第42話 アスカさんのスキル

飛び出すアスカさん。いつも速いが今日は今までで一番速い。


『おっ!?』

ネクロマンサーは持っていた杖でアスカさんの剣を受け止める。


『すごいスピードですね……思い出した。前に姉妹でここに来た女戦士ですね』

「……ああ! キサマを倒しに来たんだよ!」

『そうだ! 妹の方に私の呪いをかけたんでしたね。そろそろ死にましたか?』

「くっ! キサマぁ!!」

アスカさんは怒りの形相で斬りかかる。


『くっ……速いな……前より速い!』


アスカさんもこの数か月戦い続けて成長しているのだ。

ますますスピードを上げるアスカさんの斬撃はネクロマンサーに当たる。


すごい! これがアスカさんの本気か。もしかして僕の光魔法は必要ないんじゃ……?

そんな期待をしている時、


「くそ! 全然効いていない!」

『ふふふ、私の体はガスで出来ています。剣の攻撃じゃ致命傷は与えられませんよ』

「くっ!」

ネクロマンサーは物理攻撃だけでは倒せないようだ。



『うーん……とは言っても肉弾戦じゃ分が悪いですね……』

ネクロマンサーは後ろに飛び距離をとる。


『スッ……』

ネクロマンサーはアスカさんを指さす。


「なんだ!?」

「アスカさん! あぶない!」


ネクロマンサーの指からドス黒い閃光が飛ぶ。

「ぐっっ!!」

「アスカさん!!」


黒い閃光はアスカさんの足をかすめる。

「ううぅ……」

倒れるアスカさん。


『いやぁ、ここまで強い人間は初めてですよ。お見事でした。』

「キサマ……」

『でもここまでです。さようなら』

ネクロマンサーは再びアスカさんを指を指す。



「くそ……」

ネクロマンサーの指先が光るその時、

「うおおおお」

『む!?』

僕はネクロマンサーに斬りかかる。


『ほう、そっちの小デブもなかなかのスピードですね』

ひらりとかわされる。


小デブ……!?


「アスカさん! 大丈夫ですか?」

「ああ……すまない。もう大丈夫だ。ヤツは遠距離攻撃もあるぞ。気をつけろ」


『これは人間だからといって放って置くわけにはいきませんね。ここで殺します。

魔王様の障害になりそうモノは全て消し去らなければなりません』


本気になるネクロマンサー。



黒い炎を放つ。

「くっ!」


避ける僕をネクロマンサーが杖で襲い掛かる。

『逃がすかぁ!!』

「ぐうぅ!」


魔法だけなく力・スピードもかつてない強さ。

杖を必死で受け止めるのが精いっぱいだ。



「キモオタ君……」

ガイドが小声で話しかける。


「このまま戦ってもネクロマンサーは倒せません! 光魔法を使いましょう」

「ああ……そうだな……でも」

光魔法は体力の消耗が激しい。一撃で決めないと大ピンチだ。


「木本君! 私がいく! 頼むぞ」

「でも……剣じゃ倒せないって……」

「ああ……私がスキを作るよ。それに……私にだってスキルはあるんだぞ?」

「え?」


アスカさんのスキル。

普段から強すぎて考えたことがなかったが、僕に光魔法のスキルがあったように人それぞれスキルがある。


「アスカさんのスキルって……?」


アスカさんが敵に飛び掛かる。

足のダメージもあるだろう……長くは戦えないはずだ。

スキを見て光の弾丸を打ち込んでやる!



アスカさんの剣は完全にネクロマンサーを圧倒している。

剣のダメージが効きにくいネクロマンサーじゃなければ倒しているだろう。


『ふふふ、大したスピードですけどね。でもそれだけじゃ私は倒せませんよ?』

「ああ、そうみたいだな。だが……」


アスカさんの体が光り出す。


『な、なんですか!?』

「これがアスカさんのスキル……!?」


アスカさんの横に誰かが現れた。


「え……アスカさんが二人!?」


「これが私のスキル、【分身】だ」

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