ひさとしの1日〈SF短編〉

おみゅりこ。

ある朝の出来事

チュン……チュン、チチッ—— チ!


 愛らしいスズメの鳴き声等で彼は目を覚ました。すかさず執事のセバスチャンが部屋に駆け込んでくる。


「ぼっちゃま、おはやうございますね」


 とびきりの自然な笑顔、そして慇懃な身のこなし。流石だ……と、喉元まで来た言葉を飲み込んだ。


「朝食の準備が、できておりますよ」


 おぼんの上に、ひっくり返った茶碗、訝しげに? 散らばった漬物、そして生卵(割られ済)が配置されていた。


「たんとお召し上がり、くださいね」


 こともなげにソレをベッドに放ると、セバスは部屋から去った。部屋を出ると、朝っぱらから外商が来ており、セバスが熱心に何やら言葉を発していた。


「もう少し優れた、おぼんが欲しいですね」


 あまり自分に関係なさそうなので、シャワーを浴びることにした。


 ——彼が復讐を決意して、もう十年になる。


 着替えを済ますと、県で最も優れた『里見ジュニアハイスクール』に向かう。彼もまた、笑顔を絶やさない。それでいて、寡黙だ。


 屋敷を出て少し歩くと、曲がり角から立て看板を手に持った女学生が飛び出してきた。

そこには、『ひさとし様 LOVE』と書いてある。


「おはようございますわね、ひさとし様。今日も今日とてお慕いしておりますわね!」名をアイコという。正直、瞳孔が開いており恐怖すら覚える。


 彼の周りにはいつも人がいる。そら、ごらんなさい。


キオシ「やあ、ひさとし。僕と一緒に東京の最も優れた大学だけに留まらず海外のオックスフォード的な場所で学友になることを共に夢みようじゃないか!」


忍者「ひさとし……今この時間において命を頂く!」


ボア男「おいどんと一緒に柔道のアテネオリンピックを目指すごわすよなぁ!?」


次期生徒会候補カカハル「おはよう。昨日与えた課題、すなわち、哲人政治についての考察についての答えをお聞かせ願いますわ」


占い師「キヒヒ……あんたのその足取り、何かを決心なされた者にしか醸し出せない何かが出て、おりますなぁ……!」


征五郎「お昼ご飯にご同行願う。隔絶された空間を共有しつつ胃袋に食物を入れる行為を共有したい」


少年「見てママ! 昨日ボクが階段で何かしらを落とした時に拾ってわざわざ届けてくれたお兄ちゃんだ!」


自称ライバルのジュン「ふっ、君はまったく、七つの大罪をそのままそっくり逆にしたような男だな!(?)」


 教室と席に着く。ようやく一息か。


「ふふっ、大変ね、人気者は、見るからに」


 彼女は稲美。幼なじみであり、且つ将来を誓い合った仲でもあり、闇とかを切り散らかす剣『ホホバオビシノ』でもあり、悪霊を祓ったり戻したりでき、自己憐憫にうつつをぬかし、最終戦争においてその力を使い果たし、英霊となるも、神の御手により復活し、再び将来を誓い合ったりしたが、全ては彼の儚い妄想の産物でもある。


「まさしく不思議なものね。こうしてあなたと日常を共にできるなんて。思い出すわね熾烈な戦いの日々やら旅の思い出。美しき都アポポタミヤ、勇猛な弁舌家でありソフィストのドモリアス公、歴史の全てやあなたの出生の秘密やら色々知ってた竜の長ドンドドボス。外宇宙より飛来した最初の人類プリミティブヒューマノイドの密かな恋物語。でも、なんてことないこのささやかな日常それこそが最も尊ぶべきものだと昨日くらいに思ったわ」


 教師が壇上に現れ、訥々と口を動かす。



「あー、今日は転校生の、転校生がきます……んで、えー、ごみ、ご注目を、お願い、したい所です……かね」


 
即座に扉がスライドするや否や、ひさとしは愕然をゆうに飛び越えた地点の心境となる。
 


「いっ、稲美!! おまえそっ……!どういう——!?」




【屋敷にて】

ばあや「これで……よかったのでございますね。セバス」

「ぼっちゃま、『おはやう』ございますね……」

二、三筋くらいの涙が流れ落ちる。


 しかしながら、学友達は別の件で驚愕していた。


「ひ、ひさとしが喋った!」「すすげー! 初めて声聞いたよ鼓膜が認識したよ!」「おい! 録音はしたか!? 誰か!!」


 ひさとしは立ち上がると、稲美に近づき、再び将来を誓い合った。


ばあや「あれで……よかったのでございますね。セバス。いや、『最初の人類』とでも呼びましょうか」


「構いませんよ。偉大なる長『ドンドドボス』よ」



「ふふっ、『あれからも』よろしくね」
スーパーウルトラ伝説的ハッピーエンド。異論は認められる。

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ひさとしの1日〈SF短編〉 おみゅりこ。 @yasushi843

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