?
「泡瀬…もしかしてちゃんと起きた? 意識が覚醒した感じ?」
「う、うぅ〜//」
「やっぱりか」
恐らく、寝ぼけていた泡瀬さんは、目覚めて泡瀬になったんだろう。それで、泡瀬は自分の行動を振り返り恥ずかしくなりロボット返事で誤魔化そうと…なんて、不憫なんだ。
「寝ぼけてたんじゃ仕方ないしそんなに気にするな。俺も忘れるから」
「と、鳥田に言われなくても分かってるし」
いつものペースを取り戻し始めた泡瀬にホッとする。やっぱり、泡瀬はこっちの方が相手をしやすい。
「なら良かった、ただ」
「ただ?」
「いくら寝ぼけているとはいえ…流石にあんな無防備なのは危険だ。出来れば友達と一緒に朝は登校してくれ。じゃないと心配になる」
「っっ!!//」
俺が泡瀬に完璧に勝つまで泡瀬に何かあったのでは困るのだ。そう思って言ったことだったが…何故か、今日見た泡瀬の中で一番顔を赤くして座りこんでしまった。
もしかして…泡瀬、まだ完全に目が覚めたわけじゃなかったのか?
そんな俺たちの様子を見ていた深谷先輩が再びジト目を向けてくる。
「本当の本当に付き合ってないんですよね?」
「はい、そうですけど?」
「…なら、いいです」
なんか全然納得いってないようだが引き下がってくれる深谷先輩。
そんなことをしているとどこかで聞いた声が聞こえてきた。
「おーい、とぉ〜りた君、遊びましょ♪」
何故か坊主頭のヨウがこちらに向けて全力で走ってきていた。…何故か、バリカンを持って。
「てめえも坊主になりやがれ!!」
「なるかよ!」
しかし、動き自体は単純なのですぐに押さえつけて、電柱に縛っておく。
「くっそ! 親友のクラスメイトの仲間外れにならないようにと言う心遣いが分からないのか!」
「いや、思いっきり私怨だっただろ!? 完全に、俺を坊主にしたかっただけだろ!?」
確かに、クラスメイトの男子俺以外これで坊主なわけだけど。
「くっそ! 親友のイチャイチャしている親友を殺したいと思う心遣いが分からないのか!」
「それ、心遣いでもなんでもなくただの嫉妬による殺意だろうが!! …それに、俺はイチャイチャしてないし」
「嘘だ! 朝から、こんな美少女2人はべらせて…どこのラブコメの主人公だよ!」
「意味わかんないこと言うな! はべらせてないし」
「そもそも、なんで泡瀬さんと一緒にいるわけ!? 犬猿の仲なんだろ!?」
「すまん、それについては俺もよく分からん。じゃあ、俺もう学校いくから」
「お前ええええ」
ということで電柱に危険人物を縛り付け学校に向かおうとしていると深谷先輩が瞳を輝かせていた。どうしたんだろう?
「ごめんなさいです。私、用事を思い出しましたので早く学校に行って来るのです!」
そして、そういうや否や颯爽と去っていってしまった。
まだ、顔が赤く調子が悪そうな泡瀬と、電柱に縛りつけられたヨウと、最早どうしたらいいのか分からない俺を残して。
こんなのどうしろってんだぁぁぁ。
俺はとりあえず叫ぶと近所迷惑になるので心の中で絶叫するのだった。カオス!
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
カオス! 作者も何を書いているのか分からなくなりました! 深谷先輩は何で急に去ってちゃったんでしょうね?
この回は、ささっと伏線張って次に進むつもりが思った以上に長くなりました。作者が執筆中に調子に乗ったせいですね。
まぁ、そんなわけで予定より進みませんでしたが…見逃してください。
もし、良かったら応援と星をお願いします。
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