第91話 俺はきっと忘れない 1
俄かに脱衣所内が騒がしくなった。
アリアが今日はいつも以上に色々あったなとしみじみ思い返している時であった。
後ろの騒ぎがそんなアリアの耳に入る。
(うん?Gでも出たのか?)
黒光りする、素早い動きで人間を翻弄し嘲笑うように逃げ去っていく奴。
何度、辛酸をなめさせられたか、思い返してもイライラしてくる、カサカサ走る奴。時たま、ブーンもある奴。
(あの野郎!こっちの世界にも居やがるのか!?)
異世界版G、果たしてどんな姿なのか、メラっと燃え上がる闘魂を内に宿し、男の俺の出番だなと、落ち着きをもって後ろに振り返っていった。そして見た、壁を。
(あれ、おかしいな。こんなところに衝立なんてあったか?)
壁、そう壁。シオンという大きな壁がアリアの視界一杯に聳え立っていた。
今アリアが見ている光景は、髪を降ろしたラフな格好のシオン。
メイド服の首元のボタンを外した鎖骨の辺りまで見える、楽な格好のシオンが、微笑みながら戸惑いもって見上げるアリアに声を掛けた。
「お嬢様、早く入浴のご準備を致しましょうね。今日はお嬢様に入浴後にプレゼントがあるんですよ」
優しく声を掛け終えると、アリアの肩に手を置いて、強制的に元の方向へと向き直らせていった。
その反転させられる中、何とかシオンの隙をつき、首を伸ばして後ろの光景を見ようとしたが、遂には異世界版Gの姿を拝むことが出来ずに、向き直らされて服を脱がされていったのであった。
(ああ、俺の活躍が!!Gを華麗に処理する、俺のカッコいい見せ場が~~!!)
静かになった脱衣所の中、アリアの逃がした、活躍の場を惜しむ心の声が空虚に響いていくのであった。
でも、ある意味では助かったアリアでもあった。
お嬢様がGを華麗に処理したら、果たして、前のアリアがそうすることが出来たであろうか、要らない疑問が生じる所であった。
チェイサー家メイドさん必修技能、早脱ぎ、早支度。
異物排除を済まし終えて、中途半端の状態だった入浴準備を目にも止まらぬ早業で完了させると、狂おしいほど愛おしい我らが主がメイド長に服を脱がされ、思わず感嘆のため息を零してしまう、美しい裸体を晒す姿を体感でじっくり、実際では数瞬拝んだ後、自分達の使命の為、大浴場内へと勇んで進んでいった。
メイドさん達に遅れる事ほんの数秒、まず本日の大捕り物の功労者、フウとセツが大浴場に入場してきた。
そうすると、すぐに先に入り口付近に集まっていたメイドさん達が、遠慮する2人を大浴場入り口正面の一番のお出迎えポイントに案内する。
完璧なアリアお迎えの位置に2人の案内を終えたメイドさん達一同は、フウとセツの両側に一列でずらりと並び、入り口からのお嬢様お出迎えロードを形成した。
自画自賛では足りない程の完璧な仕上がりに絶対の自信を浮かべたメイドさん達は、フウとセツに簡潔にこのお出迎えの趣旨を説明する。
それと、今夜の催し物の事も説明し、ファッションショーの他に、久しぶりに開催予定のお祝い事も詳しく述べていった。
それを聞かされ、自分達と同じように一度は沈み自分を責めようとしたフウとセツに、今まで出来なかった分だけ盛大にお祝いしようと、メイドさん達にとってアリアと同じぐらい大切で愛おしいフウとセツを皆で抱き締めて慰めていった。
一時は後悔で打ち萎れた表情であったフウとセツは、メイドさん達の温かな励ましもあって屈託のない表情へと変えて、周りのメイドさん達と一緒に精一杯の想いを込めて、アリア歓迎へと意識を向けていったのであった。
