後ろの席の怖い女の子と話してみたら、めっちゃ可愛くて趣味もあって最高だった!~前の席の女の子も積極可愛いし、高校生活大満喫!?~
爛々
プロローグ
第1話 前の席の積極的な女の子と仲良くなった
夏の始まり、川のせせらぎ、蛍の舞。
「私今すごく楽しい。君に会えて良かった君と友達になれて本当に良かった……こんな幸せ、君といないと見つけられなかったもん」
満天の星空の下、隣に寝転がる女の子が幸せそうにそう呟く。
僕だって、そうだ。
君と出会えて、君と話して……だから、僕は……
☆
入学式―今後の学校生活を占う一大イベント。
それは今年から高校に入学する僕にも同じ、ホントにホントに大事な1日。
入学式の行われる会場の体育館の前で両親となぜかついてきた妹と別れて自分の教室である1年8組に向かう。
「……ふぅ、落ち着け、大丈夫大丈夫。緊張しちゃダメ!」
パンパンとほっぺを叩いて気合注入、緊張ほぐしにすーはーすーはー。
同じ中学の友達もこの高校に進学はしたけど、全員別クラス。
一人だけ友達はいるけど、ここから先は殆ど未知の世界、ちょっと怖いけど踏み入れなきゃいけない新世界。
僕は樹神だから青い帽子の出席番号7番、だからとりあえずはその席に座ればいい!
前の扉から入るのは少し恥ずかしかったので後ろの扉をがらがら、と開けて番号確認、右から2列目3番目の「7番!」というゼッケンがかけられた自分の席へ。
「お~お~、君が私の後ろの席の佑司君だね! よろしくね、佑司君!」
席についてそうそうに前の席の女の子がくるっと振り向いて、フレンドリーに僕の名前を呼びながらよろしく! という風にピシッと手を挙げる。
黒く艶やかなボブカットの髪に、クリっとしたまん丸で大きな瞳、そして少し幼さも孕んだあどけない笑顔にほわほわ優しい雰囲気―そんな可愛い女の子に急に名前を呼ばれて心臓がドクンと跳ね上がって……って何で名前知ってるの? 僕たち初対面だよね、ていうかこんな可愛い女の子会ったことあるなら忘れないと思うし!
「お、なんで名前を知ってるんだ、って顔してるね佑司君! それはね、ここに書いてあるの! 机の端っこにネームプレートがあるからさ、それをチラッと見させてもらったんだ! 名字の方はちょっと読み方がわかんなかったんだけど、名前はゆうじ君であってるよね?」
コツコツと僕の机を叩きながら、前の席に座る女の子はニヤッと笑って僕の方をキュッと見つめる。
「なんだそう言う事か、ちょっとびっくりした。うん、ゆうじであってる。苗字はね、結構間違えられるんだけど、これはね……」
「待って、私が答える、私に考えさせて! えっとね、樹に神だからきがみ……と見せかけてじゅしん! 君の名前は
正体見たり! という風に僕の方をゆびさしてから、あれ? という風にキョトンと可愛く首を傾げる。ふふっ、その間違いはよくされます!
「残念不正解! 確かにその二つでよく間違えられるけど、僕の名前は
「おー、なんかカッコイイ! 樹の神でこだま……かっこいい! あ、こだまってあれかな、もののけ姫のカタカタしてる白黒の可愛いやつ? 私もののけ姫大好きだからそうならなんか嬉しい!」
「あれは木霊だから漢字が違うけど、読み方と意味は一緒だね。樹の神様とか精霊、って意味らしいよ」
「おー、やっぱりカッコいい!!! でもでも、私は親愛を込めて佑司君、って呼ばせてもらうよ……あ、私の名前は
パチンと手を叩いて懇願するような上目遣いで言ってきて⋯⋯めっちゃ可愛いけど流石にいきなり名前は⋯⋯
「⋯⋯よろしくね、工藤さん」
「むー、名前で呼んでくれていいのに……これから末永くよろしくね、佑司君! クラスメイトとしても、友達としても!」
ちょっと残念そうにほっぺを膨らませながら、でも嬉しそうな笑顔で工藤さんは僕に向かって「友達」と言ってくれる。
入学式が始まる前から女の子の友達が出来た、しかも可愛いくてフレンドリーで話しやすい……なんと幸先のいい高校生活のスタートなんだ!
「えへへ、佑司君、佑司君! 佑司君!」
「あはは、名前呼びすぎ工藤さん……ふぅー」
……ちょっとだけ心臓には悪いけど。
工藤さん声も顔もめっちゃ可愛いし、それに喜ぶたびに揺れる胸もぽよよん大きく柔らかそうで……名前呼びのインパクトも最強でこの人は強い!
