第4話

 紙に絵を描く。

 今、欲しい物……。


 サラサラと描いて行く。


「……これは、コカトリス?」


 ニワトリを描いたんだけど……、黙っていよう。


「あ、そんなに大きくなくてもいいんですけどね。こいつの卵が欲しいんです」


「ふむ……。卵か……。説明書きも入れて貰える? 市場の人に分かるように」


 説明書き……?

 私が、卵を欲しているという、説明か……。

 どう書くかな。


 私は、悩んだ末に、主人公と吹き出しを追記した。


「これ!? わたし?」


「シーナさんは、こんなに若くないじゃないですか。私の想像の人物ですよ」


 ――ゴン


 痛い突っ込みが来た。

 まあ、シーナさんの若い頃を想像して書いたんだけどね。

 それと、吹き出しに記入する。


『卵があれば、シーナお姉ちゃんのお店も、もっと料理を出せるのに……』


 これで、漫画っぽくなったかな?


「ねえ、ユージ……。わざとじゃないよね?」


「なにがですか?」


「……私に妹はいないよ?」


「お店には、若い娘が来ていますよ? 特にオムライスの日とか」


「……」


 プライパンで叩かれました。

 拾ってくれて、仕事も住む場所も世話してくれた人だけど、暴力系美人なのが玉に瑕だ。





 次の日の朝。

 シーナさんが、何時もの倍の卵を買って来た。


「どうしたんですか、これ?」


「昨日のうちにさ、冒険者ギルドに頼んだんだ。それで、ジャンヌが獲って来てくれた。シムルグの卵だ」


「おお、回復力のある魔物じゃないですか! それに常連のジャンヌさんか~」


「今日はなにを作る? 表のボードに書かないといけないんだ」


 ここで、誰かが入って来た。


「ふぁ~。おはよう」


「あ、おはようございます。ジャンヌさん。卵ありがとうございます」


「……朝食にオムライスを作ってくれないかな? ユージのオムライスが食べたくて昨晩頑張ったんだ」


「了解です!」


「わたしとは、明らかに態度が違うね~」


 シーナさんを無視して、私はオムライス作りに入った。


 ジャンヌさんは、「美味しい」と言って全て平らげてから、冒険者ギルドに行ってしまった。

 あの笑顔が見れただけで、今日はいい一日になった。

 まだ朝だけどね。


「ユージ。今日はオムライスでいいね?」


「う~す。仕込みに入りますね」

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