戦闘司祭アルバート・ノックス

アキ AYAKA

第1話 プロローグ

 ○


「アルバート・ノックス」

「はい」

 名前が呼ばれ、私は祈りの体勢から立ち上がり、所長の下に向かう。

 私以外に祈りの体勢でいる者は四人。

 辛い訓練を共に乗り越え、挫けなかった者達だ。

 初めは二十人。適性を認められ訓練を開始したが、縋るだけの者達は早々に去った。

 自らの芯を持っていた者も苦しさから別の道を目指す為、去った。

 今日は私達にとって特別な日だ。

 訓練を終え、叙任されるのだ。

 『宣教師』教会の勢力圏ではそう呼ばれる者達の一人に私達がなるのだ。

「この者はノックス孤児院の出だ。幼き頃より教会の仕事を手伝い、二十歳にして戦闘司祭となる。この三丁の銃が君を助けてくるだろう」

 叙任式の慣例に従い、宣教師の戦闘装備である二丁の銃と一丁の護身用銃を渡される。他の装備は孤児院に届けられているだろう。


「戦闘司祭として、地教会員として誇れる様努めます」

「ああ」


 ベルトに掛けたホルスターへ銃を収め、四人の下まで戻って祈りの体勢を取る。


「明日、君達はこの町から旅立つ。清書にも書かれているように、出来る時に別れを惜しみなさい。今日悲しみ、明日笑って旅立つのです。皆さんの旅立ちに幸多からん事を」


 そう言って所長は私達に顔を見せずに去って行った。

 叙任式という事で来ていた司教達も一人を残し帰っていく。


「皆、出来ればまた会えるといいな」

「ああ、お互い頑張ろう」

「お疲れ様」

「じゃあな、皆」

「それじゃあ、また」


 お互い好き放題言って、叙任された戦闘司祭達は帰路に就く。

 皆早く帰りたいのだ、もちろん私も。


「アル、他の子達とのお別れは、あれでよかったのか?」

「はい、院長。また会えなくても、悔いないほど苦楽を共にしましたから」

「そうか、ならいいんだ。それと荷物は朝の内に届いているから、明日の用意をしたら子供達と遊んであげなさい。皆、顔には出さなかったが悲しんでいるからな」

「はい、もちろんです」

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