第46話 サクラちゃん、復活 第一章完結

病室へ行く僕ら。


病院は慌ただしかった。

数か月眠っていたサクラちゃんの体に異変が起きている。


ネクロマンサーの呪いが解けた反動だろうか。


「サクラ! 目を覚ませ!」

寝ているサクラちゃんに声をかけるアスカさん。


その姿はトップ冒険者などではなく、ただのお姉ちゃんだ。


「サクラ!」

「……ん」

「サクラ??」

「んー……お姉ちゃん?」

「サ、サクラ……ッ!」

「あれ……アタシ……寝てたの?」

「……よかった」

サクラちゃんを抱きしめるアスカさんの目には涙があふれていた。



「うう……よかった……」

ガイドもなぜか号泣している。


「うう……よかった……」

僕ももちろん号泣している





「そっか……アタシ、モンスターの呪いで……」

「ああ、数か月寝たきりだったんだぞ」

「そうなんだ……ありがとうね! お姉ちゃんが呪いをかけたモンスター倒してくれたんでしょ?」


「……いや。私じゃないよ」

「え?」

「彼がサクラの呪いを解いてくれたんだ」

「……彼?」


サクラちゃんが僕を見る。

夢のような瞬間だ。

憧れのアイドル サクラちゃんの呪いを解き、目を覚ませる。

ふふ、さながら王子様のキッスで目覚める白雪姫ってところかな?


「え? あの人が……?」

「は、はじめま―――」

「えっ!? きっも。なに? あのキモいオタクは? この病院は警備いないの?」

「サ、サクラ……木本君はな……」

「お姉ちゃん、あんなのと知り合いなの? どうしちゃったのよ?」

「サクラ……やめて……」

「……は、ははは……」

僕はもちろん号泣している




「す、すまない失礼な妹で……そ、その……多分、目を覚ましたばかりでまだ呪いの影響もあるのかも……!?!?」

「ははは……そうですね……呪いのせいですよね……きっと……」


さすがネクロマンサーの呪いだ……死後の念というやつか!? 除念師が必要なのか?


「キモオタ君……元気出して……」

さすがにガイドも今は優しい。




積もる話もあるだろう。僕とガイドは病院をあとにする。


「はー……それにしても可愛かったなぁ」

「えー? そんなですかね?」

「ガイドは女子に厳しいなぁ」

「あれくらい全然普通ですよ! 私の世界じゃ石を投げればあのレベルの女の子に当たりますよ!」

「……その世界行きたいな……」



「ちょっとアンタ!」

「ん?」

女性の声に呼び止められる。


「……え!?」

「アンタ……アタシの呪いを解いてくれたんだって?」

「サ、サ、サクラちゃん!?」

「誰がサクラちゃんよ! 馴れ馴れしいわね!!」

振りむくとそこにはサクラちゃんが。


「……ふん、お姉ちゃんもお世話になったみたいだし……とりあえずお礼を言っておくわ!」

「……い、いえ……」

「ありがとうねっ! ふん!」

不機嫌に去っていくサクラちゃん。



「なんですか? あの生意気な態度!」

「……くぅうう! 生きててよかった!!」

「えぇ……あんなのでいいんですか?」

「あのツンデレ具合がサクラちゃんの魅力なんだよ!!」

「……キモいですねぇ……」


なにはともあれ、ネクロマンサーを倒しサクラちゃんの呪いは解けた。

次はいよいよ魔王を倒しに行くのだろう。


「ガイド! もっとレベル上げに行こう!!」

「もう、なに急にやる気出してるんですか?」

「ふふふ、勇者に休みはないのだよ?」


この世界でレベルアップできるのは僕だけだ。

僕がこの世界を……いや、この世界もガイドの世界も守ってやるんだ。


「あ!」

「どうしました!?」

「しまった……サクラちゃんとツーショットの写真を撮ってもらえばよかった……」

「……」

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