☆
「ねえねえ、佑司君。佑司君はどこの中学校出身? 私は海原中学校!」
先生が入学式の案内をするまでまだ時間があるみたいで、もう少しめっちゃ積極的可愛い工藤さんとお話しタイム、話題はテンプレ中学校の話。
この学校は私立だから色々な中学校から人が集まってくる……ちょっと照れちゃうけど、でも工藤さんと仲良くするためにたくさん話しましょう!
「海原って結構遠いよね? というか県またいでる? あ、僕は千川中学!」
「ううん、ギリギリ同じ県だよ! まあ遠いから電車通学にはなるんですけど……って千川中学ってあれだよね! 去年野球で地区大会出てたよね!」
「お、詳しいね!」
「ふふ~ん、そうでしょ! だって私中学の時野球部でしたもん……あ、もしかして佑司君も野球部だった?」
「うん、僕も野球部!」
「おー、本当! すごいね、部活も一緒だ! 守備位置はどこだったの?」
「ランコー」
「え……佑司君ってそう言う……わ、私は否定しないし、別にいいけど、でも女の子にそう言うのはちょっと……私はその、祐司君とだけが⋯⋯」
僕の言葉にささーっと身体を後ろに引いて少し困惑の表情を浮かべる工藤さん。
いや、野球部なら意味わかるでしょ⋯⋯て言うかいきなり下ネタは言わないよ、そんな表情しないで、余計に照れちゃう!
「ふふっ、ランナーコーチだよね? ちょっとからかったってみました、佑司君可愛いから! それじゃあ佑司君は中学の時はスーパーサブ的な感じだったの? チームのブレイン的な!」
「可愛いはやめて、からかわないで。それにそんな大層なキャラじゃないよ」
「でも頭脳派なんでしょ、佑司君賢そうだし! 高校でも野球するの?」
「頭脳というよりは気持ちとか声で野球するタイプだったかな? 高校では野球はしないよ、この学校の野球部強いし」
僕の友達に野球推薦でこの学校に入った人もいるし、この学校は県内でも有数の野球の強豪校として有名だ。
だから僕みたいに声出し担当ムードメーカで、隠し玉とかずるいことにしか能がない人間じゃこの学校の練習にはついていけないと思うし。
だから高校では僕は帰宅部極めます!
「えー、それは残念! 見たかったな、佑司君の野球する姿、それに応援も……ま、それは一回置いといて佑司君! 話しは変わるけど佑司君は坂道グループは好き?」
少し残念そうにぷー、っと息を吐いた工藤さんが一気に話題を180度転換する。
坂道か……結構好きです!
「うん、好きだよ! 僕は乃木坂が一番かな、去年の誕生日友達にCD貰ったし」
「おー、ホント! 私も乃木坂が一番好きだよ、ホント気が合うね私たち! 嬉しいよ、同士がいて!!!」
そうテンション高めに言った工藤さんは嬉しそうに僕の手を両手でギュッと握ってきて……!?
「ちょ、どどどどうしたの工藤さん!? きゅ、急に手なんか握って!?」
「だって嬉しいんだもん、佑司君と出会えて! 気が合うし、それに乃木坂好きの同士だし! だからギュってしたの、仲良しの証で……えへへ、佑司君の手、あったかいね」
「だからじゃなくて、その、えっと……は、恥ずかしいし……そう言う事も言わないでよ……」
別に女の子と手を繋いだことはこれまでにも普通にあるけど、でも工藤さんとは初対面だし、それに僕がこれまでにあった女の子の中でもトップレベルに可愛いし!
だから、急に手とか握られるとすごく緊張するって言うか、柔くて甘くて何だかすごく……!
「もー、そんな顔赤くならないでよ、こっちまで恥ずかしくなるじゃん! 友達で同士なんだからこれくらいもーまんたいだよ!」
「いや、でも……」
「そんなに恥ずかしがらないでよ、友達なんだから! そうだ佑司君、乃木坂好きならまたライブとか握手会とか一緒に行こうよ!」
「え、握手会? そ、それは良いけど、早く……」
握手会とかより、今の方がすごく緊張してるよ!
めっちゃギュって手握られてるし、それにくりくり可愛い目もぱっちり合ってるし、興奮した息遣いも身近に感じるし……心臓がバクバク爆音なってる!