そこへ、丁度図ったかのようにシオンに連れられアリアが、ひたりと大浴場に足を踏み入れたのだった。
そして、驚きとも当惑とも取れる表情をアリアが浮かべ、一同を眺めていくのであった。
シオンに付いて大浴場に足を踏み入れたアリアは、その目の前に広がる光景に瞬時に固まった。否、強く忍耐の態勢に入ったのであった。
お風呂なので一般的ではあるのだが、ただアリア歴が浅い自分には非常に刺激的過ぎる、素肌を全て惜しげもなく晒したメイドさん達とフウとセツがアリアの目の前にずらりと並び立っている。
アリアは心底思った。良かった初日じゃなくてと。耐性がある程度ついた後でと。
鼻の奥がツンと疼く感じを覚えながら、アリアは目の前の光景に若干顔を伏せて、彼女達の足元を見つめながら、困惑しつつ訊ねていった。
「・・あの、皆さん、どうしたのですか?」
『昨夜、アリアお嬢様が皆で入るお風呂が楽しいと仰っていましたので、こうして、今日からは全員でお嬢様の入浴にご一緒させて頂くことに致しました』
躊躇いなく明瞭に自分達の意志を乗せた言葉を返した、メイドさん達。
そこにフウとセツも続いていく。
「やっぱり、ヒメちゃんとのお風呂の方が楽しいからね」
「ヒメ。姉、いやもうお姉ちゃんとして、妹と一緒に入らないなんて選択肢、完全にないでしょ!!」
フウは穏やかに微笑んで、セツは腰に手を当て堂々と胸を反らし自分の意思を答えたのであった。
そして、アリアの目の前にいる皆が本心からの気持ちを述べ終えるまで待っていたシオンが、そっとアリアに身体を寄せると、囁きかける様に声を掛けた。
「シオンもお嬢様とお風呂にご一緒でき、大変幸せでございます。これからも勝手かと思いますが、シオン共々お嬢様とご入浴をお供させて頂きます。もうアリアお嬢様が寂しさを感じられる暇がない程、いつでも笑顔満ちた空間を我々と一緒に作り上げていきましょうね」
「あたいもここに来た時は、お嬢と普通に入らせてもらうわ。1人より大勢で入った方が賑やかだし、楽しいしな!」
ローズが快活に笑い、シオンからアリアを分捕り豪快に抱き寄せ、ぐしゃぐしゃと頭を撫で回す。
ローズの柔らかな双丘が直に当たるも今は気にならず、伏せられていた視線を上げ、アリアは正面に顔を向けた。
見ないように伏せていた間も聞こえていた、皆の気持ち。
1人1人の温かな思いが込められた声が、アリアの中を深く深く、どこまでも伝わっていく。
もう異性の裸に気まずさ、恥ずかしさも感じられない程、満たすものが胸に広がっていく。
すると、突然、頬を二筋の雫が伝っていった。
1つは皆の純粋な思いに心が揺れ動かされた温かな雫。
もう1つは、アリアの意思とは関係なしに突然零れ始めた、温度が不明瞭の漠然とした雫。
アリアは二色の感情を顔に浮かべつつ、一糸纏わぬそこにいる皆の顔を見回していった。
指で零れる涙を拭いながら、心の中で呟いた。
(ダメだな。おっさんになると涙もろくなっちまう)
微苦笑を浮かべ、けれども、微笑の方に比重がやや傾いた笑みで、そっと口を開けて言葉を紡いだ。
「わたくしの何気ない呟きからこうしてわたくしの為に実行してくださり、ありがとうございます。わたくし、皆と入れるお風呂が今日からもっと・・もっと楽しいものとなりました。ありがとう、皆!!」
紡ぎ終えたアリアの表情は純粋な喜びと感謝に溢れ、そこに苦笑の入る余地はなかった。
(独り暮らしの冷たい風呂よりも、こんなにアリアの為に尽くしてくれる、家族との風呂の方が何倍も暖かくて、素晴らしい風呂になるよな!!)
