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カルアの蹴ったボールが、ポールの間を過ぎていく。7点が入って、19-15。残りは1分。キックでは覆らない差。
短いキックが蹴られた。確保したかったが、それを手にしたのは近堂だった。手につかずお手玉するが、何とか抱え込む。そこにフォワード陣が集まって、モールを組んだ。前進するためではない、時間を稼ぐためのモール。
宮理にとって、押し返すのは目的ではない。だが、モールは動いている限り組まれ続ける。なんとか動きを止めて、ボールを外に出さねばならない。
二回、動きが止まった瞬間。近堂からテイラーに、そしてテイラーからカルアにボールが渡った。カルアがボールを蹴る。レフェリーが時計を見た。ボールが、観客席に飛び込む。レフェリーが笛を吹きながら、手を挙げた。
県大会決勝戦 試合終了
総合先端未来創世高校19-15宮理高校
宝田が泣いていた。
それを金田は、じっと見ていた。
数分前のトライは、自分でも信じられないようなものだった。おそらくここにいる多くの人々も、予想していなかっただろう。
自分と、カルアを除いては。
ある日の部活後。黙々とカルアはキックを繰り返していた。ポールの外をかすめていくシュートに、最初は調子が悪いのかと思った。しかしカルアは、何度も何度も、ポールの近くにボールを蹴り続けていた。
狙っているのだ。
それが分かったとて、目的はわからなかった。
一週間後、カルアはやはり黙々とキックを続けていた。そしてボールが、ポールに当たるようになっていた。ポールから跳ね返ってきたボールは、インフィールドに転がった。ルール上、プレーは続く。
狙っていたのは、これか。
ポールに当てて跳ね返ったボールをキャッチする。そんなことは、作戦の内に含めようと誰も思わない。まず不可能だからだ。だからこそカルアも、誰にも言わずにいたのだろう。
それを、一番大事な場面で実行した。誰かが走ると信じて。もしかしたら、自分が追いつくのだと信じて。
これまでまったく見たことのないタイプの選手だよ。金田は思った。
花園か。ようやく実感がわいてきた。俺たちは、優勝したんだ。
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