第21話おぺれーしょん・さきゅばす

「搾精とエッチの違いねえ……バナナはおやつに入るんですか?みたいな話だな」

「搾精がエッチにならないなら、教えて欲しいんですよ、やり方を」


 放課後、僕はヒサメさんと共に彼女のマンションに向かった。エントランス前に笑顔で待ち構えていたのが公立中学制服姿の入鹿コロネ。「昨晩はどうも」と僕に頭を下げた彼女を見て「まあ、話あんなら入れや」と中に入れたヒサメさんだったが、前述の質問をされて返答に困っていた。


「魔法少女がエッチしたらダメってのが納得行かないなら、コロネちゃん直属の上司みたいな魔女を論破したらよくね?」

「以前、『おかしくないですか?』という旨の質問状を送り付けたことがあるんですけど、回答が『私達も悩んだ時期がありました。でもね、悪い大人に利用される、というリスクを回避するという意味もあるのよ』というものでした」


「その通りだとあたいも思うよ~。大体さぁ、おたくらの組織は反サキュバスなんだよな?搾精したらダメじゃないの?」

「ヒサメさん。初めての搾精の時、痛かったですか?」

「痛くはなかったけど……」


「でしょ?搾精なら痛くはないし妊娠もしない、そんな技をあたしも覚えたいんですよ」

「わ、技?あたいにとってはご飯食べてるのと変わらないことだよ?」

「ハルマさんはヒサメさんのご飯なんですよね。それは分かってるんです、でも、ハルマさん悪い大人じゃないし、むしろお兄ちゃんみたいな人だから」


 僕の名前が出たので口を挟むことにした。


「コロネさんだったら、お兄ちゃんになってみたいっていう男の人は沢山居ると思う。モテるんでしょ?」

「ええ、あたしは最大公約数的なカワイイの要素を集めて組み立てたような美少女なのでぇ。ちょっと幼児体型なのがコンプレックス」

「だから、無理して魔法少女から魔女に昇格を目指さなくても、普通に人間として幸せになれると思うんだ」


 すると入鹿コロネはまなじりを吊り上げて僕を横目でにらんだ。

「一度でも魔法使ったら、やめられないんですよ。組織の規則ではなく。ハルマさんも魔法でプラスチック製のくしを釘バットに変えましたよね?申請したら組織に入会できるレベルです」

「そういえば。あのくし、ヒサメさんがどこかの魔女から巻き上げたものじゃないんですか?」


「あ~、あれ?昔ヤンキーとギャルの抗争っていう結構シャレにならない話があってさ。ギャル側に魔女がいて、そいつがあれで殴りかかってきたから奪い取ったんだ」

 ヒサメさんの言葉に入鹿コロネが反応した。


「ギャルが釘バット?あんまりイメージ湧かないですねぇ」

「まあ、ヤンキーからギャルに転向したような女だったから。今どうしてるかな~懐かしいな~」

「そのギャル魔女は、ヒサメさんをサキュバスだと認識した上で対立したんですよね?」

「あの女は、あたいをサキュバスと認識してたけど、組織がどーのとは言ってなかった。はぐれ魔女みたいな奴で、リンダさんと呼ばれていた。本名は知らない」


「リンダ。その時彼女は何歳でした?」

 入鹿コロネは何か思い当たりがあるようだった。


「あたいが17歳の時、18歳だったはず。高校は中退してたけど、考えてみたらいつ中退したのか分からねえ。コロネちゃん、搾精の話はまた今度にするかい」

「マチルダさんのお母さんの名前がリンダ。見た目18歳です。組織に報告も上げないでふらふらしてる人」


「あたいはマチルダって魔法少女の顔を知らねえんだけど、七五三のお祝いとかやってもらってなさそうだよな~。だからチトセアメにこだわりがあるのかな~?」

「あたしは、彼女の誕生日も知りません」


「なら、年上のオンナノコとして様子見に行ってやらなきゃだな」

 ヒサメさんはちょっと楽しそうだった。

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