依然として二種類の涙が流れているが指でそれを拭うと、アリアは茜色の夕日が綺麗に反射する湯気の中、シオン達と一緒にお屋敷にいてくれる皆の中に歩いて行った。
片目からは拭った後にも、しばらく温度不明瞭の涙が零れ落ちていたのだった。
アリアの涙に気付いていたメイドさん達とシオン、ローズ、フウにセツ、それと今まで何処かに行っていたスイに一頻り、優しく宥めてもらった後、すっかり涙が引いたアリアは、今日一日の頑張った疲れと汚れを落とす為に、洗い場へと向かった。
洗い場の椅子に座ると、その両隣をフウとセツが素早く取った。
両隣を少女に囲われ、事案にならないかと少々ハラハラなアリアの後ろでは、ローズがシオンを押し退け、先程の宣言通りに自分の店に帰る前の、最後の頼みの髪洗いを始めていった。
シオンが洗う時とはまた違う、力強いが荒いという感じではなく、絶妙な加減で細かに、まるで髪の毛一本一本の調子を調べ、それに即した洗い方で、シャンプーを使い丁寧に汚れを落としていく。その上、ただ洗うではなく、これまた絶妙な力加減で頭皮への刺激を加えていくのであった。
さすが本職の美容師さんだなと大いに感心し、鏡に映るローズの手元から目が離せなくなる、アリア。
シャンプーが終わり、トリートメント、コンディショナーに工程が移ろうとした時、アリアはいつもとは違う香りに気付いて、思わずローズの手元に視線を向けていた。
そこには、シャンプーからトリートメント、コンディショナーに至るまで、普段シオンが使っている品物とは違う何処かお洒落な色合いの品々が並んでいた。
「柔らかな香りがしますね。これはローズが持ってきたのですか?」
好奇心が抑えられず、そう訊ねると、ローズがにっこり微笑んで嬉しそうに口を開いていった。
「お、分かってくれたか!これはあたいがお嬢達の為に持ってきた、とっておきの逸品だぜ!ここぞという場合に使う特別品なんだよ!お嬢が気付いてくれて、あたい嬉しいぜ!」
喜びが表情以外にも髪を洗う指使いにも現れ、生き生きと髪の上を踊ってゆく。
そんなローズの言葉に隣に座っていたフウとセツが瞬時に反応をした。
2人はそろって元気な声でローズに言葉を掛けた。
「ローズさん、わたしもヒメちゃんと同じように洗ってほしいです!」
「私も私も!ヒメに使ったシャンプー、リンスで洗って!洗って!」
「おうよ、ちょっと待ってな。お嬢が終わったらすぐに洗ってやるからな」
にっこりご満悦の表情で、フウとセツに答える。
大入りに一層嬉しそうに、ローズがやる気を漲らせて手元に意識を集中させていく。
フウ達とローズの会話を耳聡く周りで聞いていたメイドさん達もその後には自分達の番が来るように、皆我先にとローズに声を掛けていった。
「次私!」
「次、次!」
「私も、私も、ローズさん!」
・・・・・。
競う様に掛けられる予約の声に、ローズは一旦アリアの洗髪の手を止めると、最後の仕上げに臨む前に、真顔で、けれども、口端は吊り上げて、周りの声に答えた。
「ああいいぜ」
ニヤリと何か面白そうな事を企んだ、子供の笑みをローズが浮かべる。
『やったー!タダでローズさんの洗髪を受けられるっ!!』
それにメイドさん達の中で歓喜が爆発した。
しかし、次の言葉がその歓喜を一瞬で消し飛ばした。
「但し、子供はタダ。大人は有料だけどな」
そう話すと同時に手のひらを天井に向けて差し出すと、何度か金を寄こせと招いた。
メイドさん達のブーイングが大浴場内に広がるが、ローズは口端を面白そうに吊り上げるだけで、抗議を涼しげに受け流していった。
暫く騒いでいたメイドさん達だが、端でひっそりと息を殺して様子を窺っていたグリムが悪賢く笑みを浮かべて脱衣所に出て行ったのを確認すると、『あっ!』と一斉に抜け駆けに声を発する。
