第12話変換少女マチルダ
「1、2、3のみっつの数字のうち1と3は奇数だから2が偶数で仲間外れ。別のやり方で仲間外れになる数字は何か答えよ、っていう問題の答えが分からなくてぇ」
さわやかに晴れた土曜日の午後。あたしこと入鹿コロネは今、古代ハルマさんに市立図書館で勉強を教えてもらってます。周りに人が少ないのを確認し、さりげなく右隣に座っているカレに体を寄せてドキドキ。
「これは簡単だよ、2と3は素数だけど1は素数じゃないから仲間外れは1だ」
「あれ?1は1でしか割り切れないから素数じゃないの?」
「2以上の自然数が素数なんだ、ちなみに1から100までの間に素数は25個ある」
中学2年生の質問に平然と答える高校1年生のハルマさん。
「その25個くらいは暗記しておいていいかもね」
「は~いハルマさん、今度会う時までに暗記しておきま~す」
って、もう暗記してるんだけどね。女の子が勉強教えてもらうフリして年上男子に近づく手口をカレは知らないのか、一生懸命答えてる。ホントにカワイイことね。
でも、髪型が妙にオシャレになってるのはど~いうことっ!
髪の分け目がチー牛クラスタのそれと違うっ!
さては、あのやさぐれサキュバスがカレの髪にくしを入れてなでつけたのねぇぇっ!
ちょっぴり妄想。
カレの家に尾張ヒサメがダブリヤンキーサキュバスの分際で入り浸り、一緒にお風呂入ってる。
自然な感じでお口で搾精。おいしそうにごっくん。
あたし、ごっくんは出来ないのよ、この前も苦くてティッシュに出したの!うらやましい。ああっこんなことでは魔法少女から魔女に返り咲けないわっ!
「コロネさん?」
我に返るとここはどこ?思い出した。市立図書館で、古代ハルマさんの隣りだ。
「ちょっと休憩しようか。僕ここで荷物見てるからトイレ行って来ていいよ」
「ありがとうございます~」
席を立ちトイレに向かう。こういう気遣いもあのサキュバスが教えたのか。いけないわ、ちょっと頭を冷やさなきゃ。
鏡に向かいリップクリームを塗り直し、心の中で呟いてみる。
サキュバスに、なってみたい。
「なに憧れてんのや、情けない」
天井から染み出し、ぴょこんと降り立った黒髪おかっぱの白いワンピースがよく似合う小学校6年生。ひまわり畑でにっこり微笑んでいそうな美少女。
「マチルダさん、お久しぶりですぅ」
「まっちい、な」
美少女はあたしにほほえまず、苛立たしそうに肩をゆすった。
あたしとしたことがミスった。マチルダさんは自分の名前が嫌いで、まっちいと呼ばないと機嫌が悪くなる、ちょっと心に闇を抱えた魔法少女なのだ。
「サキュバスになってみたい、ねぇ」
「まっちいさん、すみません、すみません」
「なんならつくりかえたろか?自分」
髪の毛を掴まれ、ぐいと引き寄せられる。
「そ~んなにごっくんしたいならまっちいが見本みしたる。さりげな~く紹介せえよ?」
大変だ。ハルマさんがつくりかえられちゃう。
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