第26話 報酬確認の魔王候補

「うん、ん〜」


 完全復活!


 いやーなかなか寝た。あれ? 私って何をしてたっけ?

 頭が未だにボヤけて、何をしていたか思い出せない。

 こう言う時は、もう一度寝るのが一番だ。

 ふかふかのベットに再び体を落とすと、地面にゴロンと落ちた。


「すぴー」


 衝撃は不思議と感じず、そのまま冷たく硬いベットに意識を朦朧とさせる。

 すると、上から硬い何かが突進して来て、私に衝撃を与える。

 いきなりの衝撃により、意識は一気に覚醒した。

 覚醒した瞬間、何をしていたのかを思い出した。


「わ、私は何を。と、ヒノおはよう」


 ヒノが私の周りをクルクル回っている。可愛いので撫でていると、脳内に声が流れる。

 魔剣を持ってなくても、自称神の声は聞こえるようだ。


『おはよう』


「⋯⋯ちょっと待って」


『ん?』


「寝てるの見てた?」


『ああ』


「ふざけんなああああ!」


 これだと年中無休で毎秒神に見張られているって言うのか?

 それはもう神じゃなく紙なんよ。ペーパーなんよ。やってる事はそこまでの存在なんよ。

 ストーカーってレベルじゃないぞ?


『あ、安心してくれ。基本的に会話をする前にノイズが頭の中に走る筈だ。それまで見てない。許可が出た後、或いは緊急の時、或いはそちらから話しかけて来た時に見守るって言うルールが存在する。この様に迷宮に入った場合は別だがな』


「良かった。違う世界だと思うけど、過去の勇者ナイス」


 と、気を取り直して宝箱を開封する事にした。

 何回も死にかけたんだ。流石に報酬は良いよね?

 良くないと泣く。高校生が泣き叫ぶ。この私が超泣き叫ぶ。


「オープントレジャー」


 中に入っていたのはまず、鬼が使っていたような刀。

 かなり手に馴染む。魔剣よりもこっちの方が良い気がする。

 鞘から刀をゆっくりと引き抜くと、光を反射して来る。


「おおお」


 漆黒の刀身が私の姿を反射する。カッケー(小並感)


 ◆

 妖刀:ニグロ

 所有者:世羅

 スキル:【鬼炎刀】【鬼水刀】【鬼雷刀】【鬼風刀】【妖術操作補正】【妖術威力補正】【飛来刀】【遠隔操作】【鬼特攻】【破壊不可能】【破壊的人格】

 ◇


 なかなかに強い。うん。魔剣よりもあっさりとしているから全然強い。人格の方が怖いけど。

 自由に飛べないなら大丈夫かな? 内容的に、使っていれば問題ないし。

 血を操作して戦うって、なかなかに強い感じがするが、レベルが低いせいで弱い。

 神のサポートで扱いやすく成るようだが、契約内容的に、成る可く使いたくない。

 さて、次だ次。


「これは、浴衣? 着物? いや、袴か?」


 弓道の袴に似ている服だった。かなり黒い。

 ステータスを確認すると、まさかのこれはセットで一つの装備らしい。足袋もある。


 ◆

 黒鬼人の袴(♀)

 所有者:世羅

 スキル:【体力強化】【体力回復促進】【肉体再生】【鬼人適応】【肉体活性化】【肉体強化】【腕力強化】【速力強化】【空気抵抗】【破壊不可能】【身体保護】【魔力強化】【魔力回復促進】【火属性耐性】【水属性耐性】【雷属性耐性】【風属性耐性】

 ◇


「えぐいて」


 しかも、これ全部着ても、あまり違和感を感じない不思議。スキルだけならニグロよりも多い。

 むしろ動きやすい程だ。パンチの威力も上がっている気がする。

 スキル的に気のせいでは無い⋯⋯と思いたいよね。


「スキルって不思議」


『我々の力で人間の体を保護しているのだ。その保護している殻の力を扱える様にしたのがスキルだ』


「ん〜分からん」


 次に巻物である。仮面があったら良かった。

 こんな格好で戦っている姿を誰にも見られたくない。見られても良いように、仮面を買っておくのも良いかもしれない。


「妖術の巻物か」


 開くと、体の中に取り込まれる。スキルが増えたっぽい。

 私とヒノのステータスは後で確認として、最後に種が残っている。


「確認出来ない」


『こう言うのは、食べると筋肉とか骨とか強くなる。ゲームで言うところのステータス強化の種だな』


「食べるのか⋯⋯」


『あ、でもなんかそれ魔性の⋯⋯』


「はむ。もぐもぐ。うん。なかなか悪くない。チョコかな?」


『遅かったかぁ』


「ん? と、ステータス確認⋯⋯は?」


 ◆

 七瀬世羅

 レベル:93

 称号:【鬼神流後継者】【魔王候補】【勇者(仮)】

 スキル:【魔王候補者】【神器保有者】【魔剣保有者】【妖刀保有者】【魔王の種子Lv1】【勇者の覇気(仮)】【痛覚無効】【精神完全保護】【斬撃耐性Lv4】【模倣Lv3】【英霊の眼Lv4(仮)】【気配遮断Lv4】【投擲Lv4】【遠目Lv5】【暗視Lv10】【敏捷強化Lv4】【思考加速Lv4(仮)】

【闇属性魔法Lv3(仮)】【腐敗魔法Lv3(仮)】【火遁の術Lv1】【水遁の術Lv1】【雷遁の術Lv1】【風遁の術Lv1】【自己再生Lv4】【勇者の一撃Lv3(仮)】【鬼人化Lv3】

 ◇


 ◆

 神器:ヒノ(枕)

 所有者:七瀬世羅

 レベル:8

 称号:【魔王候補の枕】【魔性の枕】

 スキル:【破壊不可能】【自由移動】【自由意志】【回復魔法Lv8】【回復強化Lv8】【催眠術Lv8】【硬質化Lv8】【睡眠回復】【サイズ変化】【性質保護】【収納空間】【高速移動】【睡眠質向上】【魔王候補補佐】

 ◇


 お?お?お?


『なんか、勇者さん?』


「ま、魔王? なに、どゆこと?」


『さっきの種は魔王の種子だったのか。取り除く事は出来ん。魔王に成らないでくれよ』


「寧ろどうやって成るか教えて欲しい」


 鬼神流⋯⋯称号システムがあるのは知ってたけどさ。

 これ、もしかして。

 ヒノから刀を取り出して腰に鞘を添える。

 すると、不思議な事にその場所に固定される。

 意識して外そうとしたら外せる。

【飛来刀】の効果だろう。


「ふぅ」


 刀を一瞬で抜刀して数回振るう。


「⋯⋯ッ! やっぱり、あの鬼が使っていた剣術が、凄いスムーズに使える。元々使えてたように⋯⋯凄い」


『⋯⋯』


【魔王の種子】魔王への資格。力を解放すると、種を狙った魔物が襲って来る。感覚が鋭い魔物は解放してなくても襲って来る。

 解放すると魔法系の力が上昇する。


「デメリット大きいなおい」


【鬼人化】鬼人へと変わる事が出来る。妖術と身体能力が超上昇。その代わり、暴走気味に殺戮、破壊衝動に襲われる。


「ふむ。(仮)のスキルは使えないし詳細も見れないのか」


『契約するか?』


「しない。さっさと借しを返したいから、何か考えてね。と、ヒノ、少しだけ実験して行く。袴に変えて」


 多分、この装備のスキル的にこっちの方が良い。


「【鬼人化】!」


 額の中心が開いて、一本の角が伸びる。

 全身の筋肉が引き締まり、筋肉量が増える。それでも細身の体型は変わらない。

 瞳に少しだけ、紅色の炎が灯る。髪色が銀髪に変わり、瞳が紅色に染まる。袴が体に合わせて少しだけ変わる。模様も少し変わった。


「やっぱ、【精神完全保護】の効果で変な衝動に襲われないな。さて、どれだけ動けるかな」


 倍くらいの力は出せる。力に振り回されそうで、慣れるのには時間が掛かりそうだ。

 数分後には一気に脱力感が出て、立てなくなる。

 だいたい使えるのは10分か。十分間だけ使える切り札と考えておこう。


「魔法類のレベルは威力とかに影響ね」


『魔法を覚えるなら、魔法書を見ると良いぞ?』


「魔法は後々で、契約しないと使えないし。妖術は使えるね」


 頭の中に使い方がさっきから浮かんでいる。一回だけ使って、外に制服で出ようと思う。


「火遁、火の粉!」


 指先から小さな火が出て来て、それが少し離れた場所に飛んだ。

 強めの妖術を使うには、練習が必要だ。


「さて、出ますか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る