小説『英国幻視の少年たち(全6巻)/深沢仁』

さて、『英国幻視の少年たち』です。

ポプラ文庫から刊行。全六巻。

何回も読み返したくなるちょうどいいボリュームですね。何回でも読みましょう。


以下公式サイトより

「あることから逃れるようにイギリスに留学した日本人大学生、皆川海は、そこで妖精がらみの事件に巻き込まれ、ある青年と知り合う──。」


英国を舞台にした心温まるファンタジー小説です。

人には見えないものが見えてしまう日本人の皆川海(傷心)と、英国特別幻想取締報告局という機関で働く英国人のランス・ファーロング(無気力)という少年二人が、妖精にまつわる事件に巻き込まれたり、人の優しさに触れたり、ごはんを食べたりしながら少しずつ成長したり距離を縮めたり縮めなかったりするお話です。



好きです。



そう、とりあえずまず、好きです。


細かいことはいいんです。私は英国幻視の少年たちが大好きだ。

もうこれで言いたいことの八割は言った。概ね満足。


どこをどの角度で切り取っても全部好きですが、三巻特に好きです。どこがって言われても困る。


作中で「甘い」という妖精がよく使う形容詞があるのですが、この「甘い」は私たちが使う味覚としての甘いとはちょっと違っていて、嬉しいとか、楽しいとか、愛おしいとか、儚いとか、そういった色々な意味が含まれています。

妖精が肯定的に捉えているものへの形容詞が「甘い」。

まさにこの本自体を形容するのにぴったり。


甘い


もうね、ストーリーも甘いし、登場人物誰も彼もが甘い。

カイも甘い、ランスも甘い、エドも甘い、ハイド氏も甘い、マリコさんも最っ高に甘い。

甘くてやばい。(語彙力)


だめだこれ、甘いしか言えないわ。


作中で、ランスがピアノを弾くのですが、このランスのピアノを「ちょっと寂しくて、ちょっと投げやりで、ちゃんと正確で、ほんとは優しい」と評されるシーンがあるのです。もうさ、すごい甘くない?

この文がすごい好きです。

ランスみたいなピアノってどんなだろう、って考えると甘くてしょうがないです。


ちなみにランスが弾いていた曲がきらきら星変奏曲と英雄ポロネースなんだけど、選曲までもが甘い。もう、ほんとどうしてくれようか。

甘いし、これやばい。甘いしか言ってない。中身ない。いや、それはいつもだった。


マリコさんのくだりとか、もうほんと、やっぱり甘いとしか言えない。

とりあえず紅茶でも飲んで落ち着こうか。英国っぽく。エドの紅茶……

くそ……! 甘いがとどまるところを知らねえ……!



っていう、過去のブログから引っ越してきた今回ですが、本当に中身無いし「甘い」しか言ってなくて驚きです。

でも好きだっていう気持ちはものすごい溢れてますね。むしろそれしか伝わって来ねえ。


恐ろしいことに、今改めて『英国幻視の少年たち』について書こうとしても、大体同じようなものが書き上がると思います。そういう自信がある。


登場人物(大体)みんな、ちょっと意地っ張りで、不器用で、じめっとしてて、でもちゃんと優しい、そんなお話です。

疲れた心に沁み込むような「甘い」を、ぜひ多くの人に感じてもらいたい。そしてあわよくば続編を……。


『英国幻視の少年たち』、もしご存じで好きな方いらっしゃいましたら、是非お声がけください。

神妙な顔で「甘いね」「甘いよね」と言い合いましょう。


(※以前はてなブログで公開していたのをちょびっと改稿したものです。)

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