辰と竜のがまんくらべ
ハシバミの花
其の壱
ちょいとそこ行くご両人。
こんな寒空ん中、
新郎は男ぶりこの上なく、新婦は近辺に知られた器量よしってえすこぶるつきの夫婦だい。
ご近所も縁者もみんっな二人に惚れこんじまってらあ。
こんなにいい結婚式ぁ
おっとだしぬけにすまねえ、迷惑でなかったらこの二人のてん末に耳をかたむけてやってくんなよ。
語るはおいら、辻の講釈ほど巧かぁねえが、素人にしちゃあちょいとしたもんだと思うぜ。
前口上はこんなもんで、まあまあ
あいにく座敷はうまっててね。
おいかかあ、酒だ酒をおもちしろ。
もう十云年もつれそってるってのに、全く気がきかねえったらありゃしねえ。
俺も今日嫁にいくお
そのお鈴ちゃんが婿にしてえってえ男をつれてきた時ぁ、そりゃあ大さわぎだったさ。
なんてったって近辺じゃ評判の
そいつがどこの馬の骨ともわからねえ男を引っぱってきたもんだから、親父の
相手の男を見て、おどれえたの何の。
着ている物は少々やつれちゃいるが、中身は立派な偉丈夫、それも
しかもそいつが辰政に深々と頭をさげやがる。
「このほど紹介に預かりました、
名前を聞いてもひとつ
そんなところのご子息が、いったいどんな巡りあわせでお鈴ちゃんと出会ったってんだか。
集まった物見だかいやつらは口々に言ったもんよ。
「あらやだいい男じゃないさ」
「虫も殺せませんって顔して、お鈴ちゃんもやるもんだねえ、どこで引っかけてきたのかしら」
「男は金か名声か見てくれか。あのお鈴ってのも、しょせんそのていどの尻軽娘だったってかい」
「やだよ自分の甲斐性なし棚にあげて、名声も見てくれもないのなら、せめて金ぐらい稼いできとくれってんだこの宿六」
当たり前のおつむなら、こんなにいい
鋳型にそそいで冷ました鉄みたいに、がちんがちんの石頭。
その辰政、口を開いて一番言いはなった。
「けえれ」
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