第40話 サクラちゃん
病院に着くとアスカさんが待っていた。
「すまんな、よく来てくれた」
「い、いえ。すみません……」
村田を病院を送りにした事、怒られるんだろうか……
「ああ、まあほどほどにな」
「は、はあ……あの今日はどうして病院に?」
「ああ……実はネクロマンサーのダンジョンへ行く前に一度、妹のサクラに会ってもらおうと思ってな」
「ええ!?!?」
「この病院に入院しているんだ」
サクラちゃんのお見舞い!? 村田のお見舞いではなかったのか……
「す、すみません! サクラちゃんのお見舞いだったなんて。僕、花とか果物とかなにも用意していなくて……」
「ははは、そんなのいいんだよ。それにもし村田のお見舞いだとしても何か用意はしておくべきだぞ?」
病院の奥、ひとけの無い病室にサクラさんはいた。
体中にチューブを繋がれ、美しい寝顔でベットに横たわる。
「サクラちゃん……」
ずっと応援していた憧れのアイドルとの初対面だが、つらい気持ちだった。
「この人がアスカさんの妹ですか……」
ガイドがサクラちゃんを見つめる。
「……すごいレベルですね……。アスカさん並みです」
「ああ、いずれは私を超える冒険者になれる才能があるとみてる」
「そ、そんなに……」
白野姉妹は天才のようだ。
「よし、木本君。サクラに会わせるという約束は守ったからな?」
「あ……」
アスカさんと初めて会った時の約束を思い出した。
そうだった。
サクラちゃんに会わせてくれる。そんな約束から僕のレベルアップは始まったんだった。
「ありがとうございます……」
「遅くなってすまんな」
「でも、これじゃダメですよ……今度は起きてるサクラちゃんに会わせてください!」
「ふふ……そうだな。次来るときはサクラが起きている時だ!」
アスカさんの目には薄っすらと涙が光っていた。
「頼むぞ! 木本君!」
「はい!」
サクラちゃん、僕が必ず呪いを解きます!
僕はサクラちゃんの手を握り、熱い誓いをしようとする。
その時――
「ま、待て!!」
「え?」
アスカさんが僕の手をさえぎる。
「いや……手を握るのはちょっと……」
「え、えぇー!?」
「ほ、ほら……妹は芸能人だし……」
「は、はぁ……」
なんだろう……納得できない感じだが……
いよいよ僕らはネクロマンサーのダンジョンへ行く。
今の僕はレベル50を超えた。必ず倒せるはずだ。
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