第35話 シン・キモオタ・ストラッシュ
ドラゴンが僕に襲い掛かる。
鋭い牙に爪、切り裂かれたらひとたまりもないだろう。
ドラゴンの爪を剣で受け止める。
『キンッ!』
「うん、大丈夫だ!」
ドラゴンの動きもハッキリと見える。
僕は爪を剣で斬り落とす。
よし、僕の攻撃はドラゴンにも通用する!
暴れ回るドラゴンは炎を吐く。
「ひいぃぃい! キ、キモオタ君! 炎がきますよ!」
慌てるガイド。
「大丈夫! 試してみたかったことがあるんだ」
僕はドラゴンに手のひらを向ける。
『光魔法』
手のひらから光の弾丸が飛び出し、ドラゴンの炎をかき消す。
この合宿で身につけた光魔法だ。
「光魔法!? すごい!」
「ああ、初めての使うけどいい感じだ……うっ……結構、体力使う……」
レベルアップした僕の光魔法は懐中電灯から成長したようだ。
しかし、慣れない魔法は体力の消耗が激しい。
「木本君……すごいな……」
アスカさんも遠くから見守っている。
ひるむドラゴン。
僕は剣を逆手に構え、飛び掛かる。
いつか精霊のダンジョンでスライムに使い損ねた必殺技。
いくぞ……!
「くらえ……! キモオタ・ストラーーーッシュ!!」
剣は硬いドラゴンの皮膚を切り裂く。
『ぐおぉぉおお』
ドラゴンは倒れる。
「はぁはぁ……やった!」
ドラゴンを倒すことが出来た……!
しかし、魔法のせいかクタクタだ……
慣れていかないとな。
「木本君、よくやってくれたぞ!」
アスカさんも褒めてくれる。
「いやぁ……それほどでもぉ!」
珍しく褒められてニヤニヤが止まらない……!
「……せっかくカッコよかったが相変わらず気持ち悪いな……。しかしすごいな、私だってドラゴンはそうとう手こずるぞ……?」
少し前までレベル0だった僕がここまで強くなれるとは……
感無量だ!
◇
「姫島さん、大丈夫?」
落ち着きを取り戻した姫島さん。
「う、うん……ありがとう……キモオタ君、メチャメチャ強いんだね……」
「いやぁ……それほどでもぉ!」
「……うーん……やっぱりキモいなぁ……」
苦笑いの姫島さん。
話を聞くと別荘に来ていたが家族は出かけていて一人留守番だったようだ。
ドラゴンの雄叫びを聞いた姫島さんの家族はすぐに別荘に戻ってきた。
ボロボロになった別荘に驚いた姫島パパだったが、他にも別荘はたくさんあるようで気にしていないようだった。
金持ちはすごい。
「そうだ。姫島さんとやら」
「は、はい!?」
アスカさんが姫島さんに話しかける。
「木本君が強いことは他言しないように頼むぞ」
「え? なんで……」
「いいから黙ってろよ!?」
「は、はい……」
口止めをするアスカさん。
僕が強いことがバレてしまうと魔王討伐に支障が出る恐れがあるからだろう……
がアスカさんの迫力に怯える姫島さん。
「キモオタ君……」
「ごめんね、姫島さん」
「ううん……でも、あのおばさん、メッチャ怖いね……」
姫島さんは僕に耳打ちをする。
「お、お、お、おばさん!?!?」
トップ冒険者は耳もいいのだろうか?
剣を抜こうとするアスカさん。
「だ、ダメです! アスカさん!」
いよいよ合宿もラストスパートだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます