小説『羊と鋼の森/宮下奈都』

とりあえず公式よりあらすじ。

「高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律の世界に魅せられた外村。

ピアノを愛する姉妹や先輩、恩師との交流を通じて、成長していく青年の姿を、温かく静謐な筆致で綴った感動作。」


ピアノの調律師になった青年のお話です。

ひたむきに、胸に熱い思いを秘めながらも淡々と、一歩ずつ着実に目指すところに向かう外村青年の姿に胸を打たれました。打たれます。打たれろ。


好きポイントは結構あるんですが、折角なので語りましょう。


まず、調律師として目指す音について、以下の一文が出てきます。

「少し甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」

小説家、原民喜の言葉の引用でもあるのですが、目指す「音」を敢えてこの言葉で語るわけです。どうよ。震えるわ。

私もこういう文章を書きたいです、ってのは完全に今は雑音ですね。はいはい黙りますぅ。


あとね、タイトルも好きです。

『羊と鋼の森』

羊の毛でできたフェルトのハンマーで、鋼の弦を叩いて音を出す、まんまピアノそのものを意味しています。

そして、調律師として生きる外村青年のこととも取れる。

とても静謐で荘厳な美しいタイトルだと思います。大好き。


ひたむきに目指すものを追い続ける外村青年。

同じく夢を目指す人にとっては色々と感じ入るものがあるのではないでしょうか。

そうですね、私は眩しくて目が潰れかけました。

才能を言い訳にはせず、淡々と努力し続けるわけですね。わかります。……わかります。




ピアノね、好きなんです。

私はピアノ自体、とても好きです。弾くのも聴くのも好き。

嗜む程度の腕前でしかありませんが、一応弾ける。実は今もピアノ教室に通っています。

ピアノ、いいよね。

管も弦も好きですが、ピアノほど華やかな楽器が他にあろうか。

なんせ「ひとりオーケストラ」とも呼ばれる楽器です。

大抵の楽器は単音しか出せないじゃない。ピアノは単独で複数の音を鳴らせるわけですよ。ピアノさんすごい!

あと、グランドピアノとかのあの中の動いてる様子とか、いいよね。なんかこう、いいよね。(語彙力)

いつかホテルのロビーとかにあるピアノにスッ……と近付いてさらっと幻想即興曲とか弾いて去る人を夢見ています。ぶっちゃけ無理そうだけど。


まあそんなわけでピアノの小説も好きなわけです。

音を文章にする、ってすごいよねえ。

文章から情景が浮かぶのももちろん凄いと思うんだけど、文章読んで脳内で音を再生するのもすごいよねえ。好きだわあ。

そして折角だからもう二作ほど、私が好きなピアノ小説を聞いていきなさいよ。


まず『蜜蜂と遠雷/恩田陸』

国際ピアノコンクールに舞台に、若きピアニスト四人の成長と葛藤を描く青春群像劇。ピアノコンクールの予選会から本選までを描くっていう、なかなか小説で難しいことするわね……っていう作品です。

まあいいから読みなさいよ。もう脳内でピアノ鳴り響くからさ。


そんでもう一作『革命前夜/須賀しのぶ』

以前にもどっかに書いた気がしないでもないけど、何度でも薦めましょう!

ドイツがベルリンの壁によって東西に分かれた冷戦時代。東ドイツの音楽学校へと留学したピアニストを志す日本人青年が主人公です。

二人の天才との出会い。冷戦下で革命にうっかり巻き込まれ。それでも真摯にピアノへと向き合い成長する青年の姿が描かれています。

たいへん熱い気持ちになるお薦めの一冊。いいから読んで。




はい、そんなわけで途中からなんか違うことになってましたが『羊と鋼の森』、おすすめです!

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