世界の色を教えて。
むぎ
第1話
私は1人です。クラスの中でも、お家でも。1人で本を読んでいます。元気な子達がカラオケに行ったりプールに行くのを見ていると、少し羨ましいです。でも本を読むのは好きです。1人も、慣れたら楽です。だからそれでいいと思っていました。
「ねぇ、これ何色に見える?」
びっくりしました。この人は同じクラスの男の子です。名前は、なんだったっけ。確か、相楽くん、だったと思います。
「色?橙色、に見えるけど、どうだろう。」
「だよな!?みんな赤だって言うから俺がおかしいのかと思った。あぁ、急に話しかけてごめん。読書の邪魔しちゃったよな。」
「ううん、大丈夫。それ、綺麗な夕焼け空だね。」
なんだかとても話しやすくて、もっと話していたくなりました。会話が楽しいなんて感じるのは久しぶりだったので自分でも驚きました。
「これ俺が撮ったんだ。昨日の空めちゃくちゃ綺麗だったから思わず。」
「相楽くんって写真部だったっけ?」
「名前覚えててくれたんだ!絶対わかんないと思った。そうだよ。写真部。似合わないだろ。」
良かった。名前、合っていたみたいです。相楽くんはバスケ部かサッカー部だとずっと思っていました。写真部だったんですね。
「運動部だと思ってた。でも写真部、素敵だと思う。」
「まじ?ありがとう、すごい嬉しい。小林さんは美術部だっけ?」
「そう。イメージ通り、だよね。」
「文化祭のポスターすごい上手だったからそうかなって。いつも分厚い本読んでるから文芸部かなとも思ったんだけど。」
「読むのは好きだけど書くのは苦手だから。文化祭のポスター、私が描いたって知ってたんだ。」
ちょうど2ヶ月くらい前、私たちの高校の文化祭がありました。ポスターを美術部が描くことになって、引退していない3年生が私だけだったのであれよあれよという間に描くことになっていました。気付いてくれている人がいたなんて思いませんでした。嬉しいような恥ずかしいような暖かい気持ちで胸がいっぱいになりました。
「色使いで気付いた。小林さんはいつも優しい色を使ってるから。美術の授業で描いた絵も小林さんだけ色が独特だったから。」
そう、なのでしょうか。思い返してみてもそんなに違いはなかった気がします。
「相楽くん、目がいいのかな。さっきも『みんな赤だって言うから』って言ってたもんね。」
「昔からみんなと違うように見えてるっぽい。自分じゃよくわかんないけど。」
「すごいね。すごく素敵。あ、じゃあ、今の空の色は何色に見えてるのかな。」
「赤紫と青に見える。小林さんには何色に見えてる?」
「私は赤と橙色と青。ほんとだ、ちょっとだけ違うね。」
「まじか。昨日の空の色は2人ともオレンジに見えてたのに。なんでだろ。」
「なんでだろう。不思議だね。」
「「あ。」」
予鈴がなってしまいました。もう少しいろいろ話したかったですが、授業が始まってしまいます。
「また話そう。楽しかった、ありがとう。」
「うん、また。」
相楽くんも同じことを思っていたのが嬉しくて、次はどんな話をしようかなと心が踊りました。相楽くんの目に写っている色は、どんな色なんだろう。次の休み時間が待ち遠しいです。君が見ているものを私も見たいから。
世界の色をもっと教えて。
世界の色を教えて。 むぎ @mugigi_1222
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。世界の色を教えて。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます