夏休み、嘘旅行日記
シャル青井
8月28日(日曜日)晴れ 安濃ダム
残念ながら今の自分には夏休み小説を書ける力もオモシロエピソードもないので、なんか適当に夏休みにあったことをでっち上げます。
これを書いている時点で昨日の話なんですが、ふと思い立ってちょっと車で出かけたんですよ。山の方まで。ほら、夏休みといえば山なので。
今の家から30分くらい行ったところにダムがあるので、まあなんだそれでも見に行くかとぼんやり車を走らせていました。
これまでそんな近くにありながらまともに見たこともないダムだったんですが、やはり本物は違いますね。
少し短めのトンネルを抜けると、そこに広がるのは鮮やかな緑の山々と、くすんだ緑の湖、そしてその中に君臨する灰色の巨大な人工物の姿。
不釣り合いでありながらどこか調和した風景にも見える。
その全てのスケールの規格外さに、人間のちっぽけさを思い知ります。
車を止めて、ダムの方へと歩いていきます。
歩いてみるとそこは本当に巨大で、人類はこんなものを造っているのかと今度はその力に畏怖を覚えます。
特に下流側を見下ろしたときの景色は圧巻で、そびえ立つ壁のむこうにポツンポツンと見える人里は、それだけでファンタジーの中にいるような気分にもなりますね。
そりゃあ進撃の巨人もう生まれるわけです。
ダムの真上はなにもないので、風が吹けば帽子がそのまま飛ばされてしまうような気持ちが湧き上がるのですが、この壁の向こうに帽子が飛んでいったら、それはそれで美しい一瞬が生まれるだろうなと思ったのも確かです。
どれだけの時間、帽子は宙を舞うのでしょうか。
大都会の中の高層ビルとはまた違う、ただここだけが高い世界から落ちていく帽子は、想像の中だけでも優雅で、それでいてどこか虚無感もまとった姿に思えます。
そして小さく遠くなり、やがて帽子は視認できなくなって、景色にはまた、ただただ全てが巨大なものだけが残るのです。
その情景だけで、ダムというものがいかに想像を絶する存在なのかがわかりますよね。
いいですよ、ダム。
お近くにある方は一度見に行かれてもいいのではないでしょうか。
とここまで書いてきましたが、上の文章、全部ウソです。
ダムの光景なんかはついさっき『なんか書かないと……』と思い、グーグルマップを見ながら書きました。
とはいえダムのロケーションなども滅茶苦茶で、別にトンネル抜けてすぐにダムは見えないし、ちゃんと見えるところならトンネルのないサイドの道に行ったほうがいいです。
あと、俺は帽子なんて被りません。
俺はイメージ重視で嘘の光景を描いている。
で、本当の昨日はというと、一日中引きこもって小倉ローカルなせいでなんとも言えないこなれていない空気の競馬中継スタジオに苦笑したり、キーンランドカップで応援しているトウシンマカオが負けるのを見てふて寝したり、書いた感想文を読み返してあーでもないこーでもないと唸っているだけでした。
でもまあ、俺の今年の夏なんてだいたいそんな感じでしたね。暑いし。
おわり
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