そして、ドドドドドと雪崩と勘違いしそうな音を残し全員が脱衣所に消えていった。
「よし!これでしばらく時間を稼げるな!」
計算通りと、にひっと笑みを浮かべると、ローズは中断していたアリアの洗髪の仕上げに取り掛かっていった。
でも、その前に皆が消えていった脱衣所へのドアを見つめつつ呟いた。
「有料は冗談だけどな!わはははは~」
流石に全員を一気にやるのは骨が折れるので、アリア達の後にワンクッションを挟みたいための方便であった。
湯船にお湯が注がれる音のみが響く静かな大浴場の中、ローズが再びアリアの髪を洗う作業の、最後の仕上げに取り掛かっていった。
手を動かして、コンディショナーを満遍なく髪に馴染ませていく。
今日もローズの顔はご機嫌そのもの。
手に感じる感触は、他に比肩するものがない程、素直に指の間を流れていく。
ここまでの極上の髪質は思い浮かべても、ただアリアのみ。それ程に、羨ましくもあり、こうなりたいとの目指すべき目標。
同じ女性としても、うっとりしてしまうものである。
「はぁ~」
だからか、自然、吐息が口から零れる。
うっとり見惚れながらも、コンディショナーを塗り込め終えたローズは、桶に熱すぎず冷たすぎず程よい温度のお湯を溜めた。
「お嬢、お湯掛けるからな、しっかり目を瞑っていろよな」
「大丈夫ですよ、ローズ」
アリアの返事を聞くと、溜めたお湯をゆっくり丁寧に掛け始めた。
付けたコンディショナーが残らないよう細心の注意で、流していく。
流れるお湯が背中を流れ落ちていく度に、こそばゆい感じを覚え、アリアの口からくすくすと、小さな笑い声が零れる。
ローズもそれにクスリと零す。
その後、ローズは一旦綻んだ口元を戻すと、アリアの背中に流れる銀色の髪を手のひらで掬う。
そして、しみじみと水を綺麗に流すアリアの髪を見つめながら、ローズは口を開いた。
「・・・お嬢」
「はい、どうしました?」
「お嬢の髪は本当に綺麗だよな」
「ありがとうございます?」
突然髪を褒められ、アリアは何とも言えない表情で困惑する。
「ああ違う違う。別に皮肉とかの意味はないぞ。・・・本当に綺麗な髪でな。美容師としてこんな唯一無二の質感を誇る髪を扱えることが冥利に尽きるってなだけだ」
アリアの返事のニュアンスから、疑問を感じたローズが釈明する。
そして、アリアの顔から疑問が消えたことを確認したローズは、手のひらに乗せたままの銀色の髪を感慨深げにじっくりと見つめた後、数瞬黙考してから、思い切って口を開いた。
「なぁお嬢、こんなに綺麗な髪なんだ。これからも、こいつらを大切に扱ってやってくれ」
そう言うローズの表情は娘達を思う母親の慈しみ溢れるものであった。
アリアもようやく目が開けられて、正面の鏡に映るその心底から自分の髪を想ってくれている様子を見て、こっちも誠意を込めてはっきりと返答を口にしていった。
「勿論ですよ、ローズ。わたくし、ローズと・・・」
一旦言葉を止め、今までずっと黙ったままローズを羨ましく据わった目で病的に凝視し続けているシオンに、鏡越しに視線を合わせてから続きを言葉にしていった。
「・・・ローズとシオン、それにこの髪を好いて下さっている皆の為に、今まで以上に大切にお手入れを施していきます!」
そう言い切るアリアに、鏡の中のシオンが涙をドバっと溢れさせて独り感激に打ち震えていた。
「だから、安心して下さい。今度お手入れにお越し下さった際には、今日よりも素晴らしい髪にして、ローズを驚かせてしまいますね!」
(まあ、髪の手入れやらなんやらに関しては全部シオンに丸投げするがな。任せたぜ、シオン)
うわべだけは立派に締めると、朗らかに微笑んだ。
「・・・そうか・・・」
ローズは一言だけ呟くと静かに微笑んでいった。
スイは穏やかに微笑みながら、アリア達を見守っていた。
