6. ヴェイグ
「おいデブ、奴らはどうなった?」
サンスリン学園から少し離れた貴族街。
その中にある中規模の屋敷の中で、赤毛の男が女を侍らせソファーに腰かけていた。
赤毛男の名はヴェイグ。
ドラポン達の因縁の相手だ。
「ブヒヒ、雑魚を仲間に入れたブヒ」
質問に答えたのはヴェイグからかなり離れたところの床に座る肥満体型の男。
ヴェイグのチームの一員。
「ほぅ、衆目に無様な姿を晒す方を選んだか。んで、酔狂なヤツは何処のどいつだ?」
「ブヒヒ、『仲間想い』でブヒ」
「『仲間想い』だぁ? ああ、あいつか。あんなクソ雑魚なんか仲間に入れても意味ねーのにな」
ヴェイグもまたフレンのことを知っていたようだ。
フレンを馬鹿にするヴェイグに、しなだれかかっていた女が言葉をかける。
彼女はまるで下着かと思える程に薄着であり、妖艶な笑みを浮かべている。
「そんなこと言って、ヴェイグがそうなるように仕向けたんじゃない」
「おいおい、人聞きの悪い事を言うなよ。俺はただ、皆に『お願い』しただけだぞ」
「皆?」
「そう、皆だ。俺が『お願い』する価値のある皆だ。はっはっはっはっ!」
ヴェイグは敢えて極端に弱い生徒達に圧力をかけなかった。
仕方なく雑魚を加入させた彼女達をフルボッコにしてわからせてやりたかったからだ。
「ねぇヴェイグ。本当に大丈夫よね?」
「ああ? 心配すんなって。万が一すらあり得ねーよ」
ヴェイグには彼女達に必ず勝てるという確信があった。
唯一の懸念は彼女達の五人目。
極端に弱い生徒だとしても、何かの拍子に覚醒するとも限らない。
ゆえにそうなった場合でも勝ちきれる策を用意した。
「安心して待ってな。お前の大好きな第六位がすぐに手に入るからよ」
「うふふ、ありがとう。楽しみだわ」
「でもすぐに壊すなよ。新しい
「分かってるわよ。それにすぐに壊すなんて勿体ないわ。じっくりねっとりと
ペロリと唇を舐める彼女の目は据わっていた。
その狂った姿がヴェイグの好みであり、思わず腰を強く抱き寄せた。
「やん」
女の柔らかな感触を楽しみつつ、ヴェイグはチラリと机の上の物体を見る。
「まったく、呪具様々だな。こんな便利なものを禁止するとか、意味が分からねーぜ」
「本当よね。もっとあれば良いのに」
「そう言うな。一個だけでも用意するの大変だったんだからな」
禁呪契約を発動するには、専用の呪具が必要である。
そして呪具と闇魔法のスキルがあれば誰でも発動することが出来る。
呪具は長くて太い紐のようなもので、等間隔に黒い宝石がいくつも結び付けられている。
それを契約者の周りに円状に配置し、全ての宝石に闇魔法で魔力を篭めた状態で契約をする。
学園内には絨毯が敷かれている部屋がいくつかあり、ヴェイグはその絨毯の下に呪具を設置した。
そしてドラポン達をその場におびき寄せて煽り、練習試合という名の契約を持ちかけたのだ。
「それにしてもあいつら本当に愚かだな。俺達が勝ったら言う事を聞け、お前達が勝ったら謝罪でもなんでもしてやろう。こんな馬鹿な話に食いつくやつなんていないぜ」
「ふふ、でもそんな馬鹿な女が好きなんでしょ?」
「いいや、俺が好きなのはお前みたいな賢い女さ。馬鹿な女はペットが似合ってる。最初からそう言ってるだろ」
獣人は所詮、人間のペットに過ぎない。
ヴェイグはそうやってドラポンを煽り続けていた。
俺のペットになれと。
それが獣人の役目だと。
獣人は誇り高く強い存在なのだと主張し、愛玩動物扱いを否定するドラポンにとって最も認めたくない言葉で煽った。
全ては罠にはめて、ドラポンを手に入れるため。
しかもドラポンは他の美少女達と仲が良かった。
それゆえ、せっかくなので全員頂こうと画策した。
女子供はぬいぐるみでも弄ってな。
そんなに淫乱メイドになりたいなら可愛がってやるぜ。
偶然居合わせた第六位が彼女達の肩を持ったのは、嬉しいハプニングだったが。
「あのメイドや第六位あたりは好みなんだがな」
「ちょっと、乗り換える気?」
「はは、俺に
「良かった。あの女は私のモノなんだからね」
「おいおい、心配するのはそっちかよ。ったく、女ってのはこえーな」
ドルチェに関しては胸は大きいがロリには興味が無いので、
「まぁ、怖くない女共にせいぜい楽しませてもらおうか。女に生まれたことを後悔させて……いや心の底から喜ばせてやるぜ」
「あら、私は後悔させるつもりよ」
「だからこえーって。はっはっはっはっ」
「うふふふ」
ドラポン達が負けた場合、彼女達は自主退学を命じられてこの屋敷に来ることになるだろう。
そしてそのまま行方不明となり、闇の中で永遠の地獄を味わい続けることになる。
心も体も、何もかもがヴェイグ達に奪われてしまうのだから。
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