第27話 夏休み

 いよいよ明日からは夏休みだ。

 僕のレベルアップ合宿が始まる。


 クラスメイトは夏祭りだバーベキューだとはしゃいでいる。


 「やれやれ、一般人はいいですなぁ。世界の平和を守る僕はこの夏は合宿ですわ」

 浮かれるリア充どもめ……


 「今年の夏はキモオタ君は遊ぶ暇はなさそうですね」

 ポケットの中のガイドが言う

 「ああ、少し寂しいがこれが勇者の宿命だよ、ガイド君」

 「立派ですね! 去年は夏祭りとか行ってたんですか?」

 「……も、もちろんだよ」

 「……ほんとですか??」

 「ガイド君! おしゃべりが過ぎるな!」

 「ひぃっ!」

 ガイドを睨みつける僕。

 そんなの行ったことあるわけないんだろ……バカ精霊め!

 


 「キモオタくーん!」

 「むむ? ひ、姫島さん!」

 クラスのアイドル姫島さんは今日も美しい!


 「夏休みだね! キモオタ君はどこか遊び行ったりするの?」

 「いやー……ぼ、僕は……」

 「デレデレしちゃって……」

 クラスのアイドルに話しかけられ浮かれる僕をガイドが冷たい目で見る。


 「僕は……修行といいますかなんというか……」

 「修行!? キモオタ君やっぱり面白いね」

 「は、はは…… 姫島さんは?」

 「んー私はパパの別荘に行くくらいかなー?」

 「パパの別荘!」

 やはり姫島さんはお嬢様だったのか。

 ス〇夫のようなこと言っても、全然自慢っぽく聞こえない。

 それが姫島さんの魅力だろう。



 「キモオタ君も来る?」

 「えっ!!?」

 初めての女子の誘いに焦る僕。


 「い、いや! そ、そんな! 姫島さんと旅行なんてとんでもない!」

 「ふふふ、冗談よ! でも良い別荘だよ! 富士山のそばで景色も奇麗なの! じゃあキモオタ君は……修行? 頑張ってね!」

 「う、うん! じゃあ……」

 「じゃあねー!」

 眩しすぎるキラキラ女子との会話は疲れるな……

 「じゃあね姫島さん。君も魔王から守ってみせるよ……」

 「ふん、そんな良い女ですかね?」

 相変わらずガイドは可愛い女子に厳しい。


 「いい子じゃないか、僕みたいなやつにも優しく話しかかけくれるんだ」

 「世間知らずなお嬢様ですよ、なにが別荘よ!」


 別荘……富士山のそばって言ってたな……

 ……まさかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る