7.深い 霧
「何もなかったね」
百合花がみんなに言う。
「おばあちゃんの話、やっぱり作り話だったんだ」
文乃がそう答えると
「よかった何もなくてやっぱりちょっと怖かったから」
夏南が言う。
「まあ、おおばあちゃんの話だったし、本当かどうかなんてわからなかったから確かめられて良かったよ」
美紅もそういった。
でも舞歌の心の中にはずっともやもやが居座っている。何だろう何かおかしいことになっている気がする。でも何も言えない。みんなの雰囲気にその違和感を口に出すことができないでいた。
考え込んでいる舞歌に美紅が
「どうしたの?舞歌、大丈夫。何か気になることでもあるの?」
「え?あっ何でもない何でもない」
「ならいいけど体調悪いなら言ってね」
「ありがとう。大丈夫だよ」
舞歌はきっと気のせいだと自分に言い聞かせるように美紅に答えた。
「確認できたし、帰ろうか」
もう興味をなくしてしまった文乃がみんなに向かっていう。
「そうしようっか。もう特に気になることないし~」
「うんうん、帰ろう。やっぱりちょっと怖いよ」
百合花と夏南も文乃の意見に同意する。
「そうだね。遅くならないうちに帰らないと親に怒られちゃうし確認できたし帰ろっか」
「うっうん、そうだよねもう帰ろうか」
美紅も舞歌も同意する。
「じゃあ、帰ろう」
文乃を先頭にみんなが歩き始める。
何となく不安だ。でも何もないんだと言い聞かせながら舞歌は歩き始めた。まさかこの時の違和感が本当になるなんて思いもせずに…。
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「わかりやすい道でよかったね」
「本当。迷子にならなくていいよね」
「早く帰って本の続き読みたい」
「文乃はもうおおばあちゃんの話に興味をなくしている…」
「…」
みんなで話しながら入り口をめざしていた。
「あれ、なんか白くなってきてない?」
百合花が異変に気が付く。
「霧かな…。こんなところで霧なんて見たことないけど」
美紅が言う。
「ねえ、みんな。なんか前が見えなくなってきたんだけど道も…」
「えっ。なんかおかしいよ。なんか怖いよ」
みんなが口々に話しているのを聞きながら舞歌は何かが起こっているのだと感じていた。
そうこうしている間に辺りは真っ白になり前も見えず後ろも見えない。でもなぜか5人の周りだけは霧がない。しかし前も後ろも見えない。下手に動けないのだ。
「みんなとにかく固まって。動き回るのはよくないよ」
美紅は4人に向かって言った。
確かに動き回るのはよくない。でも…。
5人の心には大きな大きな『恐怖』と『不安』と『絶望』で塗りつぶされていくのを感じていた。
「おやおや、どうやら始めたようだ。さて仕方ないそういう『約束』だからね。行くとするかね仲間たちよ」
そう言うと他の4人も顔を見合わせてうなずく。
そして5人はドアを開けた。
「では行こう」
5人はの姿は消えていた。
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