キモオタ レベル０ 世界最弱のオタク高校生が世界を救う！ボスの能力は相手のレベルの１０倍の力に。なるほど、僕しか倒せませんね。

第34話 ドラゴン

雄叫びのする方に近づくにつれ砂煙が舞っている。

「これは相当強いモンスターだな……」

民家に到着する。

豪華な家だ。

「あ、あれは！？」

「……とんでもないモンスターがいたもんだな……」

「ドラゴン！？」

砂煙の中心では強大なドラゴンが炎を吹いている。

モンスターの中でも最強クラスのモンスターだ。

「助けてぇぇええ！！」

民家から女性の叫び声が。

「あのドラゴン、人を襲ってるんですか！？」

「そのようだ……私がドラゴンの動きを止める！　君はあの人を助けてくれ！」

「は、はい……」

「大丈夫です！　今のキモオタ君ならできるはずです！」

ガイドが僕のポケットから言う。

「……分かりました！」

この合宿で成長した自分を信じてみよう。

「いくぞ！」

アスカさんはドラゴンに斬りかかる。

『キンッ』

「くっ、強いな……」

アスカさんの剣でもドラゴンの動きを止めるだけで精一杯のようだ。

ドラゴンが民家から離れ、アスカさんに襲い掛かる。

「今だ！　木本君！」

「はい！」

僕はアスカさんが作ってくれたそのスキに女性に駆け寄る。

ドラゴンに襲われた恐怖で固まっている。ケガはないようだ。

「大丈夫ですか！？」

「は、はい……え！？」

「え！？」

「キ、キモオタ君……！？」

「ひひひ……姫島さん！！？」

なんと、ドラゴンに襲われていた豪邸の女性はクラスのアイドル姫島さんだった。

富士山の別荘に行くって言ったからまさかとは思ったが……

「どうしてキモオタ君が！？」

「いや……その……そんなことより逃げよう！」

「う、動けなくて……」

姫島さんは恐怖で腰を抜かしているようだ。

「……し、失礼！」

僕は姫島さんを抱き抱える。

「キモオタ君……」

「とりあえずここから離れよう！」

姫島さんをドラゴンから遠ざける。

「姫島さんはここで待ってて」

「う、うん……」

クラスのアイドルをドラゴンから救う、こんなカッコイイ自分に酔いしれている暇はない。

僕はすぐにドラゴンと戦っているアスカさんに加勢する。

ドラゴンは強力なようでアスカさんでも苦戦している。

「アスカさん！」

「気をつけろ木本君！　今までのモンスターとはレベルが違うぞ！」

アスカさんの剣がボロボロになっている。

ドラゴンの皮膚も固いが、この合宿で何千体とモンスターを斬ってきたアスカの剣はだいぶ傷んでいたのだろう。

「ドラゴンは今まで何体か倒したことはあるが……この剣ではなかなか斬れないな……」

「アスカさん……僕にやらせてください！」

「木本君……危険だ！」

「大丈夫です！　アスカさんは姫島さんを守ってください！」

「……ふっ、君に命令されるとはな……わかった！　この剣では厳しいだろう。君に任せるよ」

「はい！」

僕はドラゴンに駆け寄る。

「キ、キモオタ君……大丈夫ですか！？」

「ああ！　ガイドは安心してそこから見ててくれ！」

「ドラゴンですよ！？」

僕のポケットから心配そうに言うガイド。

「間違いなく今までで一番強力なモンスターだ。でも……なんだろう？　そんなに強いとは思えないんだよ」

虚勢ではなく、ほんとにそう思ったのだ。