小説『烏に単は似合わない・烏は主を選ばない/阿部智里』

以前、『八咫烏シリーズ(第一部1~6)/阿部智里』と銘打ち、シリーズの第一部をまとめて語ったんですけどね。

足りない。

もうちょっといける。

布教としても足りない。

まだいける。


と、いうわけで、シリーズの第一作目と二作目を併せてご紹介。

いつもは別に布教とかあんまり考えてなくて、紹介ですらありません。

私のパッションが迸ってるだけです。ファイヤーしてるだけ。


しかし今回は明確に布教です。

なのでネタバレにもしっかり配慮しています。


買って。読んで。一緒に楽しもう!



作者の阿部智里さんは、早稲田大学在学中20歳の時に『烏に単は似合わない』で松本清張賞を受賞し商業デビューされています。

ちなみにこの松本清張賞は「ジャンルを問わぬ良質の長編エンターテインメント小説」を募集する公募の文学賞です。

誰でも出せます。

受賞作は文藝春秋から単行本として刊行されます。わあ! すごいや!


と、いう前振りを経て最初にシリーズの世界観をご紹介。


八咫烏やたがらすという人間ではない人たちが住まう、「山内やまうち」と呼ばれる世界のお話です。

八咫烏は人形じんけい鳥形ちょうけいに姿を変えることができます。人間とはちょっと違う。

山内は平安の王朝風の世界です。貴族と平民がいて、山内を統べる金烏宗家があり、その頂に立つ君主は金鳥きんうと呼ばれます。


内容としては和風ファンタジー。

ミステリー仕立てになっていることが多いかな。特に今回紹介する最初の二作は顕著ですね。

物語が進むにつれ少しずつ、謎が明らかになっていく仕様。


シリーズの一作目『からすひとえは似合わない』。

次の金鳥きんうである日嗣ひつぎ御子みこ奈月彦なづきひこの后選びのために集められた四人の姫君。

山内で権勢を誇る四家の趨勢を定める、姫君たちの壮絶な戦いが始まってしまうのです。

妃選びの舞台となる宮廷の「桜花宮おうかぐう」に集った四人の姫君たちですが、もちろんこれはお家同士の権力争いでもあります。奈月彦に選ばれるのはただ一人。お家を背負い、次期皇后の座を巡る女たちの戦いです。

権謀術数が渦巻き、陰謀が張り巡された華やかな宮廷絵巻。


少しも桜花宮に来やしねえ、日嗣の皇子である奈月彦。彼の奥さんの座を巡り、年頃の姫君たちがそれぞれの思惑とか恋とか愛とか陰謀とかに翻弄されて大変です。


で、二作目は『からすあるじを選ばない』。

次の金鳥きんうである日嗣ひつぎ御子みこ奈月彦なづきひこに仕えることになった田舎貴族の少年雪哉ゆきや

めちゃくちゃ不本意ながら不承不承仕えることになった若宮、奈月彦なづきひこは気難しいと噂される変わり者で「うつけ」と称されぶっちゃけ宮廷で疎まれています。次の君主なのに。

その若宮の兄、長束なつかは、日嗣ひつぎ御子みこの座を弟に譲り自身は出家していますが、優秀な人物で人望もある。

となると、当然権力争いが勃発します。


時を同じくして、宮廷では桜花宮に四人の姫が集められ、奈月彦の妃選びの真っ最中。

しかし肝心の奈月彦は、姫たちには会わず、桜花宮には寄り付かず、花街に通うといううつけっぷり。


そう、この二作目では、第一作目の裏側で何が行われていたのかが描かれているのです。


そういうわけなので、この二冊はセットで読まないと面白さが半減。

ええ、正しく半減です。

一作目がちょい口に合わなくてもとりあえず二作目は読んでください。それでも口に合わなかったらしょうがない。

でも一作目では終わらないで。それはあまりにも勿体ない。

セット販売して欲しいぐらいセットです。表裏です。むしろ本番は二作目だ!


ちなみに続くシリーズの主人公は一作目でモブ、二作目で主人公の雪哉ゆきやくんです。

この頃はかわいかったね……(遠い目)。


シリーズとしては三作目の『黄金の鳥』でようやく始まったな、って感じなので、できれば三作目まではなんとしてでも辿り着いて欲しい気持ちです。


もうこっから先はネタバレなしで語るとか無理なんで、この辺が引き際でしょうかね。


個性豊かな四人の姫君による宮廷絵巻。

そして、うつけの若宮奈月彦と、ぼんくら次男の雪哉。二人のやり取りをぜひ海馬に刻んでください。

そして続きを読んだ際には、砂糖漬けの金柑食べて咽び泣いて欲しい。


『烏に単は似合わない』『烏は主を選ばない』

共に文春文庫で発売中。シリーズは第二部に突入し以下続刊。

今回紹介した二作ともがコミカライズされてますし、2024年4月よりNHKで「烏は主を選ばない」のアニメ化もスタート。

今ノリに乗ってる八咫烏シリーズ、ぜひ一度お試しください!

とてもおすすめです!

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