第47話 第三の秘宝「水のアクアマリン」
それからは大きな戦闘もなく順調に探索は進む。
本来は弱キャラベルトルトの、しかも前半用のイベントである。
ようやく本来の難易度に落ち着いてきた印象だ。
「なんかあるよ、あれじゃない!?」
先頭を行くタカキが興奮した声を出した。
道の最奥に
わざとらしく格好つけた表現をするなら、
アイシラはうん、と一つうなずくと隣にいる美男に声をかける。
「ベル君、あなたがどうぞ」
「えっ、僕?」
「そうよ、陛下から命令されたのあなたでしょ。
それに今回すごく頑張ったんだし」
リーフやタカキもうなずいて同意をしめす。
「よ、よし」
意を決した表情でベルトルトが皆を代表し、
すると扉の奥から神秘的な青い光があふれ出した!
「ウッ! こ、これが!」
やがて光はおさまり、ベルトルトの手に青く光る宝石が握られていた。
神の宝珠「水のアクアマリン」、獲得である!
「やったねベル君!」
自分のことのように喜ぶリーフ。
ベルトルトも笑顔を返す。
しかし美男の笑顔は、来た道をふり返ってにわかに
「へっへっへ……。そいつをこっちに渡してもらおうか!」
いつの間に接近していたのか、五人ほどの野盗とおぼしき男たちが刃物を見せつけながら退路をふさいでいた。
最近チョロチョロと周囲をつきまとっていた男たちだろう。
「あっ、そういやこいつらも居たんだっけな」
タカキはあまり驚いた様子もなく戦いの顔になった。
ボス戦というのにはだいぶ物足りない、チンピラども数人。
こいつらタカキ相手に何秒くらい立っていられるのだろうか。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
そして十秒後。
男たちはタカキの前に全員土下座した。
足元はゴツゴツの岩場である。地味に痛そう。
『どうもすいませんっしたあああー!!』
大声で謝罪する土下座集団。
全員顔面ボコボコになっているが、とりあえず生きてはいる。
ずいぶん器用に
「お前ら、だれに頼まれてやったんだ?」
タカキが男たちの後頭部に問う。
男の一人が顔を地面にむけたまま質問に答えた。
「オッス! 黒い騎士と黒いドレスの女ッス!」
「……そいつらの名前は?」
「オッス! スイマセン知らないっス! 結構その辺あいまいなのが業界のお約束っス!
たぶん貴族の使いっパシリっス! 深く
オスオスうるさい土下座男。
体育会系なのだろうか。
ところで、情報を聞き出したタカキは姉の顔を見て話を聞こうとしてきた。
「……っていう話だけど、姉さん?」
「知らないなあそんな奴」
最近知らないイベント展開が増えてきた。
これが完全新規イベなのか、それともちょっとした演出なのかが分からない。
「とりあえず、この国のボスは
いつの間にかモンスターと入れ替わってましたーっていう良くあるパターンなんだけど。
そいつの部下って考えるのが自然かしら」
いきなりそんなとんでもないことを言い出すので、ベルトルトがサッと顔色をかえて忠告してきた。
「いやまってアイシラ。
それかなりまずいこと言ったって分かってる?
僕じゃなかったらその首、飛んでたかもよ君」
一般人が大帝国のナンバー2にむかって「あいつは魔物だ」などと言えば、問答無用で死刑になる可能性まである。
そういう危険なことを
「だって本当のことなんだもの。
まだ勝てるような相手じゃないから、ケンカ売ったりしちゃダメよ?」
「なんで僕が注意される側になってるのさ……」
うしろで聞いていて苦笑いしているタカキとリーフ。
ストーリーをべらべらとネタばらししてしまうアイシラの前では、こんなことがしょっちゅう起こってしまう。
まあそれはさておき、土下座しているゴロツキたちは完全に
そこで治療用の《きずぐすり》をわたしてから「一時間待ってから洞窟を出ろ、自分たちを追ってきたら今度こそ殺す」と言い残して先に帰ることにした。
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