でもそんな僕の様子も意に介さず、手を握ったままの工藤さんは顔をパッとさらに明るくする。
「よっしゃ! それじゃあチケット当たったら一緒にライブ行こうね! ライブ行って~、ついでに一緒に観光してお泊まりして〜……えへへ、楽しみだね、佑司君!」
「う、うん、そうだね!」
「もう、そんな照れないでよ佑司く~ん! ほれほれ~、ほれほれ~……ふふふっ、佑司君のほっぺもちもちだね~!」
「ちょ、やめてよ工藤さん……か、からかわないで⋯⋯」
「えへへ、佑司君〜! 佑司君、佑司君!」
「おうおう、朝からイチャイチャしてんね! もう彼女できたのか、佑司?」
楽しそうな工藤さんのほっぺ攻撃を何とか避けようとしていると、頭の上から名前を呼ぶ声と大柄な影が視界に入る。
「佑司君、この人誰? 友達?」
「うん、
攻撃はやめたけど、相変わらず手を握ったままの工藤さんにドギマギしながらそう答える。
竜馬とは別の中学だけど、受験の時席が隣でなりゆきで一緒にお昼ご飯も食べて、なんやかんやで連絡先交換して仲良くなった。ちなみに柔道部で黒帯、身長182㎝体重92キロですごく大きくて女好き。
「ご紹介にお預かりしたようですが、私は瀬川竜馬です。以後お見知りおきを、仲良くしてね……それで工藤さん、だっけ? 佑司の彼女なの?」
そんな竜馬は工藤さんに向かってペコっと頭を下げると、最後に急に爆弾投下。
違う違う、僕たち初対面!
「ヤダな~、瀬川君、私と佑司君はまだ付き合ってないよ! でももう、仲良しの友達だけどね! ね、佑司君? まだ付き合ってないけど仲良しの友達だよね?」
ひらひらと片手を外して手を振って、もう一度両手でギュッと握って僕の方をきゅーっと見つめて……もうこの話は終わりにしたい!
「う、うん、そうだね……それより竜馬! お前瀬川だけど、席どこ? もしかして僕の後ろだったりする? まだ席空いてるし、もしかしてここ?」
「ちょっと怪しいけどな~! まぁ、一回信じるとして、俺の席はもう一個前、先生の目の前の最悪の席だぜ!」
「あ、そうなんだ」
「そうそう! くー、残念! 佑司の後ろだったら色々ちょっかいかけれたんだけどな!」
心底残念そうにそう言う竜馬。
いたずらは嫌だけど、後ろにいてくれた方が良かったな……あれ? それじゃあ後ろの席は誰なんだ? ネームプレートは……斉川綾乃、女の子かな?
「あれ、瀬川君一番前なんだ。それなら私の親友の一個前の席だね」
僕が後ろの席のネームプレートを読んでいると、相変わらず手を握った工藤さんがあまり興味なさそうに竜馬にそう言う⋯⋯僕の手、汗とか大丈夫かな?
「お、そうか! 工藤さんの親友ならきっと可愛いんだろうな、どんなこだい?」
「あはは、
「なるほど、電波は俺も大歓迎!」
そう言うとルンルンで席に戻る竜馬。
竜馬も相変わらずだな……そして工藤さんそろそろ離してください、もう嬉し恥ずかし限界です!
「だーめ、離さない! 仲良しの証だし、それに佑司君の手温かいから離したくないの! ね、良いでしょ佑司君? 私がぎゅー、ってしてても良いでしょ?」
「いや、その……」
「おーい、みんな席着け! 入学式始まるぞ、いったん着席! 先に先生だけ軽く自己紹介しとく、村木だ、よろしく!」
工藤さんの攻撃にあわあわしていると助け船を出すように大柄な男の先生が教室に入ってくる。
それと同時に金髪の女の子も……あれが工藤さんの親友かな? そして竜馬は一瞬でフラれたな?
「ん~、もっと堪能したかったけど残念……あ、それとも手を繋いで入学式入場する?」
僕から名残惜しそうに手を離した工藤さんがいたずらな口元でニヤッと聞いてくる。
「変なこと言わないで、そんなことしたら怒られちゃう」
「でもでも、佑司のお母さんとかには喜ばれるかも? 私のお母さんも喜ぶかも?」
「逆に心配するよ、いきなりそんなのだったら。それより前むいた方が良いよ、先生に怒られちゃうかもだよ」
「もー、つれないなぁ、佑司君は! でもそうだね、残念だけど前むこう!」
少し残念そうにそう言って、工藤さんもクルリと前を向く。
良かった、助かった……入学式までそんなことしてたら心臓のスペアが必要になるころだった……あれ、後ろの席の子まだ来てない? 遅刻かな?
後ろの人とも仲良くなりたいんだけど!
「姉ちゃん、学校! 入学式!」
「⋯⋯やだ、行きたくない。楽しくないもん」
「もー! 漫画みたいな青春送るんじゃないん!?」
「⋯⋯無理だよ、私じゃ⋯⋯人と話せないし、無理させちゃうし⋯⋯私じゃ無理」
★★★
感想や☆やフォローなどしていただけると嬉しいです!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます