マジック・スカイ・ワールド~リアルとゲームでの恋愛模様~『試しに種族魔物を選んだらエライことになったんですけど』

常闇の霊夜

第1話『マジック・スカイ・ワールド』


2XXX年。日本……否、世界に激震が走った。それが『完全フルダイブVRゲーム』が開発されたと言う情報であった。今までは不可能とされていたが、一応大量に機械を使って何とか一人出来る程度の技術が、一晩にしてヘルメット程度のサイズにまで押し込められたのである。


その結果、各国がその情報と機械を欲しがった。発明した『ハカセ』と名乗る人物は、


「タダで情報をくれてもいいが、その代わりに見合うリターンを寄越せ」


と言い出した。そしてこれを使って色々出来るメリットと、この契約のデメリットを比べ、メリットの方が大きいと様々な国がこの情報を購入した。


そして今では、世界各国で色々なフルダイブVRゲームが作られる事となったのである。


それから十年ほど経ったある日の事。『マジック・スカイ・ワールド』と言うゲームが発売された。これは初めてフルダイブゲームを作った会社が、初めて出したフルダイブVRMMORPG。


瞬く間にこのゲームは売れ、世界中で遊ばれるゲームとなった。


物語は全てここから始まるのである。


~とある家~


「やっほー!お姉ちゃんが帰ってきちゃったぞー!」


ドアを蹴破らんとする勢いで家に飛び込む姉。それをいつもの光景のように流しつつ、無事に帰ってこれたことを喜ぶ弟。


「姉さん、お帰り。今日は姉さんの好物を作っておいたよ」


「ほんと!?やっぱり持つべきは家族だねぇ!でも疲れたからちょっと寝るー。お休みー」


この姉は、数か月程前からゲームの大会で海外に行っており、今日ようやく帰ってきた訳なのだ。なので弟は色々準備をしたが、それら全てをスルーして二階に眠りに行く。


「ま、後は温めるだけだからいいけど」


どうせ姉の事だから、帰ってきたらすぐ寝るんだろうと、まだ熱していない料理を冷蔵庫にしまい、とりあえず買い出しにでも行こうかと考えたところで、姉が起きてくる。


「あ、ねー『』ー」


「どうしたの姉さん。色々眠いんじゃないの?」


「いや眠いは眠いんだけど。その前に伝えておこうと思って」


「何を?」


ほとんど瞼が落ちている姉だが、その前に伝えるべきことを伝えようと頑張っている。一は姉を支えつつ、話を聞く。


「まず、姉さん一年くらい休むから。世界大会で一位になったからお金に困らないよ」


「あー、そうだろうね。で、他に何かあるんでしょ?」


「ん-。これね。主催者の『食我しょくが』って人からこれを渡せ!って言われてー」


そう言い、姉は胸からあるゲームソフトを手渡す。それは『MSWマジック・スカイ・ワールド』のゲームソフト。ただ、他と違う部分が一つ。カセットには一専用と言う文字が書かれていた。


「……何これ」


「わかんなーい。寝るー」


「ま、やってみればわかるかな。じゃあお休み姉さん」


何とか部屋までは起きていた物の、部屋に入った瞬間意識を失い深い眠りに入る姉。そんな姉を静かにベッドに寝かせ、一は家の用事を終わらせゲームカセットを調べる。


「うーん、見た目は普通のMSWと同じだけど……。姉さん専用ならともかく、僕に?」


一は悩んでいた。と言うのも、姉ならともかくわざわざ自分宛てに作る理由が無いのだ。姉は様々なVRゲームの世界一位を取れる実力者であり、世界で活躍するのでまぁ専用で作っても理解できる。


しかし一の方はと言うと、特にこれと言って特徴のない、ぶっちゃけ姉の世話をするだけの存在である。表に出ることは一切なく、知っている人物は姉程度な物。


「いったい誰が?何のために?」


そう考え、一は思考を停止する。こんなことを考えたところで、誰も答えてくれないのだから。故に早速ゲームをプレイしようとするのであった。


「姉さんに『いらないから貰ってよ』って言われたベッドタイプのフルダイブ装置が役に立つとは……」


そしてゲームにログインする一なのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る