第4話
紙に絵を描く。
今、欲しい物……。
サラサラと描いて行く。
「……これは、コカトリス?」
ニワトリを描いたんだけど……、黙っていよう。
「あ、そんなに大きくなくてもいいんですけどね。こいつの卵が欲しいんです」
「ふむ……。卵か……。説明書きも入れて貰える? 市場の人に分かるように」
説明書き……?
私が、卵を欲しているという、説明か……。
どう書くかな。
私は、悩んだ末に、主人公と吹き出しを追記した。
「これ!? わたし?」
「シーナさんは、こんなに若くないじゃないですか。私の想像の人物ですよ」
――ゴン
痛い突っ込みが来た。
まあ、シーナさんの若い頃を想像して書いたんだけどね。
それと、吹き出しに記入する。
『卵があれば、シーナお姉ちゃんのお店も、もっと料理を出せるのに……』
これで、漫画っぽくなったかな?
「ねえ、ユージ……。わざとじゃないよね?」
「なにがですか?」
「……私に妹はいないよ?」
「お店には、若い娘が来ていますよ? 特にオムライスの日とか」
「……」
プライパンで叩かれました。
拾ってくれて、仕事も住む場所も世話してくれた人だけど、暴力系美人なのが玉に瑕だ。
◇
次の日の朝。
シーナさんが、何時もの倍の卵を買って来た。
「どうしたんですか、これ?」
「昨日のうちにさ、冒険者ギルドに頼んだんだ。それで、ジャンヌが獲って来てくれた。シムルグの卵だ」
「おお、回復力のある魔物じゃないですか! それに常連のジャンヌさんか~」
「今日はなにを作る? 表のボードに書かないといけないんだ」
ここで、誰かが入って来た。
「ふぁ~。おはよう」
「あ、おはようございます。ジャンヌさん。卵ありがとうございます」
「……朝食にオムライスを作ってくれないかな? ユージのオムライスが食べたくて昨晩頑張ったんだ」
「了解です!」
「わたしとは、明らかに態度が違うね~」
シーナさんを無視して、私はオムライス作りに入った。
ジャンヌさんは、「美味しい」と言って全て平らげてから、冒険者ギルドに行ってしまった。
あの笑顔が見れただけで、今日はいい一日になった。
まだ朝だけどね。
「ユージ。今日はオムライスでいいね?」
「う~す。仕込みに入りますね」
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