今、目の前で繰り広げられていたのはアリアが自身の髪に関心を持つレディーとしての成長。これから先、貴族社会で生きていく為には、自身をより良く飾り、他の貴族達よりも目立つ存在になることが大切。見栄と外聞をなによりも重んじるばかげ、とと、伝統の風潮。
スイはつい漏れそうになった思考をしれっと修正し、アリアとフウとセツを少々深い笑みで見つめていった。
(頑張ってください、お嬢様。私の幼馴染の誰かさんは、昔は手に負えないヤンチャから、今は外では気品と威厳を備えた見栄を演じていますから。同じ血を引くお嬢様ならきっと出来るようになりますよ。まあ外だけではなのが、玉に瑕なんですが、はぁ~。家の中でも節度を弁えられるようになれれば、私としても頭痛を覚えずに平穏に暮らせるのですがね)
アリアを応援しつつ、最後は昔からの腐れ縁、アリアのお母さんの愚痴を零していた。
でもそれ程嫌な思い出ではないのか、在りし日に思いを馳せ、柔和な笑みを浮かべていた。
ほんの少し感傷に染まった後、スイはアリア達に合流する前の事を思い出していった。
スイは1人お屋敷の正面入り口でテクノ達を見送っていた。
シアンとクロムが馬車に乗り込み、後はテクノが馬車に乗るのを待って出発する所である。
スイはいつものように、馬車が出発したら深くお辞儀をし、馬車が正門から出るまで見送る予定でいた。
ところが、スイが馬車を見つめて待つ中、テクノが馬車に乗らず、スイの下にやってきた。
スイは一切表情を変えず、テクノと相対した。
テクノが口を開く。
「スイ君」
「如何なさいましたか、テクノ先生?」
「少々心に留めておいてほしいことがあるんだけど、いいかい?」
はい、とスイから了承の返事を貰ったので、テクノが続きを語っていった。
「今回の検査ではアリアちゃんにどこも異常はなかった。見かけ上は健康そのものだね」
ふう、一つ息を吐き、間を開ける。
「だからか、もし毎日アリアちゃんを見ているお屋敷の皆で、少しでもアリアちゃんに違和感を覚えたら、すぐにボクに連絡を寄こしてほしい。まだ違和感の状態の内に、手を打ちたい。遠慮なんか一切いらない。ボクの大切な患者を守るのに、無駄な気遣いは無用だよ」
「了解致しました。皆に先生からの忠告として徹底させておきます」
了承の意を言葉と最敬意の礼で示す。
それらを確認すると、テクノはやっと安心できたという表情で、スイの下を離れ、クロムとシアンが待つ馬車に乗り込んでいった。
御者が扉を閉めた所から、馬車が最初は緩慢に、次第に軽快な、車輪が奏でる音が鳴り始める。と、突然、馬車の窓が開き、そこから上半身を目一杯乗り出してシアンが現れた。
そして、スイとお屋敷に向けて大きく手を振り始めたのである。
「バイバーーイ、スイちゃん、お屋敷の皆。それから、アリアちゃん、フウちゃん、セツちゃん」
子供の様な純粋なシアンの行動にスイは笑顔で答え、快くシアンを見送っていく。
「グリムーー!アリアちゃんとフウちゃんとセツちゃんをどっちの沼に引きずり込むかの勝負はまた、今度までお預けだからなーーー!!抜け駆けするなよーーーー!!!」
けれども、続くシアンの声にスイは何のことかをグリムからきっちり詰問しようと微笑の裏に決めたのであった。
そのまま、上半身を窓から出して遠ざかっていくシアンと馬車を見送っていく。
そして、スイはシアン達が乗った馬車が小さく、点になるまで見送り終えると、さっとその場で踵を返し、娘達が待つ大浴場まで足早に向かって行くのであった。
脳裏では、どのようにしてシアンの残した謎ワードをグリムから素直に自発的に喜んで聞き出すかの方法をあれこれと巡らしながら、夕日に照らされ影が差す正面入り口に笑みを刻んで消えていった。
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