第16話 タカキ獅子奮迅
長い階段を降りて下層についた二人を待っていたのは、せまい空間にひしめくモンスターの大群だった。
「テリャアッ!」
タカキのキックがトラ型のモンスターを蹴り倒す。
しかしその後ろから今度は人間の姿をしたゾンビが両手をのばして襲ってきた。
「やあ!」
アイシラのナイフが頭上の大型コウモリを一匹斬り倒した。
だが洞窟の奥から次々と飛んできて、何匹倒しても終わらない。
(そりゃこういうゲームだってのは知ってたけどさ!)
このゲーム、ダンジョンマップはわりとシンプルで迷うことはあまり無い。
だがそのかわり敵の数は異常に多いのが
アイシラの脳内画面には密集した敵シンボルの姿がマップ上で
その敵シンボルに接触するたびに戦闘が始まり、倒せばまた次の敵シンボルがぶつかって来る。
「やーもうメンドクサー!!」
本当は後半に来るはずのダンジョンである。
敵の強さはまだ序盤クラスだが、その数はガッツリ後半クラスだった。
戦闘回数はガンガン増えていく。
そろそろ敵の強さもランクアップするだろう。
「姉さんこれじゃキリがないよ!」
《しんくうは》!
全身を大きく一回転させながら右の手刀。そこから発生したするどい真空の刃が敵をまとめて斬り裂いた。
敵集団がまとめて消滅したすきまをぬって、二人は強引に
「すごいすごい! でも体力は温存しておいて!
まだまだ先は長いよ!」
「
文句を言いながらタカキは立ちはだかる敵をことごとく一撃必殺のノリで退治していく。
蹴り。殴り。斬り裂き。
まったく
この弟がいてくれて良かったと、アイシラは心から思った。
数えきれないほどのモンスターを撃破しつつ、姉弟は暗い
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
途中、宝箱の置いてある小部屋を発見。
二人はそこでちょっと
「はああ……」
うんざりした顔で天井を見つめ、ため息をつくタカキ。
「姉さん、あとどれくらいなの?」
「あと半分くらいだと思うよ……」
アイシラもひどく疲れた顔をしている。
手にいれたばかりのお宝を指先に引っかけ、クルクルと回してふざけていた。
新入手したアイテムの名は「ガラスのくつ」。
防御力は1しかないし特殊能力もないが、売れば5000ゴールドもする。
ちなみにゲーム内にこれ一つしか存在しない貴重品なので売らないという選択肢もあるのだが、死んだら終りという制約を考えればケチらず売って活用すべきだろう。
「あれ、そんなことよりあんた、ケガしてんじゃん」
タカキの腕に血がにじんでいるのを見つけた。
さらによく見ると何か所も細かい傷を負っているではないか。
これはいけない。アイシラは「きずぐすり」を取り出す。
「えっ、いいよこんなかすり傷」
「だーめ。
強引に服を腕まくりさせ、傷の手当を勝手にやってしまう。
「……ありがと」
「はいはい」
あまった薬を他の軽傷にぬりながら、アイシラはつぶやいた。
「他の街へ行ったら、あんたも魔法をおぼえようね。
できれば水魔法がいいな。一番いい回復魔法があるから」
「え、俺が? 魔法なんて俺にできるのかな?」
「できるわよ、あたしにだってできたんだから」
知識だけがアイシラの強みだ。
一生懸命頑張ってくれているこの弟を無駄死にさせないためにも、できることは全力でやっていかなくてはいけない。
ここでの冒険をクリアして、いよいよ世界をまわる旅へ行くのだ。
ゲームクリアに必要な知識は頭の中にバッチリおさまっている。
自由に外を移動できるようになれば、最高の効率で強いパーティを作れる自信があった。
そのためにはまず、このダンジョンをクリアすることだ。
今この瞬間を乗りこえれば後はグンと楽になる。
「よし、やる気出てきた!」
アイシラは元気よく立ち上がる。
「もうちょっとしたら楽な旅ができるようになるからね。
それまで頑張ろう!」
「うん」
タカキも同じく立ち上がる。
彼はすっかり傷口のふさがった自分の腕をなでた。
「ありがとう姉さん。そろそろ行こうか」
「うん!」
仮の休憩室から
歩きだしてすぐ、新たな敵と
二足歩行の
「見たことない敵ね」
「うん、でも大丈夫。
姉さんは俺が守るから!」
タカキは
新手の敵でも一撃必殺だ。強い強い。
しかしとうとう敵のランクは次の段階に進んでしまったようだ。
最低ランクの敵は姿を見せなくなり、ひと回り強いやつらがぞくぞくと現れはじめる。
だがまだ大丈夫。
村で
大切なのはここで油断をしないことだ。
戦いはますます激しさを増していく。
村をぶっ壊してくれた視聴者どもも何をしてくるか分からない。
(強くなろう、今よりもっと先のステップへ)
初期装備のナイフを握りなおして、アイシラは敵の
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