第九節 炸裂、◯◯チ!
炸裂、◯◯チ! その一
一九二〇年六月二三日 帝都中久保町 夢幻座公演会場
◆
宮森が〈ブアク〉と死闘を繰り広げ始めた頃、伊藤と澄は見世物小屋の従業員達と
余りにも個性的な見た目の従業員達に、地下競艇場で〈
「うへー、こりゃお強そうな皆さんで……」
見た目からは男女……と云うか、雌雄の区別は付かない。
それどころか、額からは太く鋭い角が生え四つん
伊藤は四肢の
しかし澄がそれを制する。
「伊藤さん、真正面からぶつかったら傷口が開いてしまいますよ。
ここはわたしが」
「わっかりましたー。
でも澄さん、あいつらが屋根上から覗いてますけど……」
伊藤の
例の如く蝉丸に珍獣解説を頼む橋姫。
「ねー、セミマルー。
あのフワモコしたのなーにー?」
「あれは〈ノフ゠ケー〉……の出来損ないです」
「できそこないー?」
白熊
白熊
散弾を
御次は
ソレらは、伊藤と澄も良く知る〈ヴーアミ族〉と〈
〈ヴーアミ族〉と〈
だが、澄は〈ヴーアミ族〉や〈
伊藤がウィンチェスターM1912標準
相手が回避した所に澄が斬り込むと云う戦法で、〈ヴーアミ族〉と〈
余裕
「オラオラ。
飛んだり跳ねたりが得意な奴はもう居ねーのかい?」
象頭人身の
案の定、頭重でふら付いた所に伊藤の放った散弾を食らい蜂の巣となる。
「パオーーーーーォン……」と云う悲し気な断末魔の後に現れたのは、
一般大衆の感性に照らし合わせると、どちらも強烈な見た目ではある。
蛇女は「シュー……シューーーッ!」と
「うへー、気持ちワリー!」と嫌悪感を
蛇女はコルトM1911の連射に成す
一方の鼠男は、『ビビビ……』と意味有り気に髭を振るわせる。
しかし、標的を失神させる程のゲップや広範囲を巻き込む放屁などで攻撃する事は
結局、澄の
「なんなのあいつら!
ぜんぜんうごけてないよ!
せつめいしてセミマルっ!」
「さっきも言った通り、彼らは幻魔の出来損ないなのですよ」
「できそこないって、どーゆーこと?」
「邪霊の定着が中途半端なんです。
一応 播衛門さんや痩男が邪霊定着の儀式を
蝉丸の説明が難しかったのか、
お子様の答えなど待ってはいられない、とばかりに話を進める気狐。
「ダメダメじゃねーか。
アイツら居る意味あんのかよ?」
「それは、これから解るでしょう……」
◆
宮森とブアクの戦場から
彼女は今、占い小屋に来ている。
中には女占い師の
いや、ふじ に毒を盛り罠に
「キャルルルルルルルルッ!」
「文吉、
「
あんたはあたしには小さ過ぎて、飴玉の代わりにもなりゃしないよ」
増女の方も可愛い助手に頼られて御満悦である。
「あ、そうそう……」
奥へと引っ込み、何故か大容量の
「
良かったらどうぞ持って行って」
「これこれ。
羽衣さん、あんがとね!」
今は奥に在る
その音がうざったいと感じたのか、文吉を両手で包み語り掛ける増女。
「嫌だわ文吉。
私は別に、上鳥居 家の問題に口を出そうと思った訳じゃないわ。
お客様にお茶をお出ししただけ。
そうでしょ?
だから加勢には当たらないと思うの。
あ、そうそう!
蝉丸 君が言ってたんだけどね。
なんでもこのお茶、炭を
本当かな? と思って火鉢の炭に振り掛けたんだけど、別に融けなかったわ。
蝉丸 君がむやみに嘘を言うとは思えないんだけど……。
でも
きっと、私が知らないやり方なりがあるんでしょうね」
「ピッ、ピッ♪」
文吉は先程から褒美の米粒に御執心で、今は茶筒に見向きもしない。
文吉から無視され転がる茶筒には、〘カミトリー 播衛門 濃いめ〙との品名が表記されていた……。
◇
伊藤と澄が窓際従業員達を処理している間に、
『
奇石は幼児ほどの大きさをした
高札の説明によると、〈ゴーツウッドのノーム〉と云う品らしい。
五歳児ほどの大きさなのでかなりの重量かと思われるが、身の
〈ゴーツウッドのノーム〉からは「ギャッ⁈」と聞こえる特徴的な破砕音が鳴り、幼児の頭ほどの石塊へと砕ける。
その後、彼女はひと口大になるまで石塊を砕き続けた。
砕石作業を終えた
その表情は砂糖菓子でも頬張るような気楽さだ。
「お~いし~。
これでもっと大きくなれるわね♪
……ンガググッ⁈」
流石に
〈ゴーツウッドのノーム〉の欠片を
◇
中央広場には、最も効果的な客寄せ……巨大鬼が
ただ不可解な事に、その巨大鬼からは
それもニ、三人ではない。
十を超えている。
「うううううぅあぁ……」
「もう死にたい。
ひと思いに……」
「やめて~。
あたしを犯さないで~」
籠細工である巨大鬼の脚から、腕から、肩から、腹から、頸から、頭から、苦痛に満ちた呻き声が発せられている。
そう、この巨大鬼は
家畜や人間を閉じ込めたまま焼き殺す祭具……ウィッカーマンなのだ。
ウィッカーマン内で弱々しく呻く囚人達を
そして彼女は、巨大鬼の胸部へと収まった――。
◆
炸裂、◯◯チ! その